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盗賊
 スカウトスコープ!

 ゼフ=アインシュタイン
 レベル5
「緋」魔導値 2
「蒼」魔導値 2
「翠」魔導値 5
「空」魔導値 4
「魄」魔導値 0

 ブルーゼルを休憩しながら何匹か狩り、レベルも上がった。
 悪くないバランスで鍛えれていると思う。「魄」は魔導の行使に、媒体のマジックアイテムが必要なので、現状修行自体が出来ない。
 とりあえず今は考える必要なし。

 この近辺にはブルーゼルしかいない。スカウトスコープを使った測定により、ある程度弱い魔物はその経験値が分かっている。
 ブルーゼルは現時点で確認済みの魔物の中で尤も多く、尤も経験値の低い魔物だ。この辺りの平原はブルーゼルしかいない。

 経験効率はあまり良くないが、この村を出るのはもう少しレベルが上がってからだな。生活の基盤も欲しい。現状、金もコネもなさ過ぎる。暫くはこうして修行に励むしかない。

「グリーンボール!」「グリーンボール!」

 今日も今日とてグリーンボールを振るう日々である。
 必死に攻撃を続けるワシに、背後からブルーゼルが現れ、不意打ちを仕掛けて来た。

 ブルーゼルは基本的に地面の下で生息している。
 雨水が地面に染み込み、魔力の宿ったものがブルーゼルになると言われている。
 獲物が近くを通ると地面から湧き出し、襲ってくるのだ。
 まぁしかし動きは遅いので、人に危害を加える程強くはない。この年齢の子供でも逃げるだけならたやすい。

 背後からのろのろ迫る触手を軽く躱し、レッドクラッシュ!と念じる。
 手のひらから爆炎が放出され、ブルーゼルを焼き尽くす。炎の中でバラバラになりながらブルーゼルBは消滅した。

 力が一気に抜ける。感覚的にはレッドボール10発分位か、レッドクラッシュは緋魔道中等クラスの魔導だ。射程は短いが威力の割に魔力消耗の低く、コストパフォーマンスがよい。

 一回の戦闘に時間がかかる為、ある程度敵のおかわりを許してしまう。二体同時に相手にするのは厳しい為、追加の一体はレッドクラッシュで焼き払うことにしている。
 もう一体のブルーゼルもグリーンボールで殴り倒す。
 レッドクラッシュを使うと、疲労が激しい。
 休憩だ。

 魔力はレベルと共に向上し、魔導のレベルが向上する程、魔力の消耗が低く、そして威力は大きくなる。
 精神を休ませ、リラックスすることで回復する。尤も魔力回復率がよいのが瞑想だ。
 普通は座って行うが、慣れれば歩きながらでもある程度は回復出来る。
 ワシクラスまで極めれば、会話や思考中、調子のいい時は戦闘中でも瞑想を行うことが出来る。
 しかし今のワシの魔力量では、やりくりも難しいのである。

 二、三分瞑想しただろうか。大分魔力も回復してきた。日も落ち始め、少し暗くなり始めてきた。

「そろそろ帰らないと、暗闇での戦いは危ないからな」

 というか母さんが心配する。
 10才故の悩みだ。
 こればっかりはね。

 道に落ちていた石を蹴りながら、帰っていると町に多くの馬車が向かっている。
 隊商だろうか、かなりデカいキャラバンだ。

 よい装備品があれば修行の助けとなるので欲しいな。流石に今日から商売はやらないだろう。早くて明日からだろうな。
 修行の前に見ておいてもいいかもしれない。
 金ないけど。

 とりあえず家に帰って休もう。

「きゃああああああっ!!」

 女の人の甲高い声に振り向くとキャラバンから火が上がっている。それだけじゃない、人が争っている……

 キャラバンと言うのは、巨大な隊商であるが、殆どは商人なので戦闘能力は低めだ。
 なので戦闘に特化したパーティを雇ったりするのであるが、その雇ったパーティが盗賊の類だったのだろう。安さを求め、信用度の低い仲介屋を使ったのだろうな。自業自得だ。

 しかしワシにはラッキーだ。今の経済力では安いマジックアイテムを買うことも難しいが、キャラバンを救えば高価な装備品をお礼として期待できる。

 とはいえ相手次第だ。魔力もレベルも一般冒険者レベル以下だからな、今のワシは。

 どう攻めるか、作戦を練っていると、少女を乗せた馬が駆けて来る。
 どうやら戦闘から逃げてきたらしい。

「君!早く逃げなさい!あのキャラバンは襲われている!」

 知ってるよ、君こそ早く逃げるべきだ。

「私は町に助けを呼びに行くから、君は町から離れなさい!町も襲われるかもしれない!南に行けば他の村があるから、そっちに逃げ」

 ぐらり、と女の子が馬から転げ落ちる。背中には一本の矢が突き刺さり、どくどくと血を流していた。

「逃げ……早く……」

 ーー少女は最後までワシの心配をしながら事切れた。
 遠くには下卑た笑みを浮かべ、弓を構える盗賊。
 ワシのことも確認したようだ。もう一度弓をつがえ、そして

 ーーブルーショット

 青い弾丸が盗賊に直撃し、その腕を凍らせる。急激に冷却された両腕はビシビシと悲鳴を上げ、バキン、と割れる。

 何が起きたか理解出来ていない盗賊の顔面にレッドボールを念じる。
 火の塊が盗賊の顔面を覆うと、苦しみもがきながら馬から転げ落ち、すぐに動かなくなった。

 他の盗賊達がすぐに気づき、倒れた盗賊に駆け寄るが、死んだ命が戻ることはない。盗賊共はワシの方を見て、信じられないといった視線を送って来る。
 子供、しかも魔導師だと……的な

 大してこちらは冷静だ。
 先刻はつい感情的になってしまったが、今はひどく落ち着いている。
 この世界ではこの手の外道は掃いて捨てるほどいる。
 前世ではいくら狩ったか全く憶えていない程だ。
 さくり、と効率的に

「狩ってやろう、ハイエナ共……!」




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