〔クロスマーケットアイ〕利益確定モード続く、「ボルカールール」に安心感も
[東京 11日 ロイター] - 11日の東京市場は利益確定モードが継続中だ。「 ボルカールール」最終案は、事前の警戒ほど厳しくなかったほか、米財政協議も進展し、 マーケットには安心感が広がっている。ただ、足元のリスクオン相場には、高値警戒感も 強く、SQ(特別清算指数)算出や米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて、ポジシ ョン調整の動きが続いており、緩やかながら株安・円高となっている。 <マネー縮小の懸念後退> 2年にわたる協議を経て10日、最終案が明らかになった「ボルカールール」は、市 場の警戒感を後退させる内容だった。米銀に対し、投機的なリスクの高い取引を禁じる一 方で、通常のリスクヘッジやマーケットメーカー(値付け業者)として顧客のためにリス クを負うことは承認された。日本国債も対象から除外された。 実際の運用については、まだ不透明な部分があるものの、市場では「投機的な取引を しなければ、銀行の通常業務には、それほど影響はなさそうだ。今の社会のムードを考え れば、抜け道を探して投機に走ることもないだろう」(りそな銀行・総合資金部チーフス トラテジストの高梨彰氏)とポジティブな受け止めが多い。 すでに米大手金融機関はボルカールール導入に備え、影響を受けると予想される事業 を縮小しているほか、導入時期が2015年7月に1年延期されたことで、短期的な影響 は乏しいとみられている。 ヘッジファンドとプライベート・エクイティーに対する投資総額がファンドの総資産 の3%、および銀行の中核資本の3%を超えてはならないとする規則は残ったが、市場で は大規模なポジション縮小にはつながらないとの見方が出ている。 大和証券・チーフテクニカルアナリスト、木野内栄治氏は「巨額な債券運用のヘッジ のために日経平均先物を買っているヘッジファンドの多くは、海外銀行の自己勘定部門が 分離して設立されたケースが多い。今回のルールでは、自己勘定取引でも純粋なヘッジ目 的であれば認められることになっており、銀行がファンドを再び取り込めば、影響は少な いだろう」と話す。 <いろいろな材料が「織り込み済み」に> しかし、マーケットには慎重ムードが継続している。11日の東京市場で日経平均<. N225>は終値で1万5500円の心理的節目を維持したものの、一時200円安となるな ど終日軟調な展開となった。「海外勢だけでなく、国内勢の動きも鈍い」(国内証券)と いう。東証1部売買代金は2兆1171億円と盛り上がりは乏しい。 13日にメジャーSQを控え、利益確定売りのポジション調整が取引の中心になって いることもあるが、円安が止まるととたんに上値が鈍くなる最近の動きを踏襲する展開と なった。「日経平均の予想株価収益率(PER)は16倍前後と割高感はないが割安感も ない水準。一段の円安がないと企業業績拡大の期待は抱きにくい」(しんきんアセットマ ネジメント投信・運用部長、藤原直樹氏)という。 その円安も、米テーパリング(緩和縮小)観測をかなり織り込んできたことから、材 料に反応しにくくなってきた。 米議会超党派委員会の民主党代表を務めるマリー上院予算委員長と共和党代表のライ アン下院予算委員長は10日、約850億ドル規模の予算案で合意したと発表。予算案は 上下両院の本会議で承認される必要があるが、3年近く続いた財政協議の混迷が終わる可 能性が出てきた。テーパリングを後押しする材料であるものの、ドル/円は102円台を 抜け出せていない。 T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏は「ボルカールール も米財政協議の進展もある程度、織り込み済みだったということだろう。景気も底堅いと の認識が強まっており、サプライズは起きにくい。いろいろなことが織り込み済みになっ ており、新たな材料が出るまで、底堅いがこう着感の強い相場になりそうだ」との見方を 示している。 <東京市場 11日> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日経平均 国債先物3月限 国債332回債 ドル/円(15:00) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 15515.06円 144.14円 0.660% 102.73/75円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -96.25円 +0.13円 -0.005% 102.82/87円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注:日経平均、国債先物、現物の価格は大引けの値。 下段は前営業日終値比。為替はNY午後5時。
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