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ニッパ
 とりあえず、一匹ずつ倒していくことにする。
 ニッパはこちらから仕掛けなけれは、自ら襲って来ることはない。
 一撃で倒せれば、反撃を受ける事なく倒す事ができるのだ。

 スカウトスコープをニッパに念じる。

 ニッパ
 レベル12
 魔力値820/820

 ワシより魔力値高いのが生意気だ。
 ちなみにゾンビは560でワシより低い。
 とりあえず攻撃してみるか。

「ブラッククラッシュ!」

 黒い旋風がニッパをバラバラに切り砕き、ニッパは消滅する。
 一撃か。
 ブラッククラッシュは中等魔道なので消費が多い。
 出来ればもう1、2ランク落とした魔導を使いたいところだ。
 他のニッパに狙いを定め、ブラックショットを撃ち込む。
 空気の弾がニッパにめり込むが、まだ倒れない。ニッパがワシを攻撃しようと近づいて来る。

「ブラックショット!」

 しかし攻撃はワシに届く事なく、追撃のブラックショットで敢え無く撃沈。
 かわいそうとか言うな。

 ブラックショット二発だと、ブラッククラッシュより消費は少ないが、やはり一撃で倒した方が効率的だ。

 あぁそうだ。
 マジックアンプを使えばいい。
 二倍に増幅したブラックショットなら一撃で落とせるはずだ。

 マジックアンプを念じ、新たなニッパを探す。
 少し歩いて、見つけたニッパにブラックショットを撃ち込む。
 ちゃんと一撃で消滅してくれた。

 ニッパが消滅した後に、キラリと光るものが見える。
 急いで駆け寄ると、そこには青い宝石が。
 海神の涙だ。

「こんなに早く出るとは幸先がいいな」

 海神の涙を袋に入れ、狩りを再開する。

 大量発生すると言っていたが、範囲魔導を使うべきだろうか。
 大魔導はここでは使えない。
 ならば中等範囲魔導か。
 マジックアンプを念じ、ニッパを探す。
 いた。

「ブラックストーム!」

 小さな竜巻がニッパを切り裂く……がすぐにワシめがけて突進して来る。
 少し後ろに下がり、スカウトスコープを念じる。

 ニッパ
 レベル12
 魔力値400/820

 あと半分か……
 タイムスクエアを使った四倍ブラックストームならなんとか一撃だが、魔力をほぼ全て消費する。
 最後の手段だなこれは。

 追ってきたニッパにブラックショットを撃ち込む。
 ニッパを倒した。

 魔力を使いすぎたので、少し瞑想を行う。
 精神を集中させ、ニッパのカサカサ這い回る音と潮騒に耳を傾ける。

 カサカサ……ざざぁん……
 カサカサカサ……ざざぁ……
 カサカサカサカサ……ざざ……

 ふと周りを見ると、いつの間にか大量のニッパが発生していた。
 さっきまで探し歩いていたが、これなら歩く必要すらない。
 10……いや、20匹はいるだろう。

「これは……すごいな……」

 おっといかん。
 狩りだ狩り。

 二倍ブラックショットで一匹ずつ狩って行く。
 ブラックショット!
 ブラックショット!
 お、海神の涙ゲット。

 ブラックショットは燃費が良いので、瞑想を挟む事なく、テンポよく狩りが続けられる。

 夢中になって倒していくが、減っていく感じはなく、むしろ増えているようだ。
 視界内は見渡す限りのニッパ。
 範囲魔導を使えれば一網打尽なのに……
 いや、一撃で倒せば反撃は受けない。ニッパは自ら攻撃して来ないから安全なハズ……
 やってみるか。

 タイムスクエアからのマジックアンプダブル。
 少し瞑想をして……

「ブラックストーム!」

 四倍に強化されたブラックストームがニッパをバラバラに切り砕き、その破片を巻き上げる。
 視界のニッパを全て巻き上げ、上から幾つか海神の涙が落ちて来た。

 ガクッと力が抜ける。
 恐らく魔力は二桁以下まで減っているだろう。
 瞑想をしながら海神の涙を袋に入れる。
 フラフラとした足取りで、海神の涙を拾ってゆく。
 一個、二個……

 ふと気づく、地面が黒い。
 さっきまでは普通の色だったハズだが。
 影?

