ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
列車
放課後

学生というものは基本的にこの時間を楽しみにしているだろう。
学校の勉強より大事なものなどいくらでもある。
ワシも然り。

蛇骨のロッドとテレポートピアスを手に入れたワシの行動範囲は大きく広がった。
冥界に干渉する「魄」の魔導はアンデッド、特に霊体によく効く。

この手の魔物は通常攻撃で戦うにはタフだが、弱点をつけば楽に倒せ、かつ経験値も同レベル帯では多い。
とはいえ生息域が少なく、狩場は限られているのだが、運良くこの近くに低レベルの狩場があるのだよな。
ワシの記憶が確かなら。

早速街を抜け出し郊外に出て、遠くにある岩を対象にテレポートと念じる。
一足で何ゼイルもの距離を稼ぐ。
足元からブルーゼルが現れるが無視だ。
テレポート!
テレポート!

ぐいぐい移動してゆく。
しかし本当便利だな。魔導師がソロで冒険する際、先ず買うのがテレポートピアスと言われるのも頷ける。

どんどん進むと、空がどんよりと暗くなってきた。
目的地が近いらしい。
と、目の端に古い建物を捉える。
あそこだ。

建物を対象にテレポート、の前に少し瞑想を行う。
魔力をかなり消費してしまった。

あそこは朽ちはてた教会。
孤児院の役割もあり、昔は子供も沢山いたが、今は死者達の溜まり場というわけだ。
駆け出しの頃、師匠とよく来たっけか。
魔力も回復したので建物を対象にテレポートを念じる。

ーー朽ち果てた教会ーー
屍肉あさりのカラスが裸の樹に止まり、黒雲が立ち込める。
アンデッドは暗い場所を好むが、それはアンデッドが多い所が暗くなるのか、暗いからアンデッドが集まるのか
卵が先か鶏が先か
どちらでもいいか。

くだらない事を考えていると、眼前にゾンビが三匹あらわれる。
ノロノロとハエが止まりそうな動きで攻撃を仕掛けて来る、遅い!

ゾンビ三匹を対象にホワイトボールを念じる。
蛇骨のロッドが白く光り、先端についた髑髏から光弾が発射され、ゾンビ三匹を一撃の元に葬り去る。
一撃か
蛇骨のロッドの効果で大分威力が上がっているようだ。

「魄」の魔導は消費も大きく媒体も必要とする為、複数を対象に魔導を行使する事が可能だ。
理論上はいくらでも。
となればやる事は一つ。

〜♪〜♪
不気味な空気漂う墓地をスキップ交じりに歩く。
後ろには大量のゾンビ。二十匹はいるだろうか。あーだのうーだのいいながらノロノロとついてくる。

「そろそろいいか」

ホワイトショット!
魔導を念じると白い弾丸がゾンビの群れに降り注ぐ。あーだのうーだの呻きながら、ゾンビ達は地に還っていった。

と同時に

ぐん、と力の上昇を感じる。
レベルがあがったな。
経験値の高いゾンビを二十体だ。
ましてやワシはまだレベル一桁。
そりゃ上がるさ。

このわざと敵をかき集め、ある程度集まった所で一掃する戦法は「列車」と呼ばれ、魔力の消耗が少ない優れた戦法なのである。

ただし処理出来なければ、自らのかき集めた大群と戦う羽目になり、下手をすると死んでしまう為、素人にはオススメ出来ない戦法だ。リスクを考えると足が遅く、頭の悪いゾンビなどにしか使えない。

ゾンビの大群を消し去るとまた歩き始めると、すぐに次のゾンビが湧き始める。
うむ、敵の数も申し分ない。
やはりここはいい狩場だ。

何時間繰り返しただろうか。
途中から楽しくなって時間を気にしていなかった。
ワシの何十年と付き合ってきた悪い癖だ。
治した方が良いとは思うのだが、この癖がなければ魔導師として大成することもなかったであろう。
ちなみに母親もワシのこの性格は熟知しており、余程遅くならねば怒られることもない。

「そろそろ帰るか」

教会の出口まで行き、そこまでついて来たゾンビの大群をホワイトボールで消し去る。
教会からテレポートで何度も飛び、帰宅する頃には少し暗くなり始めていた。
ギリギリ夕飯に間に合ったので説教は受けないであろう。

食事が済むとすぐ部屋に行き、スカウトスコープを念じる。

 ゼフ=アインシュタイン
 レベル10
「緋」魔導値6 限界値62
「蒼」魔導値6 限界値87
「翠」魔導値10 限界値99
「空」魔導値9 限界値89
「魄」魔導値3 限界値97

バランス良く上がっている。
しばらくは朽ち果てた教会で狩りを続けるつもりだ。
出来れば「魄」以外の魔道でも、一撃でゾンビを消しされるようにしておきたい。
中級レベルの魔導なら恐らく一撃だろうか。

魔導値は昔から高レベルになる程、上がりにくくなるとされていた。
実際スカウトスコープで見るとよく分かる。
「翠」や「空」は他の魔導より二倍近く使っているはずだが、そこまでの差はついていない。
ある程度までは成長しやすいので、全系統の魔導を伸ばし、その中で気に入った魔導をメインで鍛えるのが「現在」の魔導師の修行方法だが、今生では全ての魔導を才能限界まで伸ばしたい。
いや伸ばす。

修行の算段を決めながら寝床についたのであった。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。