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死者の王、後編
 四度目のレッドゼロが死者の王を焼き貫く。

「あと……三発……っ!」
「無理するなミリィ、少し休もう」
「はぁ……っ!はぁ……っ!わ、わかった……」

 死者の王から離れ、少し休息を取る。
 ミリィの息が荒い。
 ミリィにスカウトスコープを使う。

 ミリィ=レイアード
 レベル27
「緋」魔導値23 限界値94
「蒼」魔導値32 限界値98
「翠」魔導値19 限界値92
「空」魔導値12 限界値96
「魄」魔導値17 限界値85
 魔力値 61/985

 テレポート20回とスカウトスコープ数回だけだがかなり消耗しているな。
 テレポートの魔力消費は約20で、スカウトスコープと大して変わらない(ワシの場合は)
 精神状態が少し不安定なミリィならまぁこの位で切れるだろうな。

「飲め」

 そう言って魔力回復薬(大)をミリィに飲ませる。
 魔力回復薬を飲むのは初めてなのか、一口飲むと吐いた。

「ゼフ、これすごく苦い……」
「我慢して飲め」

 魔力回復薬とワシの顔を何度か見比べたのち、ちびちびと飲む。
 どうやら子供にはかなり苦い様だ。
 一口たびに口からこぼしている。
 半分位はこぼしたぞ、もったいない……

 しかし文句を言っている時間はない。
 死者の王の自己再生が始まってしまう。
 ワシの方は既に魔力は全快まで回復している。
 スカウトスコープで見るが、ミリィの魔力値はまだ半分程度しか回復していない。

「もう一杯いっとくか?」
「……いい」

 ゴシゴシと口を吹きながら、瞑想に入る。
 うーむ、やはりまだまだ子供よ。
 ワシの方の準備を済ませておくか。

 タイムスクエア……マジックアンプダブル……

「オッケー」

 恐らく7割と言った所か。
 十分とは言えないが、自己再生モードに入られると非常に困る。

「緋の魔導の神よ、その魔導の教えと求道の極地……」

 詠唱しながら、レッドゼロの射程ギリギリまで歩みを進める。
 後ろにはミリィがぴったりついて来ている。

 行くぞ、と目で合図するとミリィもこくり、とうなずく。

「レッドゼロ!」

 五発目のレッドゼロ。
 刃が死者の王を貫いた瞬間。
 その昏い眼孔に光が灯る。

 王冠が割れ落ち、額に第三の眼があらわれ、ボロボロになった赤いマントは黒く染まり、錫杖が二つに開くと、そこから黒い刃が姿を現す。
 鎌のような形態をとった獲物を持つその姿はまるで死神であった。

「あれが発狂モードだ。戦闘前にも言っておいたが、ボスはある程度削るとあぁなる。戦闘力はボスにもよるが三倍近くまで上がるぞ」
「う……うん……」

 まずいな、恐怖がぶり返したか?

「大丈夫だ。触られなければどうという事はない。セイフトプロテクションもかけてある。死ぬ事はないさ、多分」

 ニカッとイケメンスマイルで恐怖心を和らげ、安全をアピールしようとするが、ミリィは顔を歪めたままだ。
 何故だろう。

 カタタ……と死者の王が変身を終え、こちらを向く。
 会話しながらも瞑想はしていたが、まだ魔力は回復仕切っていない。

「来るぞ!」

 先刻より速く、死者の王は地を蹴り、突進してくる。
 ミリィが身構える瞬間、死者の王が鎌を振ると黒い光弾が放たれた。
 発狂モードからは追跡中にも、魔導で攻撃を仕掛けてくるようになる。
 この光弾、ただのブラックボールだが、ボスの魔力で行使されると侮れない威力になる。
 恐らく当たれば今のワシらではタダでは済まないだろう。

 ーー当たれば、だが。

 手をかざし、ホワイトウォールを念じる。
 前方に白い壁が出現し、ボスの放ったブラックボールを消滅させる。
 ウォールは種類によって効果が全く異なるが、ホワイトウォールは初等以下の攻撃魔導を、威力関係なく全て吸い込むのだ。

 切迫し、死神の鎌を振り下ろす瞬間、ミリィがテレポートで先程より五分増しで距離を取る。がビビった訳ではない。
 死者の王は発狂モードになると、敵を補足する範囲が増える。
 これはその範囲ギリギリの距離だ。
 ミリィはちゃんと冷静である。

 ワシはごくごくと魔力回復薬(大)を飲み干し、瞑想に入る。

「あと21000だよ!」

 少し自己再生したのであろう。
 どちらにしろ、あと二発で削り切れる。

 ワシを連れてミリィが逃げている間、死者の王がブラックボールを撃って来た時は、ワシがホワイトウォールで防いでいる。
 その間、瞑想での回復速度は落ちるが仕方ない。

 ーー現在の魔力は八割と言った所か

 次のレッドゼロはMAXで撃つ必要はない
 敵はかなり消耗しているしな。
 ここで一発撃っておくか。

 ミリィに目で合図すると、意を汲んで距離を離す。

 タイムスクエア……以下略

「レッドゼロ!!」

 六発目
 紅い刃が突き刺さり、死者の王は悶え苦しむ。

「あと10000……!」

 ミリィが呟く。
 次もあの程度で落ちるだろうが、念には念をいれて次はMAXで撃つ。
 魔力回復薬を飲みながら、瞑想を始める。
 突進して来た死者の王をテレポートで避けるミリィに魔力回復薬を渡すと、露骨に嫌そうな顔をしてきた。
 困った奴だな……

「ミリィも飲んでおけ、いざという時あとほんの少しだけ魔力が足りませんでした、という事態は避けたい。確実に仕留める為だ。……まぁ距離を調整しながらでは難しいかもしれんが」

 そう言ってワシは視線をおとす。

「そ、そんなの別に難しくないしっ!」

 すると食いついてきた。
 ワシからビンを奪い取ると、一気に飲み干し、ぷはぁ、と息を吐く。
 眼に涙を浮かべながら。

 ……なんかミリィの動かし方がわかった気がする。

 飛んで来たブラックボールはホワイトウォールで防ぎ、薙ぎ払う鎌はミリィがテレポートで躱す。
 丁度死者の王がワシらを見失う距離、位置取りは完璧。

 ミリィが「どうだ!」と言わんばかりの顔でワシを見る。

 ーーこれは応えねばなるまい。

 タイムスクエアとマジックアンプダブルを念じる、そして。

「緋の魔導の神よ、その魔導の教えと求道の極地、達せし我に力を与えよ。紅の刃紡ぎて共に敵を滅ぼさん!!」

「レッドゼロ!!」

 死者の王に向かって伸びた刃はその身を貫き、焼き、焦がし……
 ボロボロと死者の王はその身を崩してゆく。

 さらさらと砂になってゆく死者の王を見て、ミリィがワシに問う。

「や……やったの……?」
「あぁ、ワシらの勝ちだ」

力の上昇を感じる。
レベルがあがったな。
恐らくミリィもだ。

「……っやったぁああああああああああああああああああああ!!」


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