愛工房に関する考察


                      木材適正使用相談センター 「適材適所の会」 会長   加藤政実著

はじめに

愛工房経由の杉に触れ続けて、実際に機械を通してみていくつかその特徴がわかってきましたのでまとめてみました。 今まで多くの方が愛工房に訪れたのでしょうが、実際に毎日のように木に触れ、機械をまわす人で、木をある程度知っている方は少なかったようで、私も何度も何度も体験する事でようやくある推論を持つにいたりました。

 私は学者ではありませんし、「なぜ?なのか」という点にさほど関心もありませんので、この「考察」の証明にもあまり関心はありません。私は「できたんだからいいじゃない」という考えです。その理由の証明よりもその良さを広める・生かす事に腐心したいんです。そして「杉」という木をなかなか生かしきれなかった現代建築において、また「国産材の活用と環境の両立」という待ったなしの現況において、「よくぞ!間に合ってくれた!」という感謝の気持ちから書き記しています。そして、おそらくこの「考察」がそう的外れのモノではないとの自信も持っています。

杉の活用

我が国の国土の森林面積は、国土全体の66%を占める2510万ha。そのうち人工林が1120万haですから、森林のうちの半分が人工林という事になります。

人工林の内訳樹種としてはそのまた約半分の44%が杉ですから、乱暴に言いますと「国土の森林のうち4本に1本は杉。」という事になります。この行き過ぎた杉の造林に関しましてはここでは書きませんが、水源地などの私達人間の住むエリアから見て奥の山を、そこの杉を活用して、その後環境に貢献してくれる広葉樹を植えるにしても、スタートは「杉を切らせていただいて、有効に無駄なく使わせてもらう」という「杉の活用」です。木は植える。育てる。という事が大切なのはもちろんですが、2008年の我が国の「国産材の活用と環境の両立」のスタートは「杉の活用」。すなわち杉を切らせてもらう事です。
 ですからこの「考察」は杉に特化したモノとなっています。と言いますか、ご存知の方も多いと思いますが、杉は非常に乾燥しづらい木です。桧はほっといても乾きます。そこで各種乾燥実験も杉しかおこなっていません。重ねて申し上げますが「国産材の活用」が桧(ひのき)や欅(けやき)や栃(とち)が突破口を切るなんてあり得ません。「杉の活用」と言い換えて等しいんです。「これほど栽培可能資源として豊富にある杉なのに、有効に活用できなかったのは、技術的には乾燥の難しさです。乾かないからです。」私はそれが技術的に可能になったばかりか、杉の素晴らしいポテンシャルに気づかせてくれた「愛工房」との出会いに感謝して、この「考察」を記しています。ですから杉に特化した内容である事をご了承ください。もちろん「愛工房」は広葉樹を含めまして様々な樹種の実験乾燥をおこなって期間・品質ともに抜群の良積を残していますが、ここでは触れません。

お願い

この「考察」を私の了承無く、他者への閲覧などができるのは「愛工房」の発明者であるアイ・ケイ・ケイ(株)の伊籐好則氏。そして「天然住宅」の中核メンバー。「適材適所の会」の構成メンバーに限らせて頂きます。その理由と致しましては、この方々はビジネス面でのアプローチのみでなく、「杉の活用」に関しまして、日々心を砕いて頂いている方々だからです。

 私はこの文章を伊籐氏からの一切の謝礼も無く、というより自発的に一切誰の利益の為でも無く、あえて申し上げれば「杉の名誉回復」の為にプロとして書いています。杉の素晴らしさを今までプロとして上手くプレゼンできなかった無能を恥じ、大変杉に申し訳ない気持ちでいっぱいで、だからプロとして書いています。ですからこの「考察」の一部分でも一人歩きして、杉をビジネス面でのみ捉える方に引用されるのは我慢なりません。誠に勝手な言い分かもしれませんが、これをお読みの方は私が信頼する方々が信頼に足ると判断された方、すなわち「杉の応援団」入りを果された方だと思いますので、私の気持ちをくみとって頂ければと存じます。無断にてこの「考察」を転載、引用する事も同じく禁じさせて頂きます。ただし、「杉の応援団」として活用される方々には大いに結構という事です。
 まず杉の基本のお話・・・
1.杉の部位
 年輪がありますよね。バウムクーヘンを思い出してください。年輪の中心を「樹芯」と言います。その外側、その回り、そう、ゆで卵の黄身のような位置にある部位が「赤身(あかみ)」といいます。その外側、ゆで卵の白身の部分の辺材を「白太(しらた)」と呼びます。

