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旧日本軍の艦船などの絵 史料館に寄贈
12月12日 5時50分

旧日本軍の艦船などの絵 史料館に寄贈
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太平洋戦争中の旧日本軍の艦船などを精密に描いたおよそ2500点の絵が先月、東京都内の史料館に寄贈されました。
中には兵士や物資の輸送中に撃沈され、多数の犠牲者を出した輸送船の絵が多く含まれ、史料館では、輸送船の史実を後世に伝える貴重な資料として、今後、一般公開に向けて準備を進めることにしています。

寄贈されたのは、静岡県に住む海洋船舶画家、上田毅八郎さん(93)の作品およそ2500点で、先の大戦で負傷や病気をした元兵士の体験を伝える史料館「しょうけい館」に先月、引き渡されました。
上田さんは、旧日本軍の艦船をテーマにしたプラモデルのパッケージの絵を手がけたことで知られ、寄贈された中には、戦艦「大和」や「武蔵」などの原画が含まれています。
また、今回プラモデルには採用されていない「輸送船」の絵、およそ150点も寄贈されました。
輸送船は太平洋戦争の開戦を機に戦線が広がるなか、兵士や物資を運ぶ役割を担っていましたが、十分な護衛を受けられずに次々と撃沈され、「戦没した船と海員の資料館」によりますと、兵士や船員、それに民間人の合わせて23万人以上が亡くなったということです。
輸送船の砲兵だった上田さんも戦時中、利き手の右手にけがをしましたが、亡くなった仲間を慰霊し、戦争を語り継ぐため、左手で絵を描き続けたということです。
寄贈を受けた「しょうけい館」の学芸員の木龍克己さんは、「輸送船は、ほかの艦船と比べて写真や資料が少なく、絵は輸送船の史実を伝える貴重な資料だ」と話していて、今後、一般公開に向けて準備を進めることにしています。

輸送船の絵が心の支えに

太平洋戦争中に撃沈された輸送船は、写真や資料が残っていないことが多く、犠牲者の遺族の中には史料館に寄贈された輸送船の絵を心の支えにしている人もいます。
寄贈された絵に描かれた艦船のうち、輸送船「富山丸」は、昭和19年6月、沖縄に向かう途中、鹿児島県徳之島の沖合でアメリカ軍の潜水艦に撃沈され、兵士など3700人以上が亡くなりました。
千葉県船橋市に住む杉田明傑さん(72)の父親もこの船で亡くなりましたが、家族の元に戻ったのは沈没した海の近くにあったというサンゴだけで、船の写真も鮮明なものは見つかりませんでした。
父親に関する資料を探していた杉田さんは7年前、靖国神社にある図書館で富山丸の絵の複写を見つけました。
今回、絵を寄贈した上田毅八郎さんが「遺族が来たら写しを渡してほしい」と図書館に託していたもので、杉田さんはこの絵を心の支えにしているということです。
杉田さんは、「輸送船の絵は、遺族の心の慰めとなっているだけでなく、戦争の悲惨さや、再び戦争を繰り返さないように、かじ取りをしてほしいという、亡くなった人たちの思いを今に伝えている。多くの人が絵を見て、後世に語り継いでほしい」と話しています。

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