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2013年12月4日(水) 東奥日報 ニュース



■ 新幹線開業3年、新青森駅周辺保留地分譲2区画のみ

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 2010年の東北新幹線新青森駅開業から4日で3年。青森市は石江地区の同駅前に保有する商業用「一般保留地」の購入者募集を開業前の08年2月に開始したが、18区画中2区画が売れただけで、残り16区画は今も手つかずのままだ。同駅利用者や周辺住民からは「県都の玄関口にふさわしい整備を早期に進めるべき」との声が上がり、市も販売促進へさまざまな施策を講じているが、新たな購入者が見つからない状況が続いている。買い手がつかない最大の理由を、不動産関係者らは「保留地が周辺よりも地価が高いことが足かせになっている」と口をそろえる。

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 「採算が取れるかどうか正直不安でした。地価が高いから」。昨年の一時期、新青森駅周辺に4、5階建てのオフィスビル建設を計画していた県内のある企業の担当者はつぶやいた。

 飲食店などのテナントを入居させた数百坪のビル建設を検討し、保留地も建設候補地の一つと考えていた。しかし保留地の坪単価は30万円前後。想定を10万円近く上回っていた。

 この担当者の話を基に、例えば1区画2億2011万円(2297平方メートル)で販売中の保留地の場合、本紙試算では、実際の販売価格は同社想定より7千万円以上高いことになる。

 担当者は振り返る。「テナントを募集したが『周りは空き地ばかりで集客が望めない』との声ばかり。1件も入居契約が取れなかった」。結局、ビル建設は断念した。

 保留地でこれまでに売れたのは、10年2月のレンタカー会社事務所と08年10月のオフィスビルの2区画のみ。市は販売促進策として(1)融資利息の一部を補助(2)あっせんした不動産業者に補助金(3)契約額を助成―などを講じてきたが、この3年、新たな買い手は出てきていない。不動産業者らは売却が進まない最大の理由として、保留地の販売価格が石江地区の実勢地価を上回るためと見る。

 市の設定価格は1平方メートル当たり8万3700〜13万4千円。市内のある不動産業者は、保留地周辺の実勢価格を見ても1平方メートル当たり5万〜6万円が相場―として「現行価格では高すぎて売れない。価格を抜本的に見直すべきだ」とする。

 しかし、市は値下げに否定的だ。保留地は、市債を発行して金融機関から約32億円を借りて整備した。返済には土地の売却収入を充てるが、値下げすれば、石江土地区画整理事業の特別会計は財源確保が困難になり、歳入不足を一般会計で補わなければならない。鹿内博市長は「値下げは市の負担を増やす。それだけは何としても避けたい」と話す。では、どうすれば売れるのか。

 青森市は石江地区の新青森駅前の保留地が売れない理由について、地価が高いことだけではなく、新駅周辺の景観などに配慮して建築物の高さなどを規制してきたことも一因─と考え、昨年から地区計画見直しを検討してきた。保留地内の建築物の規制を緩和する方針を固め、今年10月には規制を定めた石江地区計画の見直しについて地権者に説明。地権者らの承認が得られれば計画を修正し、販売のてこ入れに結びつけたい考えだ。

 具体的には、「高さ20メートルまで」との制限を、道路からの後退距離に応じ20メートル以上の建築物を建てられるように修正。また「店舗面積3千平方メートル(売り場のみ)まで」の制限を、1万平方メートル(売り場以外含む)に拡大する。店舗を兼ねたマンションなど共同住宅の建設も認めるという。

 市は保留地の建築規制緩和方針について、12月中に市民向け説明会を開き、来年2月予定の市都市計画審議会を経て年度内には成案にこぎ着けたい考え。鹿内博市長は「以前から保留地に興味を持つ企業が、購入に前向きになってくれるのでは」と期待する。

 しかし、地権者への説明から1カ月が経過しても、石江区画整理事務所への企業などからの問い合わせは数件のみという。

 同事務所は市が建築規制緩和方針を示す以前から、小売業や医療系など県外企業6社に保留地購入を打診している。ただ、企業はいずれも購入条件としてホテルの先行立地やテナントビルへの入居を掲げており、相乗的な集客が見込めるかどうかに注目している。建築規制の緩和方針を提示しても「各社とも検討材料にすぎない段階」(同事務所)で、市の新たな戦略が打開策になっていないのが実情だ。

 高い地価、建築規制、進まない施設の先行立地―。市や企業の話から、この三つが保留地の分譲が進まない主な要因に集約できる。新青森駅開業から3年が経過し、市はようやく建築規制緩和方針を打ち出したが、地価や先行立地の問題が解決されない限りは今後も売り込みは難しい。地価を下げれば、企業などが保留地を購入しやすくなり、施設が立地することで、それが“呼び水”となって土地が売れる―との見方をする市内の商業者や不動産業者は少なくない。

 空き地が広がる現状について、新青森駅西口の保留地を購入したトヨタレンタリース青森の担当者は「とても寂しい。お客さんからも『周辺にビジネスホテルがなくて不便だ』との声をたくさん聞く」と漏らす。

 北海道新幹線開業まであと2年余。このまま保留地の空き地状態が続くなら新青森駅は通過駅になるのでは─との地元の危機感は強まるばかりだ。

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