政府・与党が決めた二〇一四年度税制改正大綱は、消費税増税で懸念される景気落ち込みに、どう対応するかが問われたはずだ。相変わらず企業優遇、家計には負担増を求めるが、これで大丈夫か。
税制をみれば、政権が何を重視し、どういう国を目指しているかがわかる。特定の業界や企業団体に恩恵が偏らないか、広く国民の暮らしが良くなるかである。やはりというか、旧来の自民党の体質がもたげた出来栄えというしかない。業界団体の要望にいかに応えるかとの視点ばかりが目立つ。
消費税増税によって最も心配されるのは個人消費の落ち込みである。それなのに今回打ち出したのは、年収一千万円超のサラリーマンの所得税と住民税を増税したり、庶民の大事な足となる軽自動車やバイクを増税する。その一方で、復興特別法人税の前倒し廃止や大企業の交際費を広く非課税扱いにするなど企業向けの優遇策を多く盛り込んだ。
企業が潤えば経済が活性化し、家計にも波及するというのが安倍政権の論理である。しかし、グローバル競争下の低成長時代に企業から家計への富の分配は進まない。消費税増税とこれら個人の負担増は時期こそずれているものの、増税が相次ぐことで個人消費や景気が減速する不安は拭えない。
また、この高所得層への課税強化は、税制抜本改革法に基づき検討してきたものと説明するが、国民にしてみれば唐突に決まった印象を受ける。勤労者の努力や生活を尊重する意味でも丁寧な説明が必要だったのではないか。
税制改正大綱に求められているのは、財政再建と経済成長を両立させる高度で大局的な判断のはずだが、残念ながら実態は短期間に業界要望の採否を決めるような小手先の方式である。産業構造がサービス業中心になっているのに、設備投資などの減税措置が製造業に集中する旧態依然の姿がそれを象徴している。
生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の導入についても、「消費税率10%時」というあいまいな結論になった。支持母体に導入を約束していた公明党のこだわりで盛り込まれたが、これも議論は生煮えだった。肝心の逆進性の緩和効果や対象品目、財源などが詰めきれていなかったのはおかしい。
国民が真に納得できる税制を築くには、年末に短時間でまとめるやり方は、もう改めるべきだ。
この記事を印刷する