世界最速を謳ったバイクは数知れず、しかし史上最強のバイクと言うならホンダのカブではなかろうか。
スーパーカブのタフネスなエンジンは高燃費で、軽い車体と取り回し易さは通勤から普段の足としても最高の相棒になるし、その気になれば遠乗りツーリングだって楽しめる。
そういえば、結婚するならスーパーカブ並みに生活力のある男が良いと、漫画バリバリ伝説でみいが言ってたっけ(笑)
原付の中でも取り分けて歴史のあるカブやモンキーの横置きエンジンはマフラー、キャブ、カム、ヘッドと、弄りだすとキリがなく、気付けば車体価格を軽くオーバーするなんてのはザラにある話。
されど原付と馬鹿にする事なかれ、その奥深さは立派なバイクである。
しかし、50cc以下の(原付一種)いわゆる原チャリには30km/h規制があり、幹線道路でクルマの流れに乗ろうものなら、白バイ野郎の格好の餌食に…。
さらに三車線以上の信号機のある交差点では二段階右折が義務付けられている。
どちらも原付に課せられた試練のような法律であるが、原付でも50cc以上〜125cc未満の原付二種であれば30キロ規制も二段階右折もパスできる。
若干の維持費は上がるものの、二輪免許を持っていれば普通のバイクとして扱われる黄色とピンクナンバーのメリットは排気量以上に大きい。
そんな訳で今回は友人のオーダーでリトルカブを75ccへボアアップ。
リトルカブのオーナーはノーマルの外見が気に入っていて、30キロ制限と2段階右折のスルー、発進時のトルクアップが主な狙いで、吸排気はそのままでOKとの事。
キタコのライトボアアップキットは値段も安く手軽にパワーアップができて、燃料もレギュラーで日常の使い勝手もノーマルとなんら変わらない。
シリンダー&ピストンのみの交換は、カムチェーンがあるくらいで組み込み作業は2ストの腰上OHと大差はない。
作業は付属の取り付け説明書でも十分だけど、サービスマニュアルがあればよりベター。
さてさてチャッチャと組み換えますかね。
ライトブルーのボディーにレトロなブラウンのグリップとシートがなんともシャレオツなリトルカブ。
まず、レッグカバー等、作業の邪魔になるカバー類を外してマフラーをを取り外す。
キャブとマニホールドを止めている8mmx2のボルトを外せば、シリンダーの取り外し準備OK。
シリンダ右側の貫通ボルトを外すとカムカバーが外れる。
カバーに紙ガスケットが残っていると、せっかく組み上げてもオイル漏れてきて作業が台無し…。
こびり付いたガズケットはクリーパーでしっかり取り除き、組み付ける前オイルストーンで表面をならしておく。
シリンダーヘッドは3点が袋ナットで右下は普通のナット、左下は銅のワッシャーになっている。
スタッドボルトにオイルラインがあるので、組む時に使うナットを間違えるとオイル漏れの原因に…。
エンジン関係のナットは外れなければOKって訳には行かないので、後で泣きを見ない為にも締め付け時にはトルクレンチは必須。
走行距離の低い車両なのでリシンダーヘッドは簡単に引き抜けた。
シフトぺダルとフライホイールカバーを外してTマークと死点の位置と、カムスプロケの○マークとチェーンの位置を確認。
カムスプロケットとカムチェーンは噛み合った状態でタイラップや針金などで固定しておく。
こうしておけばバルブタイミングが変わらずに、迷わずに組みつけられる。
ピストンを止めているクリップは簡単に取れてはいけない部分だけに外し方に少しコツがいる。
先の細いペンチ等でテンションをかけながらタコ焼きをひっくり返す感じでクルッと…。
ちょっと違うかナ(笑)
クリップは外した時にエンジン内部に落ちたり、取り付け時にあらぬ方向にブッ飛んだりするので注意。
コンロッドの隙間にはウエスを詰めておく。
エンジン内部に入るのもマズイが目に飛び込むのも怖いっ!!
49ccと75ccのシリンダーとピストン。
プラス25ccは視覚的にも思っていたより大きく感じる。
自分はバイクやクルマ乗っている時、ピストンが頑張ってるところを想像するのが好き、というか萌える!
だから、原付クラスの小さいピストンだと更に萌え萌え(笑)
カムスプロケットを一度外すとチェーンにテンションがかかってスプロケがはまってくれないので、エンジンの下側にあるボルトを外して一旦カムチェーンテンショナーをフリーにしときます。
この時にスプリングがビヨ〜ンと飛び出し小量のオイルがこぼれるので受け皿か新聞紙を敷いておく。
キックペダルを踏み下ろすと普通にアイドリングしてくれた。
人のバイクなのでエンジンが掛かってくれないと困るんだけどね(笑)
さすがに朝飯前とはいかず、なんだかんだで組み上がった時にはもう日が暮れていた。
さて、エンジンが無事掛かったらお次はキャブのセッティング。
しかし、エアスクリューの調整ネジが見慣れない物になっているではないか…!?
通常はマイナスネジだがコイツはD型の凸な形状で、要するに勝手に弄るなって事らしい。
細いドライバーやヘアピンで回せない事も無いが、ここはやはり専用工具の方がいいだろう。
で、これがD型のエアスクリュードライバー!!プロレス技みたいだ(笑)
アストロ工具店で¥980で売ってます。
ドライバーにしては高いけど純正に比べれば半額以下の値段。
モンキーやカブ系のエンジンである程度の速さを求めるなら、ヘッド回りを交換する事になると思うが、
今回はシリンダー以外はノーマルのなのでヘタにジェット類を交換してセッテイングで迷うより、エアスクリューの調整のみが無難だろう。
スクリューはノーマル位置では濃く、暖気後にエンストを頻発するので薄い方向で調整した。
季節によっては再調整が必要になるかもしれないが、割といい感じである。
最後の仕上げはフロントのスプロケをストックより+1Tの15Tに変更。
交換はチェーン調整の要領でチェーンを緩ませ、スプロケットを留めているナットx2を外せば簡単に交換できる。
3速しかないので大道りを巡航する機会が多いなら16Tでも良いいかもしれない。
100キロ程の慣らし走行を終えてオイルもれが無いかチェック後、各部の増し締めをして今回の作業終了。
プラス25ccの変更は速くなると言うよりも楽になると言った感じだ。
ナンバーの色は黄色になり、30キロしばりから開放されるのは精神的なパワーアップは大きい。
極端な速さを追求しなければ、ライトボアアップはコストパフォーマンスも良く一石二鳥のチューニングだと思う。
これで安心して、クルマの流れに乗れる仕様に。
鈴鹿で生まれたホンダのフラッグシップNSXも次期新型はアメリカで生産され、スーパーカブもキャブレターからインジェクション化され、生産国が中国となった。
少し寂しい気もするが、これも時代の流れなので仕方無い事なのだろう。
カブは本田宗一郎と藤沢武夫が世に送り出した偉大な発明品で、こんなにも世界中の人達に愛され続けらるバイクはそうそう無い。
あらためて見ると、ケースに彫られたメイドインジャパンの文字が誇らしげである。
今回のボアアップで自分も横置きエンジンのバイクが欲しくなってしまった。
モンキーRやカブでタイプR仕様とか想像するのは楽しいけど、ハマりすぎると散財するのが怖いので、自分の場合は想像に留めておくのが良さそうだ(笑)
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