東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

石破氏発言 報道を統制する発想だ

 秘密保護法の特定秘密を報道することに「抑制が効いてしかるべきだ」と石破茂自民党幹事長が発言した。後に訂正したが、本音を吐いたのだろう。報道機関を統制する発想には、強く抗議する。

 事実関係を整理してみよう。十一日に会見で、報道機関が特定秘密を入手し、公表したケースについて、石破氏はこう述べた。

 「(処罰は)最終的に司法の判断になる。報道することで、わが国の安全保障に極めて重大な影響を与えるものをどう評価するか。常識論でみて、開示する行為は抑制が効いてしかるべきだ」

 だが、秘密保護法には「報道又(また)は取材の自由に十分に配慮しなければならない」と書かれている。取材についても「著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とする」とも記されている。

 合法的に情報を得て、報道しても、刑罰の対象になりえない。そもそも、公務員が「これは特定秘密だ」と言わない限り、記者には内容が秘密かどうかもわからない。石破氏は十分に法律を理解しているとは思えない。

 後に「漏えいした公務員は罰せられるが、報道した当事者は処罰の対象にならないので、訂正させていただく」と撤回した。「抑制は求めない」とも付け加えた。だが、さらに十二日のラジオ番組で「国の安全に大きな影響があるとわかっているが報道する。大勢の人が死んだとなれば、それはどうだろう」と語っている。

 どんな情報を指しているのか。空理空論の世界ではないか。むしろ、特定秘密を報道することに重ねて疑問を呈し、自制を求めているのだ。秘密保護法は情報統制色を帯びているが、報道をも統制する意思が潜むのだろう。

 仮に他国が日本に核ミサイルを撃ち込もうとしている秘密情報を得れば、早く国民に知らせる。日本政府が極秘に核武装計画を進める情報を入手すれば公表し、国民の議論に付す−。報道機関として当然ではないか。

 政府が秘密だとしても、報道機関は「報道に値する」と判断すれば、公表する。それが報道の使命である。石破氏は報道機関を政府の宣伝機関と勘違いしていないか。防衛相を務めた安全保障の論客が、「絶叫デモはテロ行為と変わらない」とブログで書いた。

 「表現の自由」も「知る権利」も踏みにじる悪法は、やはり廃止すべきである。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo