ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
属性
「出来ました!これでどうでしょう?」

 ミリィの描いたギルドエンブレム、そのあまりのひどさにみかねたクロードが、エンブレムのデザインを買って出たのである。
 出来上がったものは女狩人が弓をつがえた絵、その周りにミリィの描いた魔法陣の様なミミズをあしらったもの。
 どことなく女狩人がミリィに似ている。

「わ、クロードすごく上手!」
「女みたいな奴だな」
「だからボクは女の子ですよ!」
「うーん♪かっこかわいい!これにしましょ!」

 ミリィはずいぶんとお気に入りのようだ。
 ワシはぶっちゃけなんでもいいので問題なし。
 クロードはミリィに褒められ嬉しそうだ。
 エンブレムからもかなりのミリィ、リスペクトが感じられる。

「クロードはミリィを大事に思っているのだな」
「当たり前じゃないですか、僕の戦天使ですから!」

 にっこりとまぶしい笑顔を向けてくる。
 なんというイケメンスマイルだ。
 ワシ程ではないが。

 これだけミリィを慕っているクロードが、いったい何を起こしてしまうのだろうか。
 ミリィもクロードの事を気に入っているし、それはワシも同じだ。
 そもそもワシがいれば、事が起こるのを防げるかもしれない。
 前向きに考えようではないか。

「あの……ゼフ君どうかしましたか?じろじろ見て……」
「中々の美少年だな、と思っていただけだよ」
「だからボクは女ですよ!」

 クロードにつっこまれながら、最後のクッキーがワシの腹に収まった。

 ーーコボルトの森

 腹ごなしもクロードの歓迎会をかねて、ワシらはミリィの見つけた狩場に来ていた。

 誘ったのはワシだ。
 理由は先刻クロードにスカウトスコープを使った際、所持していた固有魔導「スクリーンポイント」の正体を確かめる為である。

 魔導師としては未知の魔導を知ると確かめたくなるもの。
 しかしおいそれと使ってくれ、などと言えるハズもない。
 固有魔導は基本的には秘匿するものだし、クロードに固有魔導の所持を確認する時点で、スカウトスコープの存在を隠す事も難しくなる。

 だからさり気なく探る事にしたのだ。
 さりげなくクロードに聞いてみる。

「クロードはどんな魔導が使えるんだ?」

 表情が変わるクロード。
 ……ちょっと直球すぎたかもしれない。

「バカね~そんなのわざわざ聞かなくったってスカ……むぐぅっ!?」

 お前もバカだ。
 ミリィの口を塞ぎ、ギルドメッセージで話しかける。

(スカウトスコープの事は秘密だと言っただろうが!)
(あ、そうだった。ゴメンゴメン)

 やっぱり口軽いではないか全く。

(スカウトスコープでクロードを見てみろ。所持している魔導の中にスクリーンポイントというのがあるだろう?どんな魔導か見て見たくはないか?)
(あ……なるほど、スカウトスコープってこんな風にも使えるんだ……見たい!)

 邪悪な笑みを浮かべるワシとミリィを怪訝な顔で見るクロード。

「ボクの使える魔導……ですか?ボクは初等魔導しか使いませんよ?」

 使いませんと来たか。
 どうやらワシらに教える気はないらしい。
 まぁワシもクロードに手の内を全て見せるつもりはないのでお互い様だ。

「どうしてもと言うなら、ゼフ君が決闘で勝った賞品を使えばいいではありませんか」

 そういえば負けた方が何でも言うことを聞くとか約束してたっけか。

「……いや、いいさ。そっちはもっといい場面で使わせてもらう」
「怖いですね」

 肩をすくめるクロードと不敵な顔で見詰め合う。

「……エッチなことに使うんじゃないでしょうね……」

 ミリィのツッコミを無視して移動を開始した。
 ずんずん歩いていくワシらにミリィが小走りでついてくる。

 少し歩くと大きな大木、その周りには木々もなく、開けた空間になっていた。

「あそこでクロードが襲われていたのよ」
「い、言わないでくださいよミリィさん……」

 コボルトは仲間意識が強く、一人が襲われているのを見ると集団で襲ってくる魔物。
 クロードは体術はそこそこだが、魔道は弱いしレベルも低い。
 コボルト1、2匹なら楽勝だろうが時間をかけて戦っているうちに囲まれてしまったのだろう。
 性格からして前しか見えてなさそうだし。

