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夕暮れ
 ゼフ=アインシュタイン
 レベル29
「緋」魔導値29 限界値62
「蒼」魔導値21 限界値87
「翠」魔導値20 限界値99
「空」魔導値21 限界値89
「魄」魔導値20 限界値97
 魔力値934/952

 しばらくぶりに自分にスカウトスコープを使った。
 なんだかんだいって緋の魔導ばかり使っていたので、やはりこれが一番高くなっている。
 昔よく使っていた事もあり、使いやすい魔導が多いからつい使ってしまうんだよな。
 バランスを考えるとそろそろ他の魔導も使っていくべきだろうか。

 現在はコボルトの森でクロードとミリィの戦闘経験を上げている最中だ。
 クロードが前衛でミリィが後衛。
 クロードがコボルトを引きつけ、その間に、ミリィがコボルトの属性に合った魔導を撃ちこみ、倒す。

 経験値効率を考えると非効率的な戦い方であるが、この二人にはまずパーティとして、基本の戦い方を叩きこまないといけない。
 クロードは敵を倒すため、前に出過ぎる傾向にあるし、ミリィに至っては何も考えずについて行き、何も考えず魔導を撃っている。

「ミリィさん!前に出過ぎですよ」
「クロードそこに立ってると撃ちにくい~っ」

 やれやれ、ため息が漏れる。
 こういうのは口で言ってもわからないだろうからな。
 身体に憶えこませるしかない。

 二人から少し離れてついていくワシの視界に、コボルトが入ってくる。
 タイムスクエアを念じ、時間停止中にブラックストームとグリーンショットを唱える。

 竜巻の中、巻き上げられた石弾とコボルトが竜巻の中でシェイクされ、消滅していく。
 おっ、これは中々使いやすい。
 スカウトスコープで自身の魔力値を見ると、タイムスクエア込で消費魔力は650だった。
 中等範囲魔導に初等魔導を混ぜるのは悪くないな。
 ストーンストームと名付けよう。
 シンプルイズベスト。

 合成魔導の組み合わせは全てメモしてある。
 合成魔導は色々試したが失敗も多い。
 ブルーボールとレッドボールを混ぜた時などは爆発を起こし、火傷を負ってしまったからな。
 とても実戦でいきなり使う気にはなれない。
 二人は実戦、ワシは実験だ。

「かはっ!?」

 呻き声が聞こえ、ワシがそちらを向くとコボルトの大群と戦い、苦戦をしているクロードが目に入った。
 ミリィもコボルト二匹に張り付かれ、回避に精一杯のようだ。

「ミリィ、レッドウォールを使え!」
「そんな……ことっ……言われても……!」

 避けるのでいっぱいいっぱいで、魔導が使えないらしい。
 そうこうしている内に、クロードの方に新たなコボルトがあらわれる。
 仕方ないな。
 魔力回復薬を二本飲み、先程の合成魔導をクロードの方に撃ち込む。

「ストーンストーム!」

 敵の中心に石弾の嵐が吹き荒れ、コボルトたちを消滅させてゆく。
 コボルト五匹はいただろうか。
 あれだけの数を捌くとは、クロードも大したものだ。
 クロードは十分に仕事をしたと言えるだろう。
 それに比べてミリィは……

「ありがとうございます、ゼフ君」

 さわやかなイケメンスマイルだ。
 ワシ程ではないが。

「こっちも助けてよーっ」
「ミリィは自業自得だ。自分でなんとかしろ」
「そんなーっ!?」

 コボルトは攻撃自体は大した事はない。それを二匹程度なら、一人でなんとかして欲しいところだ。
 ミリィが魔導を使おうと集中しようとすると、コボルトが攻撃を仕掛けて、それを防がれる。

 二匹のコンビネーションで、リズムよく攻め立てるコボルト。
 ミリィも息が切れ始め、限界が近いようだ。
 全く世話がかかる。

「ブラックウォール!」

 コボルトとミリィの間に風の障壁があらわれ、触れたコボルトを数ゼイルぶっ飛ばす。

「おおっ♪ありがとっゼフ!」
「後はなんとかしろ」

 距離の離れたコボルトにブルーゲイルをぶち込み、倒す。
 ……本当に戦い方が雑だな、こいつは……
 まぁ倒せれば何でもいいのだが。

「ふふっ、甘いですねゼフ先生は」
「だな。この程度なんとかして欲しいところだが」
「ミリィさんは集中力にムラがありますね。焦るとすぐにボロが出る」
「よくわかってるじゃないか」

