海自「組織全体に隠蔽傾向」異例の答申12月12日 4時50分
海上自衛隊員の自殺を巡り、国が廃棄したと説明していたいじめに関する内部調査の文書がその後、見つかった問題で、情報公開に関する国の審査会は、「組織全体として不都合な事実を隠蔽しようとする傾向があった」などと厳しく指摘する異例の答申書をまとめました。
この問題は、9年前の平成16年、海上自衛隊横須賀基地所属の護衛艦に勤務していた21歳の乗組員の自殺を巡り、国が廃棄したと説明していたいじめに関する内部調査の文書が去年になって部内で見つかったものです。
この文書の情報公開請求で、当初、不開示とした国の判断の妥当性を審査した内閣府の情報公開・個人情報保護審査会は12日までに、「組織全体として不都合な事実を隠蔽しようとする傾向があった」などと厳しく指摘する異例の答申書をまとめました。
審査会のメンバーは、主に元裁判官や弁護士、それに大学院の教授などです。
答申書は、今回の問題について「情報公開制度の運用全般に大きな疑念を生ずることになる」とも指摘しています。
また、▽文書の存在を知った事務官が直ちに上司に報告しなかったり、▽相談を受けたほかの事務官らが文書の廃棄を働きかけたりしていたとしたうえで、不開示の理由として挙げられる「文書の存在は確認できなかった」という説明の信用力を、著しく損なうものと言わざるをえないとしています。
答申書について、海上自衛隊は、「指摘の内容を真剣に受け止め、再発防止に努めたい」としています。
内部調査文書発見に至る経緯
文書は、自殺した隊員が乗り組んでいた海上自衛隊横須賀基地所属の護衛艦「たちかぜ」の乗組員190人を対象に行ったいじめなどに関するアンケートで、乗組員がそれぞれ回答を書き込み提出したものです。
答申書などによりますと、文書は、去年1月から2月ごろ、横須賀地方総監部の職員が見つけましたが、報告を受けた上司の事務官は、すぐには相談しなかったということです。
この事務官は、1か月ほどたって、東京にある海上幕僚監部法務室の別の事務官に、文書の存在を伝えたということです。
その場には、ほかに数人の職員がいたということですが、誰も、上司に報告したり、報告を指示したりすることはなかったということです。
ところが去年6月、隊員の自殺を巡る裁判で、文書の存在を指摘する現役の3等海佐の書面が提出されると、法務室の事務官は、以前、文書の存在を報告した横須賀地方総監部の事務官に、「文書を破棄する際は隠密にお願いします」などと、廃棄を示唆するメールを送ったということです。
しかし、メールを受けた事務官は、それに従わずに上司に報告し、文書の存在が明らかになりました。
その後、法務室の事務官は、横須賀地方総監部の事務官に、メールの削除を指示していたということです。
文書の存在指摘した現役自衛官は
文書が明らかになったのは、この隊員の自殺を巡る裁判で、海上自衛隊の現役の3等海佐が、存在を指摘する書面を提出したことがきっかけでした。
11日、東京高等裁判所で行われた2審の証人尋問で、この3等海佐は「文書が隠されていることを知り、隠され続ければ、悔やんでも悔やみ切れないと思った。二度とこのようなことがないようにしてほしい」と述べました。
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