■浜矩子・同志社大院教授

 安倍政権は、経済政策のアベノミクスが「富国」を、今回の特定秘密保護法や、国家安全保障会議(日本版NSC)が「強兵」を担い、明治時代の「富国強兵」を目指しているように見えます。この両輪で事実上の憲法改正を狙い、大日本帝国を取り戻そうとしているかのようです。

 特定秘密保護法は、何が秘密なのかが分かりません。それだけに、企業はこれから、政府の顔色をうかがい、原発輸出や資源確保など「富国強兵」にかなうことに突き進む可能性があります。

 政権は「デフレからの脱却」を掲げています。しかし、その内実は人々のためというよりも、全体の成長を重視するものです。国民のためではなく国家のため。それがアベノミクスです。成長のためなら、と働く人たちの解雇規制を緩めようとしています。国家重視のなかで、福祉などの市民活動にはお金が回らなくなるかもしれません。

 安倍政権と距離を置こうという雰囲気も感じます。2月のオバマ米大統領との首脳会談では晩餐(ばんさん)会がありませんでした。中韓とは無用な緊張が高まっており、日本が国際的に孤立する恐れもあります。

 今回、実に危険でおぞましい発想が法律になり、市民が大規模な抗議行動を起こしました。今後も抗議の手紙を出すなどして怒りを粘り強く示していくべきだと思います。

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 特定秘密法が成立したが、反対する市民の声はなおも広がっている。今後どうすべきか。各界の人たちの意見を引き続き紹介していく。