日本では巡回展を、みな断る。
ロンドンの大英博物館は世界最大の数の古代遺跡を集めた博物館として、つとに有名で過去２回いったことがある。それでも見切れなかったのだが、その大英博物館が何と日本の春画の特別展覧会を１０月３日から１月５日まではじめた。日本では見ることができないものばかりを１７０点も集めたという。日英交流四百年を記念して開催するものだが、、日本での巡回展を日本の美術館は軒並み断っていて開催が危ぶまれている。
ピカソ、ロートレック、ゴッホ等欧州の芸術家に影響を与えた日本の浮世絵の春画だが、わいせつとアートの問題に正面きって立ち向かわない、日本人の狭量さがここにもあらわれている。自国の貴重な芸術を外国が認めて展覧会を開くというのに、日本では何を慮ってか、巡回展覧会をどこも受けないというのだ。
展示される春画の男性の性器はデフォルメして巨大に描かれている。春画を始めてみた外国人は日本の男はみんな巨根だとイメージするかもしれない。
私は同館のオリエントブースをまだ見ていないので、出かけてみよう、と思っている。
http://www.britishmuseum.org/whats_on/exhibitions/shunga/events.aspx
Shunga
sex and pleasure
in Japanese art
3 October 2013 – 5 January 2014
Parental guidance advised
Events
Friday 4 October, 18.30–19.30
A lecture on Shunga and its relationship with the wider world.
Shunga: curator's introduction
Thursday 10 October, 13.30–14.15
Exhibition Curator Timothy Clark gives an introduction to the exhibition.
Shunga: whose pleasure?
Friday 25 October, 18.30–19.30
A panel discussion looking at shunga works as erotica.
Shunga into manga?
Friday 1 November, 18.30–19.45
A discussion on how the Japanese erotic art of shunga connects with modern manga.
Shunga: curator's introduction
Thursday 28 November, 13.30–14.30
Exhibition Curator Timothy Clark gives an introduction to the exhibition.
Japanese erotic art in the modern era
Friday 29 November, 13.30–14.30
A lecture discussing shunga in the period followingJapan’s political reordering of 1868.
春画の価値と魅力を再評価 大英博物館で初の特別展
2013.9.30 18:00 sankei biz
ロンドンの大英博物館で初の春画特別展「春画−日本美術における性とたのしみ」が１０月３日から開催される。「美術的価値、歴史的価値、社会・文化的背景などの総合的視点から世界中の研究者の最新の成果を結集した初めての春画展」（大英博物館アジア部のティモシー・クラーク日本セクション長）だ。
展示される作品は日本、英国、オランダ、デンマーク、米国から貸し出されたシリーズ物を含む第一級の名品１６５点、３００図以上。春画のほかに小袖や歌舞伎の衣装、性を題材にした根付けなども公開される。
会場は中世絵巻からの伝統を受け継いだ初期名品、錦絵以降の名品、検閲の歴史、パロディー性など春画のコンテクスト、近代化の中での春画と欧州や中国への影響−などに分類。年代順、テーマ別に紹介する。
西洋との出会いでは、１９世紀後半にフランスを中心に広がったジャポニスムとの関わりに言及。春画がピカソやロダン、ロートレックらに与えた影響にも触れられる。２００９年からクラーク氏が中心となり、ロンドン大アジア・アフリカ研究学院（ＳＯＡＳ）、立命館大、国際日本文化研究センターを共同研究機関として研究プロジェクトを発足させ、特別展の準備を進めていた。
１６１３年に英国船が日本に到着し、日英交流が始まって４００年にあたり、春画展はその目玉行事ともなっている。
特別展に合わせ、研究成果を集大成した４２０図の春画と解説を収めた図録を刊行する。
１６歳未満の入場は保護者の同伴が必要。来年１月５日まで。
≪堅苦しい儀礼を「笑い」に Ａ・ガーストル・ロンドン大ＳＯＡＳ教授≫
日本の近世芸能・文学の専門家で、大英博物館に春画展開催を呼び掛けたロンドン大アジア・アフリカ研究学院（ＳＯＡＳ）のアンドリュー・ガーストル教授に春画の魅力を語ってもらった。
江戸女性は自由だった
今回の「春画展」は、英財団の研究費を得て２００９年から３年間を費やした国際研究プロジェクトの成果をまとめたものだ。英国、日本だけでなくイタリア、スペインなどから研究者が参加、春画を美術、春画の特徴は「笑い」の概念だ。当時の権威であった幕府や宗教をパロディー化、儀礼や儀式を重んじた堅苦しい“表”の世界をからかい、笑いの世界に取り込んだ。庶民の素晴らしい知恵だ。
