江沢民に逮捕状 スペインの決定に中国共産党大慌て
週刊文春 11月28日(木)18時1分配信
スペインの全国管区裁判所が11月19日、中国の江沢民元国家主席(87)、李鵬元首相(85)ら5人の元政権高官について、1980〜90年代にチベット族虐殺に関与した容疑で逮捕状を出した。
このニュースが衝撃的なのは、「前例」があるからだ。スペインでは人道に対する罪について国外案件でも、スペインの裁判所に管轄権がある。チリで軍政を敷いたピノチェト元大統領(故人)が、スペインの予審判事の要請により、98年に滞在先の英国で逮捕された。英当局は高齢や健康を理由に引き渡さず、釈放してチリに帰国させた。
高齢の江沢民らはもはや海外に行くこともなく、逮捕されることはないだろう。しかし元最高指導者のメンツを丸つぶれにされた中国共産党は、スペイン政府への圧力を強めている。20日の定例記者会見で洪磊・外務省副報道局長も声を荒げた。
「強烈な不満と断固たる反対を表明する。我々はスペイン側が中国の厳正な立場を直視し、誤った決定を改めるとともに、両国関係を損なわないよう要求する」
通常、定例会見の一問一答は公式サイトに掲載されるが、この回答は削除された。国内メディアの記者も敏感すぎて報道できないことを熟知しており、大多数の国民はこのニュースを知らなかった。
しかし外国メディアを通じて中国版ツイッター「微博」などで拡散。もともと人気のない過去の指導者に対して「非常に良い。闘牛の国を支持する」「スペインに敬意を表す」などの声が相次いだ。
「8964も追及すべきだ」という書き込みは、89年6月4日の天安門事件の責任も追及せよとの指摘だ。「洪磊の国家機密漏洩罪追及を強烈に要求する」という声は、国内報道を封鎖しながら、海外向けに半ば事実を認めた報道官を揶揄(やゆ)したものだ。
今回、刑事告発した人権団体にはスペイン国籍を持つ亡命チベット人がいたという。国内のチベット族居住地区では、高圧的な共産党統治に抗議して焼身自殺するチベット族住民が相次いでいる。
習近平指導部は、西側民主国家の裁判所が亡命チベット人の主張を受け入れ、それが国内外に広がった結果、共産党の一方的な論理が崩れていくことに強い懸念を抱いているとみられる。
<週刊文春2013年12月5日号『THIS WEEK 国際』より>
「週刊文春」編集部
最終更新:11月28日(木)18時1分
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