◆秘密保護法 各地で反対の声 

 特定秘密保護法が参議院本会議で与野党の攻防の末に可決、成立した6日、都内各地では同法への反対や懸念を示す声が上がった。物言えぬ社会にしないために行動を起こす人たちがいる。

 ◇杉並アピール連帯強化 日比谷1万5000人「NO!」

 「今日は民主主義の葬式です」

 11月から、杉並区内の文化人たちが呼びかけて法案の危険性を訴えて発表した「杉並アピール」。事務局の元中学教諭丸浜江里子さん(62)は、強行採決を重ねる政府に「民主主義が踏みにじられた」と嘆く。

 杉並区は原水爆禁止署名運動発祥の地。国内外に広がったこの運動にならい、法案反対を訴えて11月14日から始めた廃案を求める署名は、約4500筆にのぼる。

 「最初は驚くくらい無関心だったのが、今では高校生も足を止めたり、ファクスで署名を送ってくれたり。危機感が広がった」

 法案の成立に失望はしていない。「市民運動の畑を耕し、あちこちの地域にかえって強固な連帯の素地ができた」と丸浜さん。今後はそれをさらに強め、広げていくという。

 杉並区議会の5会派12人の区議有志も運動に参加した。「今まで一度も一緒に街宣活動したことがない」という区議同士がともに街頭で演説し、記者会見し、一緒に声明を国に届けた。

    

 ■杉並アピールの署名を国に届けたのは、呼びかけ人のひとりで、杉並区在住の元NHKプロデューサーで武蔵大教授の永田浩三さん(59)だ。

 国会近くで開かれる反対集会にも連日参加した。

 「国家権力は放っておくととんでもないことをするということを今回国民は見せつけられた。安倍政権の暴挙は、ごくふつうの人たちを目覚めさせてしまった」

 NHK時代、東欧の自由化を取材した。市民が自由と民主化を求めて次々に政権を倒すさまを目の当たりにした。

 「人々が政権を倒す理由は経済的な原因だけじゃない。密告社会から逃れたい、自由を得たい、という人間の根源的要求がエネルギーとなって、政権を倒していったんです。今回の事例も同じ。日本を率いるそうそうたる文化人たちがそろって怒り、安倍さんにノーを突きつけている」

    

 ■6日夜、千代田区の日比谷野外音楽堂で開かれた反対集会には、市民ら約1万5千人(主催者発表)が参加し、反対の声を上げた。

 演歌師の岡大介さん(35)が「ああわからない」など政府を風刺した曲を披露。参加者は集会後、「知る権利を守れ」「報道の自由を奪うな」などと訴え、デモ行進した。

 参加者の一人、練馬区の無職吉川邦良さん(63)は「この法律は自民党の選挙公約になかったはず。しっかり議論を尽くせばいいのに、拙速すぎる」と怒りをあらわにする。

 世田谷区の会社員、渡辺佐紀子さん(34)は東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町出身。実家は流され、知人にも仮設住宅などの慣れない生活で苦しんでいる人がいるという。「政府にはお金や時間の使い方を考えてほしい。国会ではもっと被災地の復興の議論をするべきだ」と話した。

    

 ■「練馬・生活者ネットワーク」に所属する主婦柳井克子さん(51)は6日夜、永田町の国会前で、区内の友人ら約30人と法案反対のシュプレヒコールをあげた。「情報が秘密裏に扱われると、市民が物事の判断ができなくなる。情報提供者も萎縮して、ものが言えない社会になる」と懸念する。「有権者は自民党に白紙委任したわけじゃない。政党がどういう行動をとっているのか、有権者には監視する責任がある」

 練馬区の自営業、間中敦子さん(59)は廃案を求める署名をしたことがある。デモに参加する友人もいる。関越道高架下に区が高齢者施設などを作る計画に反対してきた。

「今だって情報公開請求しても、資料が黒塗りになって開示される。法案が成立すれば秘密が際限なく広がり、ますます闇から闇へ、という社会になりかねない」と憤る。