60分間・企業ダントツ化プロジェクト
顧客感情をベースにした戦略構築法
神田昌典 著 2002年12月5日初版 ダイヤモンド社 1,600円+税
=感想=
「はじめに」で著者が“この本に書かれている内容を公開することで、私はクライアントからたぶん、叱られることになるだろう。”といきなり書いてありました。コンサルティングのノウハウを具体的に本にまとめて書いているからです。だけどポイントは抜けているんじゃないかと思いながら読んでいたのですが、この本をしっかり理解すると、企業ダントツ化は可能になります。私から見てもこの最初の文章は本物のようです。
業績を長期的に上げていく上で大切なのは戦略発想をどれだけの人間が行えるかということです。それができていないと、いくら素晴らしい商品を用意しても、その場だけに終わってしまいます。戦略の作り方、考え方をチャートを使って誰にでもできるような形にしたのが凄いところだと思います。
私自身も結構参考になりました。
=要約=
第1章
戦略は足し算ではなく、掛け算から生まれる
・ 戦略のない会社でも、効果的な武器(戦術)を与えることで業績がよくなる。だが、それは必ず一時的なことで終わる。
・ 戦略が間違っていれば、忙しくて儲からない会社になる。
・ 戦略とは選択すること。その次に、選択したものの優先順位を決定することである。
・ 戦略がプランであるのに対し、戦術はそのプランを効果的に達成する武器である。
・ 質問と解答は鏡に映った像のようなもので、具体的な質問をすれば、具体的な解答が得られ、抽象的な質問をすると、抽象的な答えしか帰ってこない。
・ 優れた発想をするためには、集中して考え、そして解放するというリズムを大切にする。
・ アイパワープログラム・・・毎週一人2つの業務改善アイディアを出す。自分の責任範囲内でできるものを挙げていく。どんな簡単なものでもよい。そしてこの改善アイディアを実行しなくてもいいというルールがある。とにかく社員の考える力を伸ばすことを目的として、実行を強制しないようにする。
・ 戦略を構築する際には、アイディアは上から与えられたものではなく、自らが勝ち取ったものではなければならない。
・ 思考プロセスが筋道だっていれば、解決困難な問題も短時間で解決策を見つけることができる。
第2章
未来を予測する経営者
・ 事業への参入タイミングが、ビジネスの成功の鍵を握っている。
・ 商品選択は事業の成否を決定するほど重要な項目。
・ ライフサイクル成長期の商品を活用して、最も費用効果的に新規客を獲得し、その後、リピート販売を促進していくことが最も安定したビジネスモデルである。
・ 入り口で専門化していれば、その後ろは、商品点数が多くとも問題はない。
・ 成熟期以降の新しいSカーブの描き方
@ 専門化する
A より速く商品(またはサービス)を提供する
B パッケージ商品を販売する
C 成長している媒体に乗る(コバンザメ商法)
D 怠け者の欲求を満たす
E コストを大幅削減する
F こだわり商品に特化する
G 社会的ミッションを持った会社を作る(NPOモデル)
第3章
「経営なんて簡単なのに、なんでみんな成功しないのかなぁ」
・ 商品を市場に出す前に、ニーズ・ウォンツ分析により、あなたの新しい提案を待ち望んでいる人がいるかどうかを判断する
・ 商品が売れない原因のナンバーワンは商品がわからないからである。小学生でもわかるように商品が説明されているかという観点で問い直すこと。
・ 商品が直感的にわかるようにすることは、突きつめるところ、商品ネーミングが鍵となる。
第4章
理想の顧客に出会う方法
・ 顧客を選ぶ会社は、顧客に選ばれる。顧客を選ばない会社は、顧客にも選ばれない。付き合いたくない客と、付き合いたい客を明確に分け、つきあいたい客とだけつきあうと利益がアップする。
・ 企業にとって差別化は善であり、均質化は悪である。丸い会社を目指すのではなく、尖った会社を作ることである。尖った会社を嫌う客は当然出てくる。誰からも嫌われないということは、すでに危険信号が点灯している。
第5章
愚者は俺ならできると考える。賢者は愚者でもできることをやる
・ のんびりしている。老夫婦でやっている。あんまり勉強してそうもない、と思えるにも拘らず、そこそこ食べている。こういう市場は狙い目。
・ 優れた品質の商品を持っていたとしても、それが買い手に伝わる言葉で表現されていなければ、劣った品質の商品と大差ない。小さな品質の差を明確に伝えられるかどうかで、現実の競争力が決まってくる。
・ マッキンゼーの調査によれば、1920年から30年代のS&P500企業の平均寿命は65年だったが、1960年代には25〜35年に、そして1990年代には15年に短命化している。2010年には、企業の平均寿命は10年ほどになると予想されており、そもそも事業を撤退するという準備なしに事業を開始すること自体が、大きなリスクを背負っていることになる。
第6章
ビジネスは大人が遊ぶ数字のゲーム
・ 現在のビジネスは、商品の需要がそこにあるわけではなく、書いての購買欲求を喚起していかなければならないために、どうしても顧客情報が必要であり、接近戦の方が圧倒的に成果が出やすい。
・ 無借金経営をするための2つの目安。@頻繁なリピート購買が期待される商品の場合、利益率は7〜8割以上なければならない。A頻繁なリピート購買が期待されない商品の場合、初回購入の粗利額は10万円以上なければならない。
第7章
害虫になるか、それとも天使になるか?
・ 顧客の購買欲求を喚起し、需要を創造していくためには、古典的なAIDA理論よりも、さらに細やかな心理の動き、すなわちITQI理論をベースにする。
・ 購買決定プロセスと販売プロセスを一致させることによって、成約率が高まる。これが一致しないと、購買欲求よりも購買抵抗が高まる結果、成約にいたらない。
・ 生きた戦略を実行に移すためには、現場にいる人間が戦略的思考回路をもって、自ら考え決定できなければならない。つまり、会社全体で戦略思考をもとことが競争優位となる。
第8章
購買欲求をシステマチックに高める方法
・ 顧客が購買を躊躇できないほど魅力的な商品とは、高いニーズとウォンツを持っている商品である。
・ 差し迫った必要性を感じさせるためには、まず顧客が抱える問題点を明確化し、その後、五感を持ってイメージさせるようにする。
・ 自分自身の心の光と闇を見直し、哲学を持ってビジネスに臨む事が、知識という力を持ったものの最低限の義務である。
第9章
ヒラメキは、集中した思考の後に降ってくる
・ 戦略とは、業界地図を塗り替える可能性を持つものである。
・ 戦略構築とは、質問するプロセスである。
・ 発想を得るためには、理想的な世界を創造する。無限の資金や技術があるというように、何も制限がない世界を創造する。現状から飛躍し、常識を塗り替えるアイディアを得るためである。
【課題図書65】 2005年7月30日