 まぁずっとゾンビにホワイトボールを撃つだけの作業をしていたからな。
 まともに前衛のいる狩りは初めてだろうし。
 そうやって擁護するあたりが甘いのだろうが。

「ほらミリィが待ちくたびれてるぞ。早く行ってやれ」
「ふふっ、そうですね」

 しばらくはこの形でミリィに慣れていってもらおうか。
 瞑想をしながら二人についてゆく。

 それから一時間ほど狩りしていただろうか。

「あっすみません、そろそろボク帰らないと……」
「えーっまだ早くない~?」
「ミリィ、わがまま言うな。それに日も陰ってきたし、今日はお開きでいいだろう」

 クロードは用事があるのか、あまり遅くまで、狩りは付き合えないようだ。
 現状少し物足りないが、人数が増えるとある程度はこういうこともある。

 渋るミリィをなだめ、コボルトの森から出ようとすると、赤いコボルトがあらわれた。
 コボルトリーダーだ。
 スカウトスコープをコボルトリーダーに念じる。

 コボルトリーダー
 レベル42
 魔力値24412/24412

 こいつも海辺の洞窟のキングニッパーと同じく、中ボスだ。
 ワシらに気付くと雄叫びをあげ、仲間のコボルトを呼び寄せる。

「うわ……出口の前で……」
「大丈夫、すぐ倒せばいいよ」

 3人もいればそこまで苦労せず倒せるだろうか。
 ミリィがブルーゲイルをコボルトの群れに撃ちこみ、残った数匹はワシがグリーンスフィアで押しつぶす。
 残ったコボルトリーダーがワシらに向かって斬りかかってくるが、クロードが前に立ち、その大剣を盾で受け止めた。

「大地の守りよ、その身に纏いて汝を守護する鎧となれ」

「セイフトプロテクション!」

 クロードにセイフトプロテクションをかけると、目で礼をしてくる。
 こちらも攻撃に移るか、 コボルトリーダーは緋属性だったな。
 またまたレッドゼロの出番はない。
 となるとキングニッパー戦で使ったパイロクラッシュ辺りがいいか。
 コボルトリーダーに近づき、タイムスクエアを念じようとすると、大剣を振り回し、ワシの妨害をしてきた。

「ちっ……」

 パイロクラッシュは射程が短い為、近づかないと当たらない。
 しかたない、他の魔導を使うか。

 タイムスクエアを念じ、レッドショットを念じながらブラックショットを唱える。
 手のひらから生まれた火炎と旋風の入り混じった魔力弾は、コボルトリーダーに突き刺さり、その動きを止める。

「でやあああああ!!」

 そこをクロードが斬りかかり、思いきりのよい一太刀を浴びせるが、いまいち効果は薄いようだ。
 クロードが持っているのは、何のエンチャントもされていない、ショートソードだからな。
 今の魔力弾、パイロショットは魔力消費200とリーズナブルだが威力が低い。
 うずくまっている間にパイロクラッシュを……!

 入れようとした瞬間竜巻がコボルトリーダーを襲う。
 ミリィがブルーゲイルを放ったのだ。
 馬鹿の一つ憶えか、お前は。

 まぁそのおかげで、ミリィのブルーゲイルのレベルは高い。
 苦手な属性の魔物にでもそこそこ効いてしまう。
 ミリィは所持している魔導が多くないため、他に有用な魔導もない。
 だからダメ出しもしにくいのだが。

 まぁいい、このまま削っていくか。
 竜巻の中のコボルトリーダーにパイロショットを念じる。

 …………

 瞑想を挟みながら、コボルトリーダーにパイロクラッシュとブルーゲイルを交互に撃ちこみ続け、コボルトリーダーを倒した。
 途中何度かコボルトが乱入して来た為、かなり手間取ったが、そのたびに クロードが上手く捌いてくれた。
 かなり後ろを意識できるようになったみたいだ。
 しかしすっかり暗くなってしまった。

「うわ~もう日が沈んじゃったよ……早く帰らないと……」
「そうだな、すまないクロー……ド?」

 そこには真っ青になったクロードの顔。
 冷や汗も流し、少し手が震えている。

「クロード?どしたの?」

 能天気なミリィの声とクロードの青い顔が、ひどくミスマッチしていた。


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