国民に語りかけて理解を得る狙いがあったのなら、空振りだったと言うしかな…[続きを読む]
タイの首都バンコクで混乱が広がっている。反政府のデモ隊が官庁の占拠を続…
タイの首都バンコクで混乱が広がっている。反政府のデモ隊が官庁の占拠を続けている。
事態の打開をめざすインラック首相は下院を解散し、2月の総選挙が決まった。最大野党・民主党の議員が全員辞職し、首相を追い込んだ結果だ。
それでも反政府派は、占拠やデモを続ける構えを崩していない。各界代表による新たな統治組織に全権を移すよう求め、選挙を拒もうとしている。
このままでは国家機能がマヒする騒乱を収拾する道は開けまい。反政府派は代議制民主主義の原則に沿って、選挙のプロセスを通じて自らの主張の実現をめざすべきではないか。
混乱の背景にあるのは、2006年の軍事クーデターで追放されたタクシン元首相の影だ。本人は国外逃亡中だが、インラック首相はその妹である。
地方の農民らへの手厚い政策で人気を博したタクシン流の政治に、都市中間層を中心とする反政府派が反発してきた。
インラック政権にも、強引な側面があったことは否めない。とくに、元首相の帰国に道を開く法案を通そうとしたことが批判の火だねをまいた。
だが、その後の政府与党は反政府派に譲歩を重ねた。問題の法案を取り下げたほか、デモ隊の入庁阻止もあきらめた。
反政府派が今回の下院解散を認めず、選挙を受け入れないのは、勝てる自信がないからだ。
これまで農民らを説得する地道な政治活動を手がけたわけでもなく、今世紀の総選挙ではことごとく敗れてきた。
地方の農民や都市貧困層が支えるタクシン派に対し、中間層と軍・司法・官僚などの王党派からなる反政府派。この構図が続く限り、数では勝てない。
だからといって、選挙を経ない組織に政権を明け渡せと主張して官庁の占拠を続けるようでは、現代民主国家としての体をなさなくなる。
残念なことに、タイでは騒乱が何度も繰り返されてきた。つい3年前は、民主党政権がタクシン派のデモを武力で排除し、多数の死傷者を出した。
それでも経済が大きく失速しないのは、首都から離れた地域で日系企業など外資の製造業が成長を支えているからだ。
タイ経済の持続的な成長と、政治の安定のために必要なのは、地域や階層の隔てのない国民融和を長期目標にすえた辛抱強い努力だろう。
前回クーデターは、選挙のボイコットに端を発した混乱の果てに起きた。民主政治の自殺行為を繰り返してはならない。
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