師走の大阪・天神橋筋商店街。
日本一長いとされるアーケードでおなじみの商店街は、連日、買い物客で賑わっています。

<買い物客・男性>
「ずいぶん人通りも多いし、街も明るくなっているし、活気あると思うね」
<買い物客・女性>
「大好き。必ず来ます、ここへ」
(Q.商店街へ来るならここへ?)
「絶対ここ」
最近は地元の人だけでなく観光客も訪れるようになり、商店街の来客数は1日およそ4万人まで増えました。
しかし問題となっているのが・・・
そう、アーケードの中を走る迷惑自転車です。
<記者リポート>
「天神橋筋商店街の一部の区間では、道幅が大変狭く、人と接触する恐れがあるため、自転車の通行を規制しています」
天神橋筋商店街のJR天満駅から北側、主に4丁目から6丁目にかけては道幅がおよそ4メートルと狭いため、午前7時から午後10時の間、自転車の走行が41年前から警察によって規制されています。
ここを自転車で通るときは、押して歩かないといけないはずですが・・・
中には、商店街の中を縦横無尽に人混みの中を縫うように、クネクネと走る人・・・
そして、カーブを急に曲がってくる人、これは危険です。
この規制エリアでも、自転車と歩行者との接触は後を絶たず、危ない目に遭ったという声が、商店会には多く寄せられています。
これは、れっきとした道路交通法違反。
買い物客も迷惑顔です。
<買い物客・女性>
「ちょっと怖いときはありますね。ベビーカーなんで子どもの目線からすると、(自転車が)キュッと出てくる時は、怖いかなと思う時がありますね」
(Q.自転車のマナーどう思いますか?)
<買い物客・男性>
「悪いですよ。この前、当てられたんや、ひじを」
車いすで訪れた人は・・・
(Q.ぶつかられたことはありますか?)
<車いすの女性>
「あります。そして怒られた」
<車いすを押している男性>
「車いすを押してても普通に突っ込んできたりとかするもんで、こっちが避けなアカンみたいな感じなんで」
自転車で走っている人は、規制されているのを知っているのでしょうか?
憤懣取材班が聞いてみると・・・

(Q.ここは規制エリアってご存知ですか?)
<自転車に乗っている女性>
「いや、知らん。ずっといっつも乗ってたから」
(Q.規制されているんですが?)
<自転車の乗っている男性>
「習慣みたいになってもうてね。悪いことや言うことは分かってますけどね。すいてる時は乗りますな。ほとんどの人は乗ってるんとちゃいます?」
(Q.規制エリアって知っていました?)
<自転車に乗っている男性>
「えっ、乗っちゃだめなんですか?『禁止』って書いてないから、そこまで知らないです。標識ってふだん見ないじゃないですか」
(Q.分かりづらいですか?)
「と思います」
(Q.それで分からなかった?)
「ええ、そうです」
商店街側は標識を設置したり、アナウンスで呼びかけていますが、なかなか効果が出ていません。
警察も「軽微な違反」として、厳しい取り締まりをしていないのが現状です。
<買い物客・女性>
「もっと注意する人がいないとダメやね。慢性化して、みんな乗ってますよね」
<買い物客・男性>
「完全に止められへんと思うわね」
この現状に商店街側は、さらなる規制の強化に動き出しました。
<天神橋筋商店連合会 土居年樹会長>
「2丁目でも大きな事故があって、また3丁目でも事故が発生して、『危ないやないか』という声が私たちの方にどんどん聞こえてくる」
大阪・天神橋筋商店街の迷惑自転車問題。
一方、今、各地の商店街では、自転車の走行を規制する動きが広がっています。
大阪では心斎橋筋商店街や千日前商店街は、終日全面禁止。
旭区の千林商店街なども、日中は走行が規制されています。
また神戸の三宮のセンター街なども終日、自転車の乗り入れは禁止です。
センター街では、目立つよう大きめの標識や看板などを至る所に設置。
その効果もあってか、東西の大通りを自転車で走り抜ける人は、あまり見受けられません。
そして天神橋筋商店街でも、自転車の規制をさらに強化する動きが始まっています。
JR天満駅より南側のエリア。
道幅がおよそ6メートルと比較的広いため、現在は自転車の走行は規制されていません。
そんな中、今年4月の深夜、重大な事故が起きました。

