胃がん、肺がん…波乱の元落語家、命の限り高座へ
元笑福亭小松、大須で再起
テレビで売れ、芸を表彰され、胃がんに負けじと全国行脚…。上昇気流に乗るたびに覚せい剤に手を出し、3度の逮捕。自ら「波瀾(はらん)万丈の人生」と語る元笑福亭小松こと夏川鴈二郎(がんじろう)さん(56)が、大須演芸場(名古屋市中区)の舞台に立つ。「信頼を裏切ったファンや家族への恩返しもあるが、実は肺がん。魂をかけ、芸人として勝負したい」。賃料滞納で閉鎖の危機にある寄席が人生の再起の大舞台となる。(浅野宮宏)
夏川さんは中学卒業後、上方落語の名人六代目笑福亭松鶴師匠に入門したが、素行不良で破門になり上京。漫才コンビ「青空ピン児・ポン児」のポン児として1979年、NHK新人漫才コンクールで最優秀賞を受賞。2000年度には落語で芸術祭賞優秀賞に輝いた。
夏川さんを最も有名にしたのは胃がんとの闘い。97年、進行性で余命半年と告知され、手術で胃と脾臓(ひぞう)を摘出。全国を徒歩で旅して、がん克服の講演会を各地で開いた。本を出し、テレビに出演。映画「勇気の3000キロ」のモデルになった。
「ちょっと調子が良いと気が緩んで、弱い方にいってしまう」。自ら認める性分で身を持ち崩した。胃がんと分かる前年、最初の逮捕。期待の落語家だったが、詐欺に遭い、自宅を失う。借金も抱えて自堕落になり、7年前に落語家を廃業。その後、2度逮捕され、実刑判決を受け服役。昨年7月、出所した。
今夏、せきが止まらず受診し9月8日、肺がんと診断された。「またかと。前より驚きはないが、不安はある。でも、このまま死んでる場合ではないやろ」と奮起。好きな舞台、噺(はなし)にかける決意を新たにした。
夏川さんに手を差し伸べたのが、際物ネタで落語界の異端児とされる快楽亭ブラックさん(61)。金銭問題で立川談志師匠の元を自主退会し、大病で一時は死のふちをさまよった自身の半生が重なって見え、芸術祭賞優秀賞を同時受賞した因縁もあり、舞台に誘った。
「肺がんでもこんなに声を出して頑張っていると元気を与えたい」と夏川さん。「3年間の刑務所暮らしで失ったものが多すぎた。私が舞台に立つことへの批判もあるでしょうが、命の限り芸人でありたい」
夏川さん、ブラックさんの二人会「アウトレイジ落語会」は14日午後7時、開演。問い合わせはオフィスプラスワン=電090(3259)1210=へ。
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