ここしばらく、特定秘密保護法案関連の話題で持ち切りになっている。6日に参議院本会議で可決され成立した後も、廃案を目指した運動が広がっている。この法案の是非についてはさておき、世論の形成について検証してみよう。
テレビや新聞などの大手マスコミの多くは、特定秘密保護法案に大反対。反対派の意見を連日報道していた。独自のアンケート結果なども紹介し、大多数の国民が反対していると伝えている。しかし、朝日新聞が特定秘密保護法案についてネットでアンケートを取ったところ、賛成派が圧倒的多数になった。これは珍しいことではない。
ニコニコ動画でも、11月28日に特定秘密保護法案に関するアンケート調査を行っている。結果は「成立させるべき」が「審議延長が必要」「廃案にすべき」を上回る36.6%でトップ。ほかのウェブ媒体でのアンケートでも、半数以上が賛成という結果が出ている。この温度差はなぜ生じるのだろうか?
11月22日に東国原英夫氏はTwitterで「朝日新聞の女性記者(知り合い)から連絡があり『特定秘密保護法案に明確に反対してくれれば記事にするので、取材をお願いしたい』と言われた。メディアというのは、大体こんなものである」と投稿している。反対なら記事にする、ということをしていれば反対派の意見ばかりがメディアに登場するのも当然だ。それなのに、なぜ反対派が主流にならないのか? それは、アピールの仕方が間違っているからだ。
特定秘密保護法案に反対するなら、論理的に反論すればいい。それなのに、針小棒大に騒ぎ立てたりヒステリックに反発するので、引いてしまう人が出るのだ。さらに、大マスコミや一部の著名人が大反対しているのもネック。もとより、そういった対象に対して不信感を持っている人は少なくなく、“いつもウソばかり垂れ流すマスコミが反対するなら、きっといい法律に違いない”というねじれた流れもできている。精神科医の香山リカ氏も「秘密保護法に反対してる人がみなキライだからきっと良い法律なんだろ、という意見をネットでよく見る。反対を語れば語るほど逆効果になるくらい嫌われてるちゅうことを、私を含めたいわゆるリベラル派は考えてみなきゃ。これじゃ反対会見開いてかえって法案成立に貢献しただけ、ってことになる」とツイートしているが、まさにその通りだ。
嫌いな人が意見を述べているから、という理由だけで、自分はその反対に手を挙げるとは情弱といえるが、そういった人たちは少なくない。ネットで意見を発している人を「ネトウヨ」と十把一絡げにして軽視するのは間違いだ。ネトウヨなんて存在しない。ネットユーザーもリアルと同様、ありとあらゆる人がいる。変人もいるが、大多数は普通の人たちだ。この状態が続けば、マスコミがゴリ押しするほど、逆の流れができるようになる。
もし、筆者が反対派のブレーンであるなら、賛成派の意見も同じ比重で報道し、ユーザーに判断させることを選ぶ。デメリットもメリットも同じように紹介する。そうすれば、少なくとも「急いで決める必要はないんじゃない?」という流れになったはず。ネットで多数の人に敵視されている、という人なら、見当違いの論理で賛成すればいい。一挙に大多数の人が反対派に回るはずだ。
今回も想像通りの流れに乗ってしまった。ネットのムーブメントを特定秘密保護法案に反対する流れに乗せれば、廃案まで可能だろうに、このままでは賛同派が増えるばかり。しかし、反対派のほとんどはそのことに気がついておらず、ヒステリックになって賛成派を情弱呼ばわり。流れに棹さしているだけだ。世論を作り出したいなら、それなりの手法をとればいいのに、と思う。
とはいえ、そのうち逆張りの世論誘導術が行われるかもしれない。日刊サイゾーのユーザーには、上記の人たちのように感情で動かず、自分で情報のソースを当たり、自分の考えで判断を下してほしい。
(文=柳谷智宣)