描かれているのは遊郭という特殊な世界ではなく、大半は庶民の生活であり、中心は女性だ。春画を研究すると、従来の江戸女性のイメージが一変する。「家」に縛られて親や夫に隷属していたのではなく、比較的自由に生き生きと、積極的な女性像が浮かんでくる。
春画には「性に対する欲望は邪」という儒教や仏教の教えを批判、性のたのしみは人生に欠かせず、夫婦の道にも必要だという主張がある。
これほど「性」の描写を美術化したものは他に類をみない。江戸後期には奢侈（しゃし）禁止令で豪華本が出版できなくなったが、ひそかに流通した春画に最高峰の技術が駆使されている。貴重な資料だ。
歴史、社会・文化などさまざまな面から研究するこれまでにない試みとなった。
学問として扱う機会に
春画は江戸期の芸術、文学を研究する上で不可欠でありながらタブー視され、研究しても学会では発表の機会に恵まれなかった。このまま忘れられてはならない、無視しては近世社会が理解できないと考えたのが展示会開催のきっかけだった。
日本における春画研究の転機となったのが１９９０年代に学研から出版された「浮世絵秘蔵名品集」だろう。全４巻で１巻２０万円の予約限定販売だったが大きな反響を呼んだ。以前なら検閲に引っ掛かったものが出版でき、研究する雰囲気がやっとできた。春画を「学問」として扱うきっかけになったと言ってよい。
大人になれない日本
明治以降、春画は廃れた。西洋の倫理規範の影響もあっただろうが、それ以上に、近代化の過程で生じた価値観の変化がある。英国でもビクトリア朝以前のおおらかさが近代化に伴い失われた。
近代化の過程で「市民」と「国家」の概念ができ、市民は国のために何ができるかを問われ、国が私生活を規制するようになった。当時の支配層は西洋に認められるためにその規範に合わせようとし、薩長土肥の出身である彼らは江戸庶民文化を否定しがちだった。
残念ながら、日本の意識はその時代とあまり変わっていない。春画に関してはまだ大人になっていない。覆い隠すのではなく、自らが築き上げた文化をきちんと評価するべきだ。人間の体、その動きを繊細かつ大胆に描いた春画は極めて独特で、芸術の極致にある。特別展を機に、日本でも春画の真の価値が評価されるようになってほしい。（ＳＡＮＫＥＩ ＥＸＰＲＥＳＳ）
■大英博物館 ロンドンにある世界最大級の博物館。１７５９年に開館した世界で最初の公共博物館とされる。収蔵品は古文書、書籍、美術・工芸品、歴史的遺物、博物学・民族学関連の資料など約８００万点、収蔵品の拡大で１８８１年に自然史部門を自然史博物館として独立させた。また、開館以来併設されていた図書館も１９７３年に別組織となった。（共同）
■ＡＮＤＲＥＷ ＧＥＲＳＴＬＥ １９５１年、米国生まれ。早稲田大学大学院で修士号、ハーバード大大学院で博士号取得。主な著書に近松門左衛門作品の英訳、「江戸をんなの春画本」など多数。
CREWA
ロンドンの大英博物館では、日本で生まれたユニークな裸体表現、性表現についての展覧会が開催される。「春画／日本美術における性と楽しみ」展は、北斎や歌麿など浮世絵の春画の名作を集めた大規模な展覧会。春画の誕生から終焉までの歴史、当時の出版と流通形態、パロディとしての性格、西洋絵画への影響など、同博物館の長年に渡る研究成果を踏まえ、春画の奥深い全体像を紹介している。日本への巡回は現時点では未定なので、見逃したくない人はぜひともロンドンへ。
s写真 女性とタコ2匹の性交渉を描いた葛飾北斎( Hokusai Katsushika )の作品「蛸と海女( The Dream of the Fisherman's Wife )」を挙げた。「展示される作品に露骨な性描写が含まれることを承知しておいてほしい」と述べている。 博物館が行った展示会の内覧で。
大英博物館で春画展 巡回、日本では拒否
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東京新聞2013年10月２日
【ロンドン＝石川保典】ロンドンの大英博物館で三日から、男女の性愛を描いた日本の春画の大規模な展示会が始まる。巡回展が日本でも企画されているが、博物館、美術館からは軒並み断られ、開催が危ぶまれている。
展示会は日英交流四百年を記念。葛飾北斎や喜多川歌麿をはじめとした浮世絵師の約百七十点を展示、春画の歴史からピカソやロートレックなど欧州の芸術家に与えた影響までひもとく。作品は大英コレクションのほか、日米、欧州から集めた。
展示会は、ロンドン大や立命館大、大英などが四年前からプロジェクトチームを組んで研究してきた成果。大英のティモシー・クラーク日本部門代表は「西欧では性的に露骨なアートは禁じられてきた。この春画展は、わいせつとアートの関係を観客に考えさせるだろう」と話す。
出品作品の選定にあたった立命館大特別研究員の石上阿希さんは「浮世絵や歌舞伎などの文芸と同じ土壌で江戸時代に花開いたのに春画だけがタブー視されて研究もされてこなかった」と話している。
巡回展が決まっていない現状に、プロジェクトチームのガーストル・ロンドン大教授は「春画は大切な文化。出版は禁止されていないから展示会は可能だと思っていた」と残念がる。大英の展示会は来年一月五日まで。十六歳以下は親同伴。