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地震で超高層ビル壊れる過程を明らかに
12月11日 19時8分

大地震の際に超高層ビルをゆっくりと揺らす「長周期地震動」と呼ばれる揺れに、ビルがどの程度耐えられるかを調べるため、鉄骨で造った大型のビルの模型を壊れるまで揺らす初めての実験が兵庫県で行われました。
南海トラフの巨大地震で想定される揺れで、超高層ビルは天井や壁が大きく崩れ落ちる可能性があることが分かりました。

実験は、独立行政法人の防災科学技術研究所と大手建設会社などで作る研究グループが、兵庫県三木市にある震動実験施設「E-ディフェンス」で行いました。
実験に使ったビルの模型は、高さおよそ25メートルの鉄骨造りで、20階建て程度の高さ75メートルの超高層ビルに相当します。
実験ではまず、マグニチュード9クラスの南海トラフの巨大地震が発生した場合に東京や大阪などで想定される揺れを入力しました。
耐震基準の2倍余りの強さの揺れです。
その結果、長周期地震動の揺れで、最上階の水平方向の揺れ幅は61.6センチ、20階建てのビルの最上階で揺れ幅がおよそ1メートル80センチに相当する揺れになりましたが、ビルが倒壊することはありませんでした。
しかし、中ほどの階を中心に、柱とはりのゆがみが耐震基準の2倍近くになるなど、多くの階で天井や壁が崩れ落ちる可能性があることが分かりました。
さらに耐震基準の3倍の揺れでビルを揺らしたところ、2階など複数の階の柱とはりの接合部が壊れ、基準の4倍を超える揺れで繰り返し揺らした結果、低層階の変形が次第に大きくなり5回目の揺れで倒壊しました。
超高層ビルが壊れていく様子を実験で確かめたのは初めてで、研究グループは、天井や壁が崩落しない対策や補強方法を検討するほか、ビルの安全性を速やかに調べる技術開発を進めることにしています。

長周期の揺れへの対策が課題

おととしの巨大地震では、超高層ビルをゆっくりと揺らす「長周期地震動」が発生し、震源地から離れた東京や大阪で高層階が大きく揺れて、その防災対策が課題となっています。
大阪府の咲洲庁舎は10分以上揺れ続けて、揺れ幅は最上階で最大3メートル近くに達し、内装材や防火扉など360か所に損傷が見つかったほか、エレベーターのロープが絡まって閉じ込められる被害も起きました。
また東京・新宿の高層ビルでも、揺れ幅が1メートル以上に達しました。
国が想定しているマグニチュード9クラスの南海トラフの巨大地震では、震源域が陸に近いため、おととしの巨大地震より揺れが強くなるうえ、大阪や名古屋、東京などでは地盤が比較的軟らかく揺れが増幅されるとみられています。
専門家のシミュレーションによりますと、東京の超高層ビルの中には、おととしの巨大地震に比べて、揺れ幅はおよそ5倍、揺れの継続時間は20分以上になるビルもあるということで、対策が課題になっています。

迅速な危険度判定も課題に

国土交通省によりますと、高さ60メートル以上の超高層ビルは、全国におよそ2500棟あり、その9割は東京・大阪・名古屋の3大都市圏に集中しています。
南海トラフの巨大地震が起きた場合、地震のあとビルを使い続けられるかどうかは、都市の復旧に大きく関わるため、その判定をどのように進めるかも課題になっています。
日本建築学会によりますと超高層ビルの構造に詳しい専門の技術者は、全国で150人から250人程度で、巨大地震で3大都市圏が同時に被災した場合、ビルの安全性に問題がないかどうかを調べるのに2週間から1か月余りかかるとみられています。
このため今回の実験では、地震後ビルを使い続けられるかどうかを速やかに判断する技術開発も目的の1つとなっています。
ビルの構造を支える柱やはりなどが壊れる限界を把握できれば、その場所に地震計などのセンサーを設置し、実際の揺れのデータからビル全体の危険度を計算できるからです。
研究グループの鹿島建設技術研究所の高橋元美上席研究員は「ビルが使い続けられるかは都市部の復旧のスピードにも大きく関わる。今回の実験結果を活用して、ビルの被災度を速やかに判定できる仕組みを作りたい」と話しています。

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