Updated: Tokyo  2013/12/11 04:05  |  New York  2013/12/10 14:05  |  London  2013/12/10 19:05
 

ボルカー・ルール-根付け業務は緩くヘッジは厳しく監視へ

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  12月10日(ブルームバーグ):米国ではウォール街でのトレーディングに対する政府の監視が強化される。金融監督機関は10日、銀行の自己勘定取引を規制する「ボルカー・ルール」の最終的な細則を発表した。

連邦準備制度理事会(FRB)や連邦預金保険公社(FDIC)など5機関は10日、ボルカー・ルールを正式に採択する。JPモルガン・チェースゴールドマン ・サックス・グループに代表されるウォール街の銀行は3年余りにわたりルールに異議を唱えてきており、そのロビー活動が部分的に成功した。この日は降雪のためワシントンの政府機関は閉鎖を余儀なくされているものの、監督機関はボルカー・ルールの発表を計画通り進めた。

発表された最終ルールによると、トレーダーが自己勘定取引に対する報酬という形で支払いを受けないことを条件に、銀行のマーケットメーキング(値付け業務)担当デスクへの適用除外が拡大される。また、海外のソブリン債に関連する証券も適用外となる。一方で、ヘッジの規制は強化され、取引をリスクに対する広義のヘッジとして指定する方法がこれまでよりも限定されるほか、監査官への情報開示の義務が拡大される。

バーナンキFRB議長はこの日の声明で、「ドッド・フランク法(金融規制改革法)の条項であるこのボルカー・ルールには、預金機関やその関連機関による過剰なリスクテークを制限するという重要な目的がある」と指摘。「ルールの最終的な効果は何よりも監督機関に掛かっている。監督機関はルールがどのように実践されているかについて理事会にフィードバックしながら、適切なバランスを見いだす必要がある」と加えた。

時間的余裕

FRBは銀行によるルール順守の期日を2015年7月21日とし、時間的な余裕を与えた。連結総資産・負債の規模が500億ドルの銀行は14年6月30日以降、トレーディングに関する量的情報を報告しなければならない。

ボルカー・ルールは2008年の金融危機発生を受けて、ウォール街の安定を回復する手段として、ボルカー元FRB議長が提唱した。マーケットメーキングや一部のヘッジ取引を例外として認める一方、銀行のプライベートエクイティ(PE、未公開株)やヘッジファンドへの出資を制限するボルカールールは、10年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)に盛り込まれて法制化された。

ルールではマーケットメーキングのほか、ポートフォリオのヘッジ、外国国債の扱い、ファンドへの出資規制、最高経営責任者(CEO)の責任などの細則が示された。

マーケットメーキング

ボルカー・ルールでは銀行が自己勘定で利益を得るためのトレーディングが禁止される一方、顧客のために行うマーケットメーキングは引き続き認められる。これら2つの取引を区別する作業は当局にとって最も難しいものだった。

またルールでは、当局はマーケットメーキングとして例外扱いを受けるための基準を緩和した。適用外とするには、トレーディング担当デスクは売りと買いの両方を行うか、自己勘定でロング(買い持ち)とショート(売り持ち)の両方を行う必要があり、これらの取引は「目先合理的に予想される顧客の需要」を継続的に超えてはならない。ルールでは、過去のデータおよび他の市場の要素に基づいて需要を判断するよう銀行に指示している。さらに、トレーダーの報酬については、禁止された取引に報いることのない形での取り決めが義務付けられる。

当局は銀行に対し、ボルカー・ルールの適用除外としたい取引については、特定のリスクをヘッジするものであることを継続的に示すよう義務付ける。

ヘッジ取引とリスクの特定

ルールでは特定されたリスクがヘッジによって低下すると「合理的に予想され得る」ように分析と独立した検査を銀行に求めるとともに、「一つもしくはそれ以上の具体的で識別できるリスクがはっきりと減少もしくは大幅に軽減させる」ヘッジ取引であることを示す必要があるとした。

さらに、「ヘッジ活動が禁止されている自己勘定取引でないことを確実にするため、継続的な再検査」の実施を銀行に求めた。

ボルカー・ルールの当初案は、海外に拠点を置く銀行への適用や海外のソブリン債市場への影響をめぐり国際的な批判を集めていた。ボルカー氏の提案では米国債を規制対象から除外する一方、外国の国債は対象としていたことから、カナダや日本、英国などの当局は米金融監督機関や米財務省に書簡で、自国政府の資金調達能力が悪影響を受けると訴えていた。

ルールによれば、外国政府が保証する証券の売買は認められ、海外の中央銀行が発行する証券も適用除外となる。米国外に活動拠点を置く米銀や米国に関連機関を置く外国企業も同等に扱われる。

原題:Volcker Rule Ushers in Era of Intrusive U.S. Oversight ofTrades(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Silla Brush sbrush@bloomberg.net;ワシントン Cheyenne Hopkins chopkins19@bloomberg.net;ワシントン Jesse Hamilton jhamilton33@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Maura Reynolds mreynolds