 考えているとコボルトがあらわれた。
 青いたてがみの半獣人、手には棍棒を持っている。

 とりあえずスカウトスコープを念じる。

 コボルト
 LV21
 魔力値2420/2420

 コボルトは地味にタフな魔物だ。
 属性系統もバラバラなので大魔導で一掃、というわけにもいかない。

 理屈は不明だが持っている武器によってコボルトの属性は異なる。
 属性が異なるから、武器の好みが違うという事なのだろうか。
 棍棒を持ったコボルトは緋属性。
 緋か蒼系統の魔導では、あまりダメージは与えられない。

「ブルーゲイル!」

 考えているとミリィがいきなり蒼系統大魔導をぶっ放してきた。
 おいおい一匹に、しかも属性相性を無視して撃つのかよ。
 竜巻に耐えるコボルト、効果は薄いとはいえ流石に大魔導か、かなりダメージを与えているようである。

「グリーンスフィア!」

 緑色の光玉がふわふわとコボルトに飛んで行き、命中と同時にコボルトをごりごりと押しつぶして行く。
 一定距離を進むと光玉は宙に霧散していった。

 翠系中等魔導グリーンスフィア。
 翠系統の魔導にしては珍しく遠距離攻撃できる魔導だ。
 もっともふわふわとしか移動しないため避けるのは容易いが、中等魔導にしてはかなり高い威力を誇る。
 狭い場所や、敵の足を止めるグリーングラス等とセットで使う魔導だ。

「勝ち~ぃ♪」

 無邪気に喜ぶミリィを見て不安がよぎる。

「もしかしてミリィ、魔物の属性を理解していないのか?」
「ん?少しは知ってるよ。全部は憶えてないけど」

 ため息をつくワシを不思議そうに見るミリィ。
 やはりと言うかなんというか。
 魔導師として絶対知っておくべきものの一つが属性相性である。
 ほとんどの魔物には属性があり、その相性次第で魔導の威力は大きく変わってくる。
 ワシも師匠に叩き込まれた。

 所持している魔導もそこまで多くない上に、本人のスペックが高い為、適当に戦ってしまい、そして勝ってしまうのだろう。
 ミリィの戦い方は雑だ。

 雑魚相手なら何とでもなるが、死者の王の件もある。
 ちゃんとした戦闘技術も知っておかねばならない。
 ミリィは師匠である父親が早くに死んだから仕方ない事ではあるが……

「ミリィ」

 そう言ってミリィの頭に手を置き、ゴシゴシと撫でる。

「ちょ……何よいきなり!ぁ……もう……」
「ワシがしっかり仕込んでやるからな」

 ミリィは困ったような顔で俯き、真っ赤になっている。
 知らないなら教えればいい。
 きちんと仕込めばミリィは最高の魔導師になれるはずだ。
 まぁワシには及ばないだろうが。

「ミ、ミリィさんとゼフ君って、そういう……?」
「ち、違うのよクロードっ!私たち別にそんな……ゼフもなんとか言いなさいよ!」

 クロードとミリィは赤くなりながら手をぶんぶん振りまわしている。
 ……二人して何を盛り上がっているのだろうか。
 木の影からをワシらの様子を伺っているコボルト(ナイフ)にレッドブラスターを撃ち込む。
 ワシの冷ややかな視線に、はっと気づく。

「よくわからんがそういうのは後にしろ。今は戦闘中だぞ」

「「は、はい……」」

 赤くなりながらもコボルトと相対するクロードとミリィ。
 しばらく三人で狩りを続けたが、二人ともどこか挙動がおかしかった。
 ワシ、何か変な事言ったか?


挿絵(By みてみん)


 先輩なろう作家、帰ってきた元勇者のニシさんに頂きました!
 かわいいミリィをありがとうございますー!

 http://ncode.syosetu.com/n4701bs/


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。