 小さな風切り音が聞こる。
 瞬間、ワシは即座に前方に走った。
 走りながら振り返ると、上空から落ちて来る赤い塊が見える。

 ーー直後

 ズズゥン! ……
 轟音と共に土煙をあげ、巨体が体を起こす。
 真紅の甲羅とハサミ。
 巨体が少し動くと、その甲羅とハサミがぎらり、と不気味に光った。

「キングニッパー……か!」

 海辺の洞窟のボス、キングニッパー。

 いや、厳密にはキングニッパーはボスではない。
 ヤツを構成する魔力は、他の魔物よりはかなり高いが、ボスと比べると全然低い。
 普通の魔物とボスの中間。
 中ボスとでも言うべきか。

 レディアの言っていた「大量発生」とは、この空洞の上に移動して来たキングニッパーの産卵だったのであろう。
 先刻の四倍ブラックストームが上に潜んでいたキングニッパーに当たり、怒って降りて来たのだ。

 強力な打撃は死者の王と遜色ないレベルだが、動きが鈍いので歩きながらでも簡単に逃げ撃ちが成立する木偶の坊ある。

 ーーただしそれは広いスペースがあればこそだが。

 この空間、キングニッパーが来ただけで一気に狭くなった感じがする。
 まずいな……

 とりあえず距離を取り、瞑想を続ける。
 逃げ道を塞がれないように。

 不意打ちなどに備えて、ワシは普段からセイフトプロテクションはかけてある。
 これがあれば一撃で死んでしまう事はないだろう。

 キングニッパーがハサミを振り上げる。
 デカいモーションだ。
 こんなものバカでも避けられる。

 ーーこんな狭い場所でなければな。

 振り下ろされるハサミを見切り、横に少し走ると、ワシが今立っていた場所に轟音が響き、衝撃で吹っ飛ばされた。

「うおっ!?」

 破片がパラパラ当たる。
 この狭い場所ではとても避け切れん。
 倒すのは当然無理だ。

 何とか端まで引きつけて、テレポートでもと来た穴に潜り込むしかない。
 流石にそこまでは追ってこないだろう。

 穴の反対側にゆっくりと歩く。
 キングニッパーもワシにピッタリついてきて、時折ハサミを振り回す。
 怖い怖い。

 キングニッパーから付かず離れずの移動を繰り返し、なんとか奴を入って来た穴の反対側まで、おびき寄せる事に成功した。

「全く手こずらせおって……だがさらばだ」

 テレポートを念じ、穴まで飛ぶ。
 キングニッパーの反対側。
 奴が向き直って追いかけて来る前に、余裕で離脱できるだろう。
 レディアにはキングニッパーがあらわれたから逃げて来た、と言っておけばいい。
 海神の涙も幾つか手に入ったしな。

 奴が気づく前に穴に潜ろう。
 しゃがみ込み、素早く頭を穴に突っ込むと、ごちん!と何かにぶつかった。

「いったぁ〜〜」

 レディアだ。
 小さな穴を覗き込むとレディアの顔とその潰れた胸が見えた。
 というかそれしか見えない。
 こんな体勢で、どうやってここまで進んで来たんだろうか。

「よいしょっ……と」

 うねうねと、身体をくねらせながら穴から這い出るレディア。

「ふいー。なんとか通れたねぇ」

 ポンポンと膝を払い、立ち上がったレディアはやはりワシよりかなりデカい。

「……軟体動物か何かなのか?」
「失礼だな君は!ていうか私何があったの?気を失ってたみたいだけど」
「あ、あぁ……いきなりふらっと倒れたからな。岩陰に寝かせておいた」
「……ふーん、そっか。ありがと!」

 怪しまれていないだろうか。
 意外と油断の出来ない娘だ。

 ズズゥン!!

 キングニッパーがこちらを向き直る。
 げ、しまった。

「おっ、キングニッパーじゃん。降りて来たんだね、ここ狭いから戦いにくいでしょ」

 あっはは、と笑うレディアはキングニッパーの存在を知っていたかのようだ。
 というか戦った事があるかのような口ぶりだ。

「……戦った事があるのか?」
「勝った事はないけどね」

 そりゃそうだ。
 キングニッパーの甲羅は凄まじい程の防御力を誇る。
 まともな物理攻撃でダメージを与える事は不可能。

「でも今ならゼフ君の魔導があるから勝てるかも……!」

 何かやる気になっているし。
 確かにレディアの身のこなしなら、キングニッパー程度、楽に前衛出来そうだが……

「やろうよ!」
「う、うむ……」

 押し切られてしまった。
 ついレディアのペースに乗せられてしまうんだよな……


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