2丁目で自転車同士が衝突。
50代の男性が、一時意識不明となる大けがを負い、男性は今も右半身に後遺症が残っています。
<事故現場近くのチケット店店員>
「ちょうど三差路やからね、一番危ない。1日1回ぐらいは急ブレーキ掛けられますね」
<現場付近の食料雑貨店店主>
「道路幅が広くてすいてますから、スピードも出やすいのでね」
事態を重く見た商店主たち。
理事会では、JR天満駅より南側についても、自転車の走行を規制すべきだとの声が高まりました。

<店主>
「おおむね、『危ない』『怖い』という意見のほうが多い。(私の店に)小さい子とかがよく来るんですけどね、店から飛び出すこともあるんです。そういう時にゆっくりでも自転車がすっと横切るとハッとしてしまう」
意見を集約した結果、JR天満駅より南側のエリアを、夜間以外は「歩行者専用道路」としてもらうよう、警察に要請することにしたのです。
<天神橋筋商店連合会 土居年樹会長>
「自転車とのトラブルがあったり、事故があったりしますので、商店街の機能である『歩行者優先』を踏まえて、この辺で踏んぎりをつけてもらおうかなと」
一方で、道幅の広い、このエリアまで規制するのは買い物客の利便性を損ねるため、やりすぎではないかとの声も出ています。
<雑貨店店主>
「全面的というのはちょっと(困りますね)。自転車でないと来れない方はいっぱいいますのでね」
<飲食店店主>
「ちょっと不便さがあるかもね」
<買い物客・女性>
「全面規制はどっちかというと反対ですかね。(自転車が)止めやすいスーパーに買い物に行く機会が増えてしまうかも知れないですね」
(Q.規制後は商店街に来る機会もやっぱり?)
「ちょっと少なくなるかも知れないですね」
はたして規制強化は必要なのか。
都市の交通について研究している大阪大学の研究チームが、10月に天神橋筋商店街を調査。
その結果、6割以上の歩行者が、自転車と事故になりかけたことがあると回答しました。
さらに、実際に接触事故を経験したことがあるかを聞いてみると、75歳以上のお年寄りでは、およそ4割の人が自転車と接触したことがあると
答えていることが分かりました。
調査した土井教授は、天神橋筋商店街を訪れる客層を考慮した場合、規制強化は必要だと話します。

<大阪大学工学研究科 土井健司教授>
「商店街は街の顔であり、商店街を支えるのは明らかに高齢者の消費なんですよ。高齢者が事故にあったり、『ヒヤリ・ハット』を感じながら移動するのは商店街にとっての大きな損失なんですよね」
警察と府の公安委員会は商店会の要請を受けて、規制強化について審議。
その結果、天満駅より南側のエリアで、昼間の時間帯に自転車の乗り入れを禁止することが決まりました。
来年1月31日から実施されます。
<大阪府警天満署 中平仁志交通課長・6日>
「(天満署管内での)全人身事故に占める割合が34パーセントと、3割が自転車の絡む事故になっています。ルール順守を徹底させるためにも警察官による現場指導を徹底して交通規制の実行を高めていきたいと考えています」
しかし、規制は強化されるものの、どれだけ実効性があるのかは自転車を乗る人の意識次第。
商店主や買い物客の受け止め方は・・・
<買い物客・女性>
「(乗る人が)規定通りにマナーどおりにやればいいんじゃないかなと思ってます」
<写真店店主>
「マナーを守ってみんなでやれば、全面禁止の必要もないと思うんですけどね」
<菓子店店主>
「お互いがそれぞれのマナーを守れば、別に問題はないと思うんですけど、個々に自分が優先みたいなことがあるんで、全体的に悪く思われてもしかたがないというのがあります」

なかなか改善されない、商店街での自転車マナー。
自転車を乗る人の安全への意識が高まらなければ、今度は取り締まりの強化という締め付けに発展するかもしれません。
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