家計は増税、企業は減税。

 与党が決めた税制改革を一言でまとめれば、そうなる。

 来春の消費増税は、家計がその大半を負担する。自動車に関しては増減税さまざまだが、販売が好調な軽自動車では、15年春以降の購入者が毎年納める税金を1・5倍にする。

 所得税は、15年に最高税率が40%から45%に上がる。サラリーマンのうち収入の多い人を対象に、「給与所得控除」を圧縮する手法での増税も、16年から2段階で実施することが新たに決まった。

 一方、企業はどうか。

 震災復興のための特別法人税は、予定より1年前倒しして今年度で打ち切る。さまざまな投資を促すための減税を大幅に拡大する。交際費の半額を非課税にする制度も設ける。

 納税者はどう受け止めるだろうか。

 国の財政は借金まみれだ。社会保障のため、消費増税はやむを得ない。稼ぎや資産が多い人の所得税や相続税は強化する必要がある。まずは企業が元気にならないと、賃金や雇用も期待できない……。

 そう頭ではわかりながら、どこか納得できない。そんな人が多いのではないか。

 企業は全体に十分な利益をあげているが、民間の事業所に勤める人の昨年の平均給与は408万円と、ピークの97年から1割余り少ない。デフレ下とはいえ、戦後最長の景気拡大期もあったのに、ほぼ減り続けた。

 アベノミクスで物価がプラスに転じ、消費増税が上乗せされる中で、賃金はそれに見合って上がるのか。

 サラリーマンの「控除圧縮」は税制改革作業の終盤に急浮上し、ほとんど議論がないまま決まった。対象者がサラリーマン全体の4%に限られるものの、唐突感は否めない。

 何より、税金が有効に使われているとは思えない、という不信感がある。

 国民が25年間、所得税などに上乗せして負担していく震災復興対策費は、被災地の復興とはほど遠い施策に「流用」されていた。政府は反省したはずなのに、消費増税に備える今年度の補正予算は国費だけで5・5兆円の「何でもあり」だ。

 目的を拡大解釈して予算をばらまく構造は、一向に改まっていない。

 高齢化が急速に進むことで、今後も増税などの負担増は避けられない。その際、最も大事なのは政府への信頼である。

 安倍政権は、納税者の不信に応えなければならない。