阿部
「エネルギーを安全に、安定的に供給するには、どうすべきか。
先週末に示された、政府の『エネルギー基本計画』の素案では、原子力発電を“重要なベース電源”と位置づける一方、再生可能エネルギーは、今後3年程度、“導入を最大限加速していく”とされています。」
鈴木
「しかし、再生可能エネルギーの導入の進み具合は、太陽光発電を見ると、必ずしも順調に進んでいません。
背景には、何があるのでしょうか。」
阿部
「エネルギーを安全に、安定的に供給するには、どうすべきか。
先週末に示された、政府の『エネルギー基本計画』の素案では、原子力発電を“重要なベース電源”と位置づける一方、再生可能エネルギーは、今後3年程度、“導入を最大限加速していく”とされています。」
鈴木
「しかし、再生可能エネルギーの導入の進み具合は、太陽光発電を見ると、必ずしも順調に進んでいません。
背景には、何があるのでしょうか。」
福島第一原発事故を受けて、普及が期待されている再生可能エネルギーは、電力会社に買い取りを義務づける制度が、去年(2012年)7月にスタート。
大半を占める太陽光発電で、国が認定した事業計画は、買い取り価格が42円とされた、今年(2013年)3月末までに急増し、開始から1年余りで、原発15基分に相当する、2,000万キロワットを超えています。
ところが、この中で実際に発電を始めたものは、全体の1割程度にとどまっています。
なぜ、国が認定した事業の多くで、発電が始まっていないのか。
私は、大型の太陽光発電=メガソーラーの事業を計画している、ある業者を訪ねました。
「どこから、どこまでですか?」
国から認定を受けた、九州南部にある土地です。
この業者が、ここで発電事業を始めようとしたところ、別の業者にも、国から二重に認定が出されていることが分かり、計画が進んでいないといいます。
投資会社 開発部長
「(経済産業省は)両者を呼び出して、どちらが事実なのかという確認は必要ではないか。
驚きと怒りですよね。」
さらに、発電事業を進めるには、課題を抱えた土地にも認定が出されていることが分かってきました。
海外のファンドが投資できるメガソーラーの事業を取り引きしている、この業者。
九州北部にあるゴルフ場予定地だった土地を利用して、太陽光発電を行う権利を、4億円で購入しないかと持ちかけられました。
この土地で太陽光発電事業を行うことを認定した、経済産業省の書類です。
ここで発電した電力を、20年間にわたって、電力会社に売る権利を持っていることを示しています。
ところが、実際に現地に足を運んでみると、この土地には、事業への転用が事実上困難な、みかん畑が含まれていることが分かりました。
業者は、計画は不可能だと判断。
このように、国の認定を受けながら、発電事業が難しい案件が高値で取り引きされている実態が広がっているといいます。
投資会社 開発部長
「利権が利権を生むというか、高く売りたいという人間の欲望が、そこに群がるブローカーの利権が関わっている。」
多くの業者が利益を求めて参入している、太陽光発電の買い取り制度。
大分県由布市では、一部の住民が発電計画の中止を求めています。
住民は、投機の対象とされて、周辺の環境が損なわれることに不安を感じています。
女性
「“もうかるぞ”とか、そういう話がどんどん聞こえてくる。
これが本当に、日本のエネルギーのためになるのか?」
計画が集中して、電力会社から買い取りを断られるケースも出てきています。
全国で最も太陽光発電事業の認定が多い、北海道です。
札幌の不動産会社は、去年、日高町の土地を1億円で購入し、メガソーラーを建設する計画について、国から認定を受けました。
不動産会社 社長
「こんなに照っているのに、もったいない、このままにしておくのが。」
しかし、その後、北海道電力は、太陽光発電について、「無条件で買い取るのは、40万キロワット程度」と発表。
すでに枠は埋まっていて、このままでは買い取れないと伝えられました。
そして、大型の蓄電設備を設置して、送電する量を調整することが買い取りの条件とされました。
蓄電設備の設置には30億円かかるとされ、費用が2倍に跳ね上がることから、この業者は、事業の見直しを迫られています。
不動産会社 社長
「再生可能エネルギーが注目されてから、まだ1、2年というところで、すでに頭打ちという、がっかり感。」
こうした対応について、北海道電力は、NHKの取材に文書で、次のように回答しました。
“太陽光発電が大幅に増えると、安定的に電力を届けることが困難になる。
また、個別の事業者のために、電力会社が送電網を拡充することは、最終的に、お客様の負担につながるため、難しい”としています。
鈴木
「スタジオには、取材にあたった菅澤記者です。
そもそも認定の仕方、ここに大きな課題があるということが分かったのですが、政府は、どのように対応しようとしているんですか?」
菅澤記者
「現在、経済産業省は、事業者に実態調査を行っていますが、その認定のあり方については、次のように話しています。」
経済産業省 新エネルギー対策課 村上敬亮課長
「早め早めの設備認定が、認定して、そのまま立派な設備に育っていく前提でやっていたにもかかわらず、そうでないケースを生んでいるという実態があるので、事後の調査を定期的に追加するとか、そういう方法の変更は必要になる。」
菅澤記者
「このように、いわば、事業者の自己責任に任せていた方法を見直す考えを示しています。」
阿部
「さらに、再生可能エネルギーを普及させていくためには、構造的な問題も浮き彫りになっているようですね?」
菅澤記者
「今の仕組みでは、電力会社が買い取るのにかかる費用というのは、私たちの電気料金に上乗せされています。
つまり、買い取る量が増えれば、私たちの電気料金も上がるということを覚悟しなければいけません。
『エネルギー基本計画』の素案では、“増加する費用の負担を含めて、制度のあり方を総合的に検討する”とされています。
再生可能エネルギーをどこまで普及させるのか、改めて国民的な議論が必要とされています。」