ロッドとアクセサリー
瞑想
無心を長時間維持する技術である。
魔導は行使の際、高い集中力が必要とされる。思考を休ませることで魔力の回復を促進させる事が可能なのだ。
「……ぃてるの?……フ?」
「……」
「ゼフ!!」
「聞いています。ごめんなさい母さん。」
すまなそうな顔をするワシを心配そうに見る母親。
すみません、瞑想してました。
一時間もしっかり瞑想を行えば、十分に魔力は回復する。冷めた食事を頬張り自室に戻るとスカウトスコープを念じる。
ゼフ=アインシュタイン
レベル7
「緋」魔導値6 限界値62
「蒼」魔導値6 限界値87
「翠」魔導値9 限界値99
「空」魔導値8 限界値89
「魄」魔導値0 限界値97
おっ、スカウトスコープのレベルが上がっているな。何だかんだで朝昼晩と一日三回は使っている。
「魄」魔導が未だ0なのだが明日からこれも修行出来るだろうか、楽しみだ。
明日の放課後を楽しみにしながら眠りについた。
学校が終わるとダッシュでキャラバンの居る宿に向かう。
宿で呼び出して貰うと、黒いボブカットの幼女が小走りに駆けてくる。
「お待ちしておりました。」
幼女に案内され、リーダーの元へ通される。
「おぉ!よく来てくださいました!ゼフ殿!歓迎いたしますぞ!」
歓迎などしていないくせに白々しい。
などとひねた考えを持つのは、ワシの悪い癖だ。素直に受け取れば良いのにな。
「こちらこそ、それでは早速見せて貰えるか?」
「魔導師様でしたらマジックアイテムをご所望でしょう。こちらに用意してあります。」
傍にいた幼女がドアを開けると、そこには荷馬車に積まれていた大量のマジックアイテムが所狭しと並べられていた。
「全て貰ってよいのか?」
「これはご冗談を、それにすべてを持ち帰るのは不可能でしょう?」
笑っているのは、冗談だと思っているからか。
まぁ置き場もないしな。そういう事にしておいてやろう。
「冗談だ。ですが幾つかはいただいて行くぞ」
「もちろんでございます。」
太い腹を突き出して答える。太っ腹だ。
それでは遠慮なく高いものから順に頂いていこう。
カチャカチャとマジックアイテムを漁る。
こういうのは純粋に楽しい。何が入ってるかわからないおもちゃ箱はワクワクするものだろう?
魔導を憶える為に使うスクロール系列は無視。かさばるし。
魔導師には必須のロッド。
軽く高価なアクセサリー。
見るべきはこの二つだ。
先ずはロッド、店売り品が多いがレアドロップの物もある。
星屑のロッド、蛇骨のロッド、水蓮のロッド……どれも初期装備としては申し分ない。
レアリティはさして変わらないので蛇骨のロッドを選ぶ。
「魄」の初期魔導を媒体なしで使用出来るロッドだ。
星屑も媒体無視があるが、ドクロの方がかっこいいしな。
こっちで決定。
アクセサリーは最初から決まっている。
テレポートピアス。
こいつだ。
これはテレポートの魔導が使用出来るアクセサリーで、視界内であれば何処にでも瞬時に移動する事が出来る。
ただし戦闘中に使用して隙だらけの背中をばっさり、とはいかない。かなりの集中力が必要だからだ。
とはいえ移動に関してはとても便利で、使えるスキルなので、ソロ中心の魔導師必須のアクセサリーだ。
次は媒体……と思ったが媒体無視のロッドが手に入ったし、無駄にジャラジャラ持っててもな、下位の媒体しかないし。
仕方ないので、換金率の高いアクセサリーを上から20個ほど、頂いておいた。
キャラバンのリーダーはひょいひょいと、遠慮なく高級品を持っていくワシを真っ青な顔で見ている。
が、むしろこの程度で済んでいる事自体感謝して欲しい。
値段で言って、全体の三分の一もいただいていないのだぞ、多分。
本来なら盗賊に全てを奪われる所だったのだ。
ワシは悪くない。
物色が終わる頃、すっかり白目を向いてしまったリーダーを尻目に、部屋を後にする。
来る時に案内してくれた幼女がワシの前を歩く。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんの仇を取ってくれてありがとう」
「君は……あのコの妹なのか。お姉さんは残念だったね」
「私たち、あいつの奴隷なの。いつか二人で自由になろうって決めてたのにね」
幼女はその年齢に似合わぬ、さみしげな表情でつぶやく。
年不相応な仕草は苦労の年月の証なのだろう。
見た目以上に小さく見えた。
幼女の手を握り、アクセサリーを一つ渡す。
「これは君が成長し、自由を得るため、自分を買うために使うんだ」
「……いいの?」
「大切にしろよ?」
宿を出る俺を幼女はいつまでも見送っていた。
似合わぬ事をしてしまったな。
まぁこの程度すぐに稼げる。
今日は遅い、家に帰りゆっくり休もう。
山の上の自宅を視界に捉え、テレポートを念じると
一瞬にして自宅までたどり着いた。
これで行動範囲がかなり広がりそうだ。
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