日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の交流開始40周年を記念した日ASEAN特別首脳会議が13~15日、東京で開かれる。2003年12月にも開かれており、今回で2度目となる。
03年の会議では「東アジア共同体」構築に向け経済、政治、安全保障分野での協力強化を打ち出した。今回、政府は経済協力に加え沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題や中国による防空識別圏設定で緊張が高まるなか、会議を利用してASEANを取り込み、対中包囲網をつくろうとしているようだ。
だが、ASEANにとっては日本も中国も最重要の経済パートナーで、一方的にどちらかの肩を持つような事態は避けたいのが本音だ。政府が思い描くような中国けん制の色合いを打ち出せるかどうかは予断を許さない。
安倍晋三首相は11月にカンボジアとラオスを訪問した。就任後1年間でASEAN加盟全10カ国を訪れたことになり、ASEAN重視の姿勢をアピールした。一方政府は、早い段階から特別首脳会議で「地域的、世界的な情勢」に関する共同声明を出したいとASEANに働きかけてきた。
ASEANが中国との間で南シナ海の領有権問題を抱えることから、当初は「海上安全保障」を打ち出していたが、防空識別圏問題が浮上すると急きょ「空の安保」も提起した。
これに対し、ASEANの中からは対中最強硬派のフィリピンを除き、中国の行為を非難するような表だった発言は聞こえてこない。それどころかカンボジアのフン・セン首相は、日中両国が政治的決断を誤れば「予想もつかない深刻な結果につながる」として強い懸念を表明し、日中双方に「最大限の自制」を求めた。
マレーシアのナジブ首相も日中間の緊張の高まりに懸念を表明し「両国ともわれわれの友人で、重要だ」「両国は話し合いで解決すべきだ」などと述べている。
ASEAN加盟国が中進国や先進国へと持続的な発展を実現していくには、中国の経済力と日本の技術力の二本柱が欠かせない。日中両国と良好な関係を維持していかなければならないASEANにとって、どちらかを名指しで非難することなどできない相談だ。
“ASEANの友人”を自任する日本が、ASEANを中国包囲網に取り込むことだけに執着すれば中国も反発し、日中両国が自国陣営に引き込むための経済協力競争に発展することは必至だ。競争に敗れればASEANの日本離れも招きかねない、危うい手法であることを認識しておきたい。
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