2、部位の特徴
@白太
 「白太」は木が大地にあり生態系の源たる存在として成長している際の、新陳代謝活発な部分です。光合成によるデンプン層です。樹種を問わず、赤身より柔らかいです。腐食には弱い部分で、ケヤキなどは雨ざらしでほっといて、白太が腐ってからノコを入れたりします。節が少ない事から住宅内部の「造作材」と呼ばれる、私達が触れる事が可能な場所によく使われます。腐食に関係の無い場所ですからね。 活発に活動していた部位ですから、丸太の含水率はもの凄く高いのですが、自然乾燥でも乾きます。重さ的には半分以上が水分ですね杉は。立てておくと水がどんどん流れ出してきます。
A赤身
 「赤身」は活発だった白太の細胞が安定化して死んで変質した部位です。杉の白太と赤身の割合は、白太は丸太の太さに関わらずだいたい同じくらいですので細い木だと白太が多く、太い木だと白太部が薄く見えますね。赤身は樹種を問わず白太より堅くて腐りにくいです。杉も九州では今でも土台として使用しますし、それくらい腐食に強い部分です。
 この赤身の色が木によって大きく異なるのが杉の特徴です。山の下部の木や谷に生えている杉は総じて黒く、この赤身を「黒心(くろしん)」と呼びます。愛工房の伊籐さんはこの黒心の生まれ変わりと自称されています(笑)。何故?黒いのかははっきりとわかっていませんが、山の養分が流れてそれをしっかり吸収したから・・・などと言われています。「なるほどな」と思われる場所の木は総じて黒いです。山のてっぺんの杉が黒い事は無いと思います。ここの「養分説」を覚えといてください。
 この黒心はあまりありがたがれません。白太の白と黒が嫌われるのか、安く取引されています。赤身はとても乾燥しづらくて、これが杉を使いこなせなかった技術的な大きな理由ですが、黒心は赤いモノよりよけいに乾きにくいんです。丸太で言いますと「外側にほっといても乾く白太と、内側に乾かない赤身。そしてその赤い色が黒いヤツ、すなわち黒心はとんでもなく乾かない。」というのが乾燥に関しての杉の性質ですね。
3、今までの乾燥
 自然乾燥に関しては、はぶきます。自然乾燥といっても昔は年単位でしょうから、現在のあい見積もりを何社もとって、決まったら「いつ完成?」の時代の自然乾燥では時間軸が違い過ぎて同列に扱えませんので。
 これからお話する「愛工房」経由の杉材の素晴らしさと同程度の品質の杉材は天然乾燥でもおそらく可能です。ただし紫外線の強さは年々強烈になっています。外部にての自然乾燥は紫外線から自分を守る為に己の油脂分を材の外側に押し出している事が推察されますので、屋根の下で年単位で乾燥すれば可能だと思います。
 これは現在のビジネスではあり得ない時間軸です。昔はお施主さんが樹種を選ぶという事もなく、工務店さんが「うちは造作材は杉だから・・・」というような感じで、在庫する材も決まっていて、しかもストックヤードとして製材所、木材製品市場や木材問屋、材木店、工務店とじっくりと時間をかけて自然乾燥されていたでしょうから、かつては「愛工房」経由の杉に匹敵する杉材もあったでしょう。でも今のビジネスでは非常に困難です。
 「高温乾燥」と呼ばれるものは一般に120℃とかの高温で丸太のままではなく、ノコをいれて製材したものを乾燥釜に入れます(愛工房も丸太のまま入れませんよ)。杉で1週間くらいでしょうか。高温により白太は乾きますが、パサパサの死んだ木になります。「超仕上げ」と呼ばれる誰もがイメージするあのカンナの機械版があるんですが、新しい砥いだばっかりの刃にしても杉の白太は10丁位で削れなくなります。細胞がヤラレた白太はいわばふにゃふにゃの木ですから、「柔らかい木ほどカンナがかりが悪い」を通り越して鋭利な刃もすぐに役に立たなくなります。
 ですから現在主流の「モルダー仕上げ」とよばれる、いわばヤスリの機械みたいな仕上げでニゲてます。逆に言うと本来はプレーナーと呼ばれる自動カンナ(カンナくずがチップ状)をかけて、超仕上げ(カンナくずが鰹節みたいな薄紙状)をしたいのに、仕上がらないからモルダー仕上げという手法をとってるんですね。
 高温乾燥した材を出庫後すぐに加工するとリバウンドというか曲がります。乾燥後に変形した材をまっすぐにしながら加工するんですが、まっすぐにしてもすぐに曲がってきます。これは経験があるんですが、せっかくまっすぐにしたのに、ものの数10分でせっかくまっすぐの長方形にした材が、またかまぼこ状になっちゃいましたから恐るべしです。一般的に2週間はほっとかないといけないとされています。なんと愛工房にはこのリバウンドがありません。釜から出して2日後に加工してフローリングを作っても全然大丈夫でした。
 私が経験した事例では60ミリ×45ミリ程度の杉の高温乾燥材のモルダー仕上げの材を超仕上げしたのですが、(実際にこのような作業工程はまれです。外部に使用する材でそのまま塗装するはずが、急きょ超仕上げをしてから塗装する事になったものです)、表面は乾いているように見えても、超仕上げを通して0.1ミリ以下削っただけで、赤身は濡れてました。ようするに高温乾燥では白太は乾くけどパサパサでカンナがかからないくらいに死んでしまい、赤身は乾かないんですね。(このケースの場合、もっと時間をかければ赤身ももっと乾いたんでしょうが・・・)まぁこの事例は下請け仕事で材料支給品を加工や塗装や施工だけをしたもので、発注元も「外部だから・・・」という事で乾燥期間も短かったのですが、白太は乾くを通り越して、死んでいるのに赤身は濡れているというのを事例として覚えています。
 乾かない。だからもっと温度を上げる。それでも乾かない。だからもっと温度を上げる。だけどそれでも乾かない・・・という乾燥が続いてきたんですね。それでしまいにゃ温度は100度を超えちゃいましたというのが現状です。
 木材の品質の向上という目的の為の手段が乾燥なはずです。目的は品質の向上。木は成長を前提とした水分を切らせて頂いた時点で有しています。その水分量は用材として使わせて頂くには多い。はっきり言って邪魔。もう成長はしないんですから、第二の人生(木生)として、私達の住まいの用材として長持ちして頂く為の水分のみでいいんですね。人間の誠に勝手な言い分かもしれないけど、成長を前提とした水分量は多過ぎなんです。
 目的は高品質。木材として最も適している状態を目指しての事です。そして手段としての「乾燥」。その手段の達成率として含水率なる、どれくらい木材に水分が含まれているか?という数値が目安となります。例え話をするのなら美しさを目的としてダイエットという手段をとって綺麗になればイイんですが、限度を超えたダイエットという手段をとって、拒食症とかになってしまい、結果、美しさどころか健康まで損なわれるという心の痛む事例があります。杉の高温乾燥はそれに近いと思います。120℃などという木が経験した事の無い温度(というより地球上に存在しない温度)の中に閉じ込められる事によって「長年かけて蓄えた木の力、風味、パワー。すなわち具体的には木の油脂分」が損なわれているんですね。何時の間にかその目的の達成を忘れ、手段の達成率を達成する為に木を台無しにしているのが高温乾燥だと思います。
4.愛工房経由の杉の特徴

 いまさら短期間で乾燥するという事には触れません(高温乾燥よりも抜群に早いです)。私もそこにばかり目を奪われて、気づくのが遅くなりました。それに伊藤さんの会社で製作されている杉のグッズはいずれも超仕上げがされていませんので、これでまた気づくのが遅くなりました。自分で加工してようやくある推論に達しました。
 (1)反り、むくりとよばれる材の狂い、動きが極めて少ない。

 (2)超仕上げをかけると艶がある。というより見たことがない色気、艶気を持っている。

 (3)節回りなど、加工時に割れたりしやすい部位が割れづらい。

 (4)「はぶし」が立体的に見える。

 (5)芳香が極めて強い。

 (6)節がある材の方が早く乾燥する。 

 (7)「すじ」と呼ばれる木材同士がくっつかないようにスペースをとるための「スペーサー木材」を製品と製品の間に入れて乾燥釜に入れるのですが、この「すじ」を置いた跡がほとんど残りません。一般には4ミリ程度削らないと落ちない跡が残ります。
 これが製品の特徴です。ネガティブなモノは一切ありません。続いて乾燥時の特徴です。
 (a)乾燥釜から出てから、含水率測定装置(以降「装置」って言いますね)によるとグングン数値が下がる。

 (b)乾燥釜内に人間が入ると健康促進につながっている。

 (c)乾燥中の割れがほとんど無い。

 (d)黒芯があずき色に変色する。

 (e)乾燥釜から出てからのリバウンドが無い 

 不思議系ばっかりです(笑)。その不思議さに目を奪われて、業界の常識から抜け出せずに、頭も曇ってました。推論まで5ヶ月もかかってしまいました。(この「愛工房の考察」のリライト版は出会ってから8ヶ月後に書いています)
まず、重要な推論!!

@「愛工房は内部、中心部から乾燥がはじまっている!」

 いきなりあり得ない話ですが、おそらく間違いありません。おそらく日本トップレベルの黒心の135ミリ×135ミリの角材を入れて実験しました。角材ほとんどが真っ黒の伊藤さんいわく「初めてみる黒心!」私は25年ぶりくらいにお目にかかった黒心でした。黒心と一口に言っても様々です。ほんとその黒さといったら、「これって杉?!黒柿とか黒檀とか、よもやマジックで塗ったんじゃないの?」というよく見つけてきたなぁ・・・的真っ黒黒すけでした。だから僕は見る事ができたんです。内部から乾燥の証拠を・・・。
 伊籐さんは以前から内部から乾くっておっしゃってたんですが、私は信じていませんでした。だって普通あり得ないじゃないですか、洗濯物が内部から乾きますか?ねぇ。だけど見ちゃったんです。その前に赤身(黒心)の色と水分の関係についてお話しましょう。
 赤身の色は水分と関係があると言われています。事例としては・・
黒心の色を変える為に木を川につけて赤くさせるという手法がかつてとられていた。
 事実、愛工房の黒心は(d)のように多少可愛い黒芯(黒いけど赤茶というか黒茶という色の黒芯)ならあずき色に変色しています。もちろん変化作用は水分移動だけですもんね。谷に生えてる杉に黒芯が多いのも湿気が多い場所とも関係しているかもしれません。
 さすがにチャンピオンの黒すけでしたら愛工房と言えども容易に乾燥しませんでした。同時に入れた同寸法の黒茶級の角はあずき色になったのに、真っ黒のままでした。ですが「こぐち」と呼ばれる木の上と下の部分、年輪(バームクーヘン)が見える場所は導管が露出していますから乾燥が速い場所なんですが、そこの樹芯部=角材の真ん中があずき色に変色しだしたんです!その外側は黒すけのまんまでそのまた外がまだらにあずき色がちらほらでした。
 これを見て私は内部から乾燥しているという確信を持ちました。あずき色に変色=水分が抜けた状態だとしますと、内部から乾燥が始まっている事に他ならないですよね。そこで振り返って考えてみると、杉って一口に赤身といってもどれもその外側の方が色が濃い気がするって事。あれは樹芯部はほぼ細胞としての成長が止まってますから、水分が少ないからでしょう。赤身の中でも外側のトコはちょっと前まで白太として水分をガンガン吸い上げてましたから、引退したとはいえ、まだまだ若いモンにゃ負けねえぜ!的水分を保持しているはず。という事は外側からいくら乾燥を進めようとしても、その引退直後の連中のとこで乾燥の限界がある。白太は含水率高くてもデンプン層だから素直に吸い出せます。だけどここは一番強力な守りの砦になっている。だから愛工房はおそらくその強烈な頑固地帯を内部から押していると思うんです。
 外は乾く。樹芯近辺も、もともとあまり水分が無い。理由はわからないけどなんらかの方法でその樹芯部の水分を外側に動かして、頑固地帯の水分を、高温でも引っ張りきれなかった水分を押し出していると推論するわけです。
 内部から乾くというより、外側と樹芯部同時に乾燥が始まっていると仮定すれば外の白太はダムの水が無くなっていき、樹芯部の水も頑固者ゾーンへいきます。頑固者ゾーンはその外側の白太のダムの水が少なくなってますから樹芯部の水に押し出されて容易にそこに移り住む。だって白太は水分を吸収しやすい部位だし、極めて相性のいい他の水じゃなく同じ木の水分なんだもん。樹芯から押す事が可能なら、極めてシンプルな一方通行じゃないですか。愛工房の乾燥の早さもここにあると思うんです。
 理論上は渋滞している車が100台止まっていて、先頭車の前にスペースがあって、先頭車両が文字通り渋滞の先頭だった場合。全車同じタイミングで同じ速さのスピードアップのアクセルを踏めば衝突は起こりませんよね。愛工房はそれを可能にしていると推察されます。だから乾燥も早いんですね。
 これは(1)につながってるんですよ。変形は木の中の水分が変わるからおこるのは当たり前ですが、従来は白太だけ乾いてその内側の頑固ゾーンがそのままだったから、かたや空っぽ、かたや満タンでそれが地続きだから地盤沈下したりみたいな変形が当たり前だった。だけどよーいドンで一方通行だから変形は極めて少ない。と言うか元々大地にあって含水率の違いが著しい部位を持っていても、変形なんかしなくて雄雄しく生きていたんだから、すーっと一方通行ならそう動かなくてもおかしくない。というよりこの一方通行説じゃないと説明できないんですね。あと(c)と(e)もこれで説明がつきます。極めて無理なく水分移動がその中心部から速やかに行われていますから、ストレスフリーで割れたりしづらいんでしょうね。また無理やり焦がすように乾燥させていませんからリバウンドもありません。特に(e)のリバウンドは製造コストに大きく響きます。
 高温乾燥で7日間乾燥させてそれを加工できるのはリバウンド明けのもう14日後。という事は乾燥釜に入れてから21日後にならないと加工できません。それに対して愛工房は4日で乾燥してしかもすぐに加工できますから、多めに見て7日後に加工したとしても実に三分の一の時間ですむ訳です。もちろんその分、ストックヤードのスペースもいりませんので、我が国の林業・製材業にて最も効率的だと思われる小規模な工場に適しています。まさかこれをお読みの方で大規模製材工場が効率的だ。と思われる方がいらっしゃるとは思えませんが、我が国の地形や規模を考えますと、農業も林業も小規模集約型が最も効率的なはずです。
 「部位の特徴」でお話しましたように丸太の外側の白太は含水率が高いけど抜けやすくて内側の赤身や黒心は水分量は白太より少なくても抜けづらいのが杉の特徴ですから、この「材の中から乾く」というのはまさに理想なんですね。「へぇー中から乾いてるんだぁ。」と思った方は「えぇー×2!!マジかよ!中から乾いてんのかよ?!!。」って思ってくださいね(笑)。革命的革新的であり、理想の乾燥経路です。
 A愛工房は単なる乾燥装置では無い。木の持つ油脂分の拡散均一化装置でもある。
@がわかってからは比較的これは早かったです。実は愛工房の凄さは乾燥よりもここにあるんです!早く乾く事はたいした事じゃない!それだけだったらわざわざ私はこんな「考察」は書かない。木の油脂分を水と一緒に外側に押し出しています。そしてその油脂分は外側にまんべんなく広がって落ち着いています。これが愛工房最大のセールスポイントです!例えるなら年単位の時間を短時間にしたタイムマシンのようなプラントなんです。
 これはフュエルポンプ。これはラジエーター。というように僕らはどうしても「水と油」を分けて考えちゃいます。でも植物の中にそれら別々のパイプラインがある訳じゃない。人間の機械の発想。マシーンとしてのロジックが邪魔して、すぐには気づけませんでした。
愛工房は木が長年蓄えてきた油脂分をほぼそのままに、水分だけを取り除く事を可能にしています。木を生かす。杉を生かす。あり得ない夢のような品質の木材の生産を実現しています。まさに産地ブランドではなく「愛工房ブランド」なんです。「どこどこ産の杉がいい」じゃなく愛工房経由こそおのおのの杉の能力を全て発揮できる方法なんですね。全国各地に愛工房がある日を夢見ます。
 じゃあ木の油脂分とはなんでしょう。高温乾燥釜の床はヘドロのような木の油脂分が凄い量です。木酢液もそう。無農薬農業に使用しますよね。これは木の持つパワーですよね。大切な油脂分。凄いパワー。木の恵み。だけどそれを出しちゃったって事は残された木にはパワーが・・・。ですよね。
 そうなんです。高温だと油脂分が出てしまいます。それはすなわち「木のパワー、恵み」をかなりの量出してしまった木が残るという事です。おそらく実験すればデータとして立証されます。白太や「源平(げんぺい)源氏と平家の旗の色になぞらえてその赤と白が混在する材の事」という腐食の早い部分で愛工房経由と高温乾燥、そして現在の自然乾燥を野ざらし実験すればまず間違いなく愛工房がその対抗性に勝るでしょうね。赤身は土台にも使われるってお話しましたよね。防蟻性があるんですよ。その防蟻性のパワーこそ油脂分が源でしょうからね。
 油脂分といえば高温サウナに使用する材は油脂分の高い木はダメなんです。外材のカナダ、アラスカ産のスプルースですとか北欧のホワイトウッドなんかも使ってるんじゃないかな。元来パサパサの木を使うんですね。見たことあるんですけど、油脂分強いダグラスファー(ベイマツ)をサウナに使用したら、自身の油脂分が高温で流れ出して自らを崩壊させちゃう感じでした。高温の過乾燥状況は油脂分の強い木は最悪な状況なんですね。だから桧の高温乾燥材の柱とかは、もう外から見た感じ灰色になってますもんね。杉より油脂分強い分ひどい事になってます。
愛工房さんの実験データでおもしろいのがあります。通常含水率18%とかで出庫すると板材とかならそれから5日後とかに12%とかに下がるんですね。通常というと語弊がありますね。世間の常識ではあり得ないんですが、愛工房のスタンダードってパターンです。(a)にあたります。
 ところが木は私達と同じく個性があって実におもしろいんです。たまーに愛工房とはいえ数値が下がらない木がいます。私みたいな木がいるんですね。ここにデータがありますが、
出庫時含水率36.9%。
これは数値的にとても乾燥材とはいえない数値です。同じ日に入れた同じ寸法の同じ様な部位の黒芯材は低いのは11.4%まで下がってるんですよ。最低20%を切らないと乾燥材とはいえません。
出庫5日後含水率28.6%

出庫10日後含水率16.6%

僕は自分の様なこの変わり者の杉のお陰でわかりました。

ちなみにその重量は、入庫時が6.48キロで出庫時2.54キロです。

杉は重さの半分は水分と言いますから(白太は半分以上で赤身は半分までないかもしれまえんが、ザックリそんな感じです)、重量で見ると立派な乾燥材です。だけど含水率数値は36.4%も出庫時にあります。
重量を追っかけてみましょう

出庫5日後2.40キロ

出庫10日後2.28キロ

 確かに減ってますが、10日間で含水率が20ポイントも下がったのにつりあう数値じゃない。この木は含水率100%で入庫して46.8%まで下がった入庫中4日目には重量を6,48キロから2.88キロまで実に3.6キロも減量しています。
 答えはひとつ装置が正確な含水率を表していないという事です。壊れたのか?ですっていや違います。装置が別のモノをひろってるんです。それは油脂分です。油脂分は全体に広がり外に出ずにやがておそらく落ち着きます。油脂分と水分のカテゴリー分けのお話をしましたが、ある意味装置はそれらを分けずに、「木の内部のエキス」としてそれこそ正確に、水分が放出された乾燥材の状況でも油脂分が動いているうちは「含水率」として表記するんですね。
 木の内部の以前集中して油脂が存在した赤身、とりわけ頑固者ゾーンの濃厚な油脂の場所から外側に広がるという状況になってやがて落ちついてそこに留まるんですね。わかりやすいのは板の表裏の木裏(丸太の樹芯に近いほう)の冬目の感じ。明らかに何か油を塗ったようなもの凄い艶気になっています。冬目や節は吸収しませんから、まさに塗った。そうです。移動して塗ったんですね。だからあんな油分が凄い木になってるんです。これは超仕上げをしてすぐに発見しました。超仕上げをするとわかりやすいんです油脂分は。「杉ってこんなに油脂分豊富な木だったんだ!」と感動しました。
すごい事例があります。愛工房経由の杉の超仕上げをかけた後、同じ機械でパサパサの高温乾燥材を超仕上げしたらパサパサの高温乾燥杉まで愛工房経由の杉材みたいにテカテカの杉になっちゃいました(驚)!
愛工房経由の杉材の油脂分が機械の台座や刃について、それが高温乾燥材についたんですね。なにしろ同じ杉の油脂分だから極めて相性良く移ったわけです。信じられない話です。僕は夜中ひとりでこれを工場で体験して「やっぱ 杉ってすごかったんだ!」って声をあげちゃいました。仲間に興奮して電話したんだけど遅かったから誰も出てくれなかったけど(笑)
「なんだ油分が凄いってだけかよ。」って思わないでくださいね。その油分は自然塗料を凌駕しています。クリア塗装は、ようは手垢止めですよね。愛工房経由は手垢がつかないんです。僕らの指先より豊富な油脂分ですから、油が僕らの指先につく。だから手垢はつかない。自然塗料がいかに浸透式とはいえ1ミリも浸透したかどうかじゃないですか。愛工房経由の杉材は厚み25ミリなら25ミリ全部に浸透ともいえる状況でしかも杉としては最も相性が良くしかも結合が強いと思われる自らの油脂分のオイルフィニッシュなんですよ!板を1ミリ削っては超仕上げ。という工程を繰り返して実験しましたが、いくら削っても全て油脂分豊富なテカテカな仕上がりになりました。これぞ理想の自然塗料です。
 手垢止めの自然塗料使用という事自体、木の油脂分を補填する行為ですから、床などに使用しても差し当っては無塗装で使用して、その濃厚な甘い芳香をお楽しみになって、メンテナンスとして自然塗料を塗布するのがいいと思います。自然塗料とは主原料は植物の油脂分ですから、塗布するとどうしてもその植物の油脂分の匂いがしますからね。この「濃厚な甘い杉の香り=杉の油脂分」の話はまた後で触れますね。
この油脂分豊富な「粘り」がある杉材の特性はフローリングの施工において接着剤不要の強さを有しています。試しに身の回りの大工さんに「15ミリ厚の杉のフローリングで接着剤無しで施工できるかい?」と聞いてみてください。この油脂分豊富であるという事がどれだけ凄い事かご理解頂けると思います。重ねて申し上げますが、愛工房を単なる乾燥装置としてとらえると大切なモノを見失ってしまいます。油脂分そのままに水だけ抜いた杉はそれだけ類を見ない高品質な木材です。
 不明点としては柱材などの場合、油脂分がその外側の頑固者ゾーンより少ない樹芯部の油脂分が頑固者ゾーンに移動していると思われますので、樹芯部の油脂分が少なくなっていると思われる点。頑固者ゾーンは樹芯部より補完されて、しかも蜜というかグミというかもともとそれくらい油脂分が多くあったので一箇所に固まって油脂分があったのが広がる事は耐久性としてイイ方向の気がします。
 野球でいうと3番と4番だけが三冠王を争う打力であとは打率2割以下の打線より1番から8番までみんな3割バッターの方が得点は多くあげそうだから。だけど最後の一番内側の9番バッターの樹芯部の油脂分が少なくなるのが百年単位の住宅にとってイイのかはわかりません。当たり前に耐久性が落ちる気もするし、木の寿命は樹芯部の崩壊から始まるので、サウナの例の様に芯には油脂分が無い方が良かったりするかもしれません。また日光の杉並木が全部おそらく樹芯部は空洞なのに雄雄しくそびえ立っているのを見ると、樹芯部のみで強度を語る事自体あまりふさわしく無い気もします。
 (3)もこれで説明がつきます。節は硬く、木の肉は比較して柔らかいからその強度のの差異により加工時に節が飛んで穴が空くんですが、油脂分がまんべんなく広がってるから肉の強度が上がって、節との強度差が少なくなっています。そして節とその周辺の木の肉が均一化して広がった油脂分がカスガイの役目を果してる気がします。均一化という踏み込んだ推論の根拠はこの節回りの安定から推察しています。
 また芳香の強さもこれも油脂分。芳香というと霧吹きかけると匂いがしてくる。という呼吸によるものの考えがとれずに時間かかりましたが、油脂分が見えるトコ全部にありますのでそりゃあ香りは凄いですよね。ちなみに自然塗料の良さのひとつに木の持つ調湿作用を妨げないというのがありますが、それと同時に急激な環境の変化による木の動きを緩和するという作用が実は施工側としてはありがたい点で(特に工場塗装品の取り付けがイイんですね)、愛工房経由の杉は無塗装でも他の無塗装材と違い、気孔内に油脂分たっぷりですので呼吸はゆるやかで急激に動かないから割れずらく動きづらいんでしょうね。自然塗料のそれらの効果と比較しても何割増しどころか何倍という世界でしょうね。
(6)に関してはその内部から乾燥が始まってますから節が煙突がわりになって早く乾燥と油脂分均一化を行わせてるんでしょうね。角材で例えるなら「背割れ」を入れた方が早く乾燥しますよね。節がその背割れ代わりになってるんでしょうね。そして乾燥が済んで油脂分もそこに定着して、すなわち節回りに落ち着きますから、節まわりが荒れない。飛ばない。というイイ事づくめにつながってます。元来「節がある。多い材」は「節が無い材」より乾燥に時間がかかるというのが常識ですが、これはあくまでも外側からの乾燥においての常識ですから、「愛工房」の非常識ぶりもやはり「中から乾く」という点が最も凄い革命ですね。
5.愛工房経由の杉材の芳香
 「愛工房」は単なる早く乾く乾燥釜じゃないんですね。そんな事よりも大きな利点は「杉を生かす。杉の能力全開!油脂分そのまま。どころか均一安定化させてる点です。」ですから設計指定としても「愛工房乾燥」というより「愛工房経由」がふさわしいのでは。
 でもってその「愛工房経由の杉」の証明たるのがその「濃厚な甘い香り」なんですね。この「芳香」に関しましては重要な可能性を秘めてますので、「愛工房経由の杉の特徴 (5)」で表記しましたが、ここは特別枠にて触れます。
ひとつの事例を聞いてください。
 「愛工房経由の杉材」が豊富に・・・までいかないなぁ。2トン車満載分までもなく、そうだなぁ2トン車5〜6分の1位の量置いてある倉庫があって(だから材木屋ほど無い量ですね。工務店級かな)そこで「愛工房経由の杉」を削ったり、裂いたり加工している場所があったんですね。その倉庫には換気扇があって、外部はアスファルトの道路という環境です。その倉庫とアスファルトの間に花壇みたいなのがあって植物が生えててその中に朝顔のようなツル系の植物が生えてるんですね。
 話は戻ってその換気扇からは濃厚なあの「甘い香り」が年中放出されてます。外を歩く人が確実に気づくレベルで。元来、換気扇って人間が「邪魔なモノを屋外に出したろう!」的なモノなんだけど、ここは例外で「甘い香り」しか出ていません。で、ツル系の複数の植物達なんですが、本来太陽に向かって伸びるはずなのに、換気扇の右下のツルも左下のツルもどう見てもその換気扇に向かって逆扇状に伸びて行って、もう換気扇にトグロを巻くような状態になって、外部から換気扇が見えなくなってしまって「緑のトンネル」みたいになってしまいました。そして冬には葉を枯らし落とす種類の植物なのに、その換気扇の周りのトグロを巻いた葉っぱだけは青々と枯れずに冬を越しちゃったんです(驚)!!
信じられないでしょうが事実です。複数の目撃者有りなんです。
 「木は住まいにあって私達人間の健康に寄与してくれる」って考えられています。数値的には調湿作用なんかが多く語られます。けれども杉の「濃厚な甘い香り」が枯れるはずの植物を枯れさせない作用があるのなら・・・。あの芳香が「住まい」にあって、人間の健康面に情緒安定にダイレクトに寄与する可能性がある。というより不健康につながる事の方が極めてイメージしづらいんです。
 植物たる杉の本来持っている香りが他の植物の生命力に寄与する事例はこれからも実験すれば事例として多くできるでしょう。けれどもあの香りが私達の健康に寄与する数値的証明はたぶん間違いなく無理。植物や人間を数値的に評価するのは無理ですからね。「僕は昨日より10%やる気があります。」なんておかしいですもんね。「私は桜の花の方がバラより5割増で好きだ。」なんてのも変です。ただ私達人類より地球上の先輩である植物に対してリスペクトの気持ちを持つ人だけがその植物のパワーの恩恵にあずかれるのかもしれません。
 もちろん杉花粉とは別に杉の木材そのものにアレルギー反応を示す方もいらっしゃいます。アレルギーは誰にでもあります。私にはまだ無いけどひょっとしたら地球の裏側にある植物が私にとってのアレルギー作用のある植物かもしれない。出会わずに済む事はあってもきっとどこかにあるはず。それがアレルギー。杉という樹種はとてもパワフルな木です。パワフルって言い方が変に聞こえるでしょうが、実に「強い」木なんです。だから免疫、抗体といった点に優れているとは言えない現代人にはアレルギー反応を示す方が多いかもしれません。
 パワーの裏づけを具体的にお話するとまずはその分布。北は北海道の南端から南は屋久島まで生息しています。針葉樹のもう一方の雄、桧(ひのき)はその分布範囲は杉に比較して半分くらいですから、これはすなわち環境に対する適応力の強さです。しかも屋久杉に代表されるように世界最長クラスの生命力を有します。これらの「強さ」の源はもちろんプロテインでもベッカムカプセルでもありません。太陽と雨と大地から得た滋養分を油脂分として体内に蓄えてその「強さ」として発揮している事に他ならないんです。
 他の樹種に例えますとナラやカバなどにアレルギー反応を示す方は極めて少ないですよね。あれらの木は野外に放置しといたら容易に腐食するというか、とけちゃうというか、そんな木ですよね。決してパワーがある方じゃない。だからアレルギー作用も少ないんでしょうね。杉は屋外に放置してもなかなか腐りませんからね。
 おそらくそんな実験は不可能でしょうが、杉材アレルギー(繰り返しますが杉花粉症とは異質のモノで同一ではありませんからね)の方の「住まい」に「愛工房経由」の杉材をふんだんに使った場合、もちろんアレルギーにお苦しみになられるでしょうが、アレルギー反応を示す方が杉のパワーを頂けないという事は無いでしょうから、反応しても、より健康的な身体になっていって、やがてアレルギー反応を示さなくなる。という事はあるかもしれませんね。だって日本人は古来より杉の家に住んでたんですものね。ナラやカバの家なんてありませんでしたから。
 事例と致しましては他にも・・・「愛工房経由の杉」で枕を作って使用。いびきをかかなくなった。過呼吸性症候群がなくなった。というのがあります。ちなみに桧(ひのき)の芳香は覚醒作用。ハイテンション作用がありますから寝室やベッドが桧というのは安眠できるわけありませんよね。子供部屋も駄目ですね。リビングや玄関には大丈夫でしょう。杉は安らぎやリラックス効果ありますから逆にベッドや寝室・子供部屋には最適ですし、場所を選ばないんですね。
 「愛工房経由の杉」の香りが濃厚過ぎると言う設計士さんもいらっしゃいますが、私はその言には異論をはさみたいですね。それはまるでわざわざ料理において栄養価を低くする調理をしろと言ってるように聞こえます。
 「愛工房経由の杉材」の上にコップに入れた水道水やおまんじゅうを置くとほんとすぐに味が変わって、水がまろやかになりますし、甘ったるさが無くなります。これは瞬時にあの濃厚な甘い香りが飲食物に移遷するからなんですね。考えてみれば、命の次に大切な食べ物の入れ物は古来より我が国ではほとんど「年単位で自然乾燥させた杉」を使っていました。米びつ、味噌樽、しょう油樽、お茶箱、清酒樽、文明堂のカステラ。みーんな杉ですもんね。先人は杉の器に食べ物を入れると美味しくなる事を知ってたんですね。
 食べ物と住まいに使用されてたんですから昔はアレルギー反応示す方はほとんどいらっしゃらなかったんでしょうね。でも現在は増えている。だから香りを抑えろというのは違うと思う。あの「濃厚な甘い香り」って実は慣れるんですよ。部屋に入った瞬間は凄く感じるんだけど、やがて慣れて感じなくなるんですね。そして退室してまた入ってくると感じる。これはサンプル数は100人弱くらいだけど「適材適所の会」のイベントで実験済みです。入ってくると6割以上の人が(見逃してる方もいるだろうから実際はもっと多くの割合でしょう)軽く深呼吸してました。たぶん日本人の遺伝子レベルで杉の本来の「甘い香り」は私達と結びついてるんでしょう。支持率100%の香水なんてあり得ませんよね。あるとしたら杉の香りなんでしょうね日本人は。
 「愛工房経由の杉」の香りが濃厚過ぎるとおっしゃる方は臭くない「くさや」が欲しいとか言い出す方なんでしょうかね。もちろん私はアレルギーの方も含めてみんな「愛工房経由の杉」を住まいに使うべきだと言ってるつもりはありませんよ。ただ植物のもつ数値化不能の私達への恩恵の具体的アプローチとはその樹種の持つそれぞれの芳香ではないか?という推論を語っているだけです。
 ほら温泉の効用ってみんな信じてるけど、1回入っただけですぐ効果があるわけじゃない事も理解してますよね。木も同じじゃなかろうか。樹種の芳香によって様々な効能があると思うんです。だって枯れなかった植物と愛工房経由の杉材は直接触れてませんから接点は芳香だけなんですからね。杉はとりわけリラックス効果高くて、それは高温乾燥の杉では無いに等しくって、「愛工房」はその杉の効能を全開にするプラントだと思うわけです。
 実験すれば不眠症に悩む方が「愛工房経由の杉」を使ったベッドにするだとか、寝室の床や腰板に使用する事によって効果がある事例は多く得られるでしょうね。いびきが治った方がおっしゃってましたが、最初は濃厚な香りに慣れなくて寝付けなかったが、やがて・・・というお話をされてましたから、温泉の効能のように、じっくりお付き合い頂いて、しかも植物をリスペクトするお気持ちがお有りならきっと効果は現れるでしょうね。
 もうお気づきでしょうが、おそらく愛工房経由の杉が現れたのはこれが初めてではありません。昔は紫外線劣化の心配も少なく、杉の乾燥も年単位だったはずです。
 それくらいじっくりと乾燥された杉は「愛」の輝きがあったはずです。自然乾燥を超えた人工乾燥という表現は正しくありませんでした。100年前の自然乾燥級の人工乾燥装置だったんですね。いわばタイムマシンのようなプラントなんですね。「乾燥釜」という範疇で考えると理解しづらいでしょうね。時間と手間をかければ自然乾燥でもあの愛の輝きがだせると思いたいです。4本に1本は杉だという我が国にとって、もう待ったなし!だからこそこのような装置を、杉は伊藤さんに授けたんでしょうね。
 あの「甘い香り」を「愛工房経由」以外で現在嗅ごうとするなら銘木と呼ばれる江戸時代に生を受けた杉を数10年単位で乾燥させた「銘木」と呼ばれる杉だけでしょうね。それくらい通常流通している杉とは香りの「品」が違う。
 「愛工房経由の杉」の板を銘木屋さんに見てもらったら、「なぜ樹齢数10年くらいの杉で銘木級の杉と同じ香りがするのか信じられない!」って腰抜かしちゃってましたからね。そういえば桧(ひのき)は幾ら年数を重ねても銘木にはなりませんね。桧の銘木って無いですね。総じて桧の方が高価なのに杉って面白いですね。
6.黒心の価値
 愛工房経由の杉材の素晴らしさを語ってきましたが、赤身より黒心の方が、より油脂分豊富で芳香も「濃厚な甘い香り」がします。これは山の養分説から考えると黒心のブランド化の可能性を大きく感じます。現在は安く買い叩かれている材が宝の山になる可能性があります。
赤身より黒心の方が油脂分豊富で、濃厚な香りという事がそれだけ住まいの中でクライアントの健康面に寄与するという事につながるとすれば、より度数の高い焼酎の方が高いとは限りませんが、この場合は価値ある部位。という事になるでしょう。赤身より黒心の方がより安眠に・・・という感覚ですね。発明者の伊藤さんはこれを力説されていらっしゃいます。まるで黒心の生まれ変わりのように(笑)。
