東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 特定秘密保護法 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【特定秘密保護法】

秘密保護法 言わねばならないこと(1) 権力者の責任隠す

写真

◆憲法学者 小林 節氏

 人間は間違える存在だ。それ故、法制度は人間の不完全性を前提につくられている。特定秘密保護法はどうか。秘密を漏らした公務員とそれに協力した民間人に厳罰を科すのに、行政官や政治家が不正な隠蔽(いんぺい)をしても裁かれない。

 行政官と政治家は過ちを犯さないという前提なのだろう。国民を威嚇する法律をつくりながら自分たちは安全地帯にいる。裁判所など第三者の目を入れ、不当な情報隠しや「国民の知る権利」を侵していないかを監視する手続きが絶対に必要だ。政府がかたくなにそれを拒むのは理解に苦しむ。まるで悪意があるように見える。

 秘密指定の解除は原則六十年になった。責任者はみな死んでいる。権力者が絶対に責任を問われない秘密保護法は悪法以外のなにものでもない。これは権力側が国民に対して起こした反乱だ。

 秘密保護法を成立させた安倍政権は集団的自衛権の行使容認に突き進むだろう。選挙で得た多数議席を背景に国民投票に委ねることなく、憲法を骨抜きにする考えだ。同盟国である米国のために、自国が攻撃を受けていないのに地球の反対側でも付き合う義務が生じる。世界の警察官を辞めたがっている米国が肩代わりを期待している。私は改憲論者だが憲法を変えるかどうかは国民投票で決めなくてはならないはずだ。究極の解釈改憲である集団的自衛権の行使は断固として反対だ。

 権力は腐敗する。特定秘密が際限なく広がることはない、と言われても信じられるだろうか。秘密保護法は廃止させなければならない。政権を代えることが最大の情報公開だ。

 特定秘密保護法が成立した後も市民や学者、文化人らが廃止を求めて声を上げ続けている。戦前、中日新聞社の前身である新愛知新聞などで主筆を務めた桐生悠々(きりゅうゆうゆう)は「言わねばならないことがある」と軍部や権力に立ち向かった。いま言わねばならないことを識者らに聞き、随時掲載する。

<こばやし・せつ> 1949年生まれ。慶応大教授(憲法学)、弁護士。90年代から改憲論をリードしてきた。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo