「「糸へん」小耳早耳」

衰退が続く大阪

うめだ阪急、売り上げ目標下方修正の背景

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2013年12月11日(水)

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 やや旧聞に属するが10月末に阪急百貨店うめだ本店の売上高の下方修正が発表された。昨年11月に増床グランドオープンした阪急百貨店の当初の目標売上高は、メンズ館を含めて2130億円(うちメンズ館の売上高は160億円内外と推測される)だったが、これを今年5月に1900億円に下方修正した。その5カ月後に、さらに売上高を20億円引き下げた形となる。

 阪急の売り場作りやブランドのラインアップが悪かったのだろうか。そうではないだろう。阪急百貨店の売り場総面積は8万平方メートル。来年3月に近鉄百貨店あべのハルカス本店が全館グランドオープンして10万平方メートルの売り場総面積となるまでは、阪急を上回る売り場面積の百貨店はない。またブランドのラインアップも現在考え得る中ではかなり良い。ベストとは言えないまでもベター以上であることは多くの人が認めるところだ。

 であれば原因はなんだろうか。1つは明らかにオーバーストアである。2011年5月にJR大阪駅に隣接してファッションビル「ルクア」とJR大阪三越伊勢丹が同時開業した。その1カ月前には同じくJR大阪駅に隣接して大丸梅田店が増床グランドオープンした。また今年4月にはルクアとJR大阪三越伊勢丹に隣接してグランフロント大阪が開業した。グランフロント大阪の初年度の目標売上高は400億円とやや低めに設定されているが、入場客数が当初見込みを大きく上回っており、このままのペースで推移するなら目標売上高をクリアすることは可能だろう。

ルクアやグランフロントで1200億円の売り上げが発生

 グランフロント大阪のオープン後は、今秋まで大丸梅田店、ルクアとも売上高を落として推移しているが、それでも大丸梅田店は増床グランドオープン前から比べると売上高を百数十億円伸ばしているし、ルクアも300億円台での着地は確実だろう。初年度からずっと売上不振が伝えられているJR大阪三越伊勢丹だが、それでも売上高は300億円あった。今年度はもしかすると売上高300億円を下回る可能性があるが、それでも200億円台後半では確実に決着するだろう。

 2011年度はJR大阪駅周辺で、大丸梅田店の増収分とルクアとJR大阪三越伊勢丹によって800億円前後の売上高が生まれたことになる。2012年度もほぼ同じで、今年度はグランフロント大阪を合わせると約1200億円分の売上高が新たに生じたといえる。阪急うめだ本店への影響はあると見るべきだろう。もし、大丸梅田店が増床せず、ルクア、JR大阪三越伊勢丹、グランフロント大阪も開業しなければ、阪急は2130億円の売上高目標に限りなく近づくことができたはずだ。

 もう1つの原因は大阪の地力が落ちていることにあるだろう。人口も減少しているし、平均収入も減少している。全国的に見ても多くの地域で人口は減少傾向にあるし、平均収入も減少しているが、大阪は全国平均よりも減少幅が大きい。

 そういう地域に新たに1200億円分の売上高を稼ぐ大型商業施設が新設・増床されたのだから影響が出ないはずがない。しかも阪急を含め、どの商業施設も大阪駅周辺の徒歩数分圏内に集中している。これほど施設同士が密接している地域は国内にはない。本来、阪急が見込んでいた売上高は各商業施設で分散して消費されたと考えるべきだろう。


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