 杉材アレルギーの方にもこれらは応用がきく可能性があります。効果も高いがアレルギー反応率も高い順に黒心→赤身→白太と捉えてパッチテストなどをして選材していけます。ちなみに愛工房経由の杉材の白太の油脂分も凄いです。高温乾燥材は話しにならないとしても、他の中温・低温と呼ばれる乾燥釜からでてきた製品の品質を完全に凌駕しています。
7.補足事項 柱材などの乾燥について
 柱だって乾きますよ。ただしここではこの点に関しましては詳しく記述する事を避けます。
桧(ひのき)って「風割れ」といいますか、暴風雨の際におったヒビといいますか「ギックリ腰」みたいなのが多くありますよね。だけど杉にはそれがない。柔らかくしなやかにそれをかわすからですよね。ヤング係数では現れない数値化不可能なしなやかさが杉にはあります。ですから杉の柱を高温乾燥させるって事は間違いなく「しなやかさ」が奪われて強度が下がるでしょう。おそらく絶対にやるべき事じゃない。舞の海が身体が固くなるトレーニングをするようなもんですね。
 柱材などの軸組み構造材の愛工房での乾燥方法に関しましては書きません。この駄文がどこで一人歩きするかわからないですからね。ただしものの考え方として柱ってのは丸太、木の丸ごとに極めて近い状態ですからね。それをまるで野菜炒めのようにあっという間に「乾かせ」というお考えの方には、つきあいきれないから、「乾かない」って言う事にしてます。天才の子供がいて、その子の学力を飛躍的に向上させるマシンがあったとして、そういう考えの方はその子が小3で東大に入学することが素晴らしいというお考えなんでしょうからね。僕にはそれがその子の幸せにつながるとは到底思えませんから。マシンがあっても我が子なら絶対に入れない。
 結局そういう人間として植物に対して極めて身勝手な、リスペクトに欠ける考えや行動が現在の国産材や森林の状況を作り出してると思うんですよね。杉の能力を損なう手段もそうです。そういう考えから来てると思うんです。愛工房は年単位屋内自然乾燥と同じ品質が可能なタイムマシンだけど、タイムマシンが出来たからって全てが解決するわけじゃない。タイムマシンに乗って1940年に飛んだってあの忌わしき戦争は止められない。震災だって起きます。どらえもんとのび太くんだって夏になれば毎年映画館でタイムマシンに乗って問題解決に奮闘してます。僕達は愛工房というタイムマシンに出会えたことによって、逆に、杉という植物をそのポテンシャルを生かした状態にするには年単位という時間が必要なんだ。という事を強く自覚しなきゃならないと思うんです。タイムマシンを手にしたからこそにね。
 「時間がお金。お金が時間」な世の中だからこそ、「時間が必要な事ってやっぱあるんだよなぁ。杉がそうだもんなぁ。人と人が理解する事もそうだよなぁ。物事にじっくり取り組む人をなんかのろま扱いした事、俺あったかもなぁ。杉に教わったなぁ。」と捉えなければまたまた私達は過ちをおかすと思うんです。軸組み材に関してはすいません具体的にはあえて書きません。そして明日からも私は野菜炒めな方々には「乾きませんよ。」と言い、杉を生かそうとされてる方には「乾きますよ。」とお話するでしょう。でもこれは正しい応対なんですよ。野菜炒めな人の時間軸で話せば乾く木なんて無いんですから。存在しないんですからね。 
7.さいごに・・
あと短く触れておくとすれば・・・
 愛工房経由の杉材は他の杉材に比べて「温かい」
「固い」
「重い」 
というのもあります。全て油脂分がらみでしょう。冬でも床暖房不要の暖かさです。
この「愛工房」というプラントは杉の活用に関しまして決定的な存在です。おそらく最高でしょう。これしか無い。と言っても過言じゃない。杉の活用。すなわち国土の森林再生への切り札です。杉を生かすには技術的には最高峰です。出てきた木材の品質が違いすぎます。プロだからわかるレベルを完全に超えてます。ユーザーの方にもわかるレベルです。
 日に三度三度「いただきます」と発するのは「命をいただきます」の意のはずです。杉を使わせていただくという考え。無駄なく杉を生かしていただくというお考えの方にこそ、いやそんな方にだけ「愛工房」が日本の各地の林産地に導入されて、国土の森林の再生が叶う日を切望致します。「愛工房」は確かに凄いけど、素晴らしかったのは杉。それに「愛工房」は気づかせてくれたんですね。現代建築の中ではその能力の10%も生かしきれていなかった。森林の再生が叶った際、私達日本人は本当にあらゆる意味で杉に救われると思いますし、実現のシナリオとしても、最終的な手柄が人間にいくようではまた同じような過ちが繰り返されますよ。「全てのお手柄は杉に!」そんなハッピーエンドを強く期待致します。
 当たり前の事が1番難しいという事を愛工房は教えてくれます。ほっとけば乾くという当たり前の事なのに、我々はそれを待てない。「怒って物事がイイ方向に解決しないという事を当たり前に知ってるのに、怒ったり怒鳴ったりしちゃう。」私達は日常の中で、当たり前の事を当たり前に行うのが1番難しいんですね。杉はしゃべらないけどそんな事を教えてくれています。ありがたいですね。
※愛工房に関します、そのプラントに人間が入る事によって健康になるという多くの事例に関しましては「続 愛工房に関する考察」として別にふれるモノとさせて頂きます。

木材適正使用相談センター 適材適所の会 会長 加藤 政実

2008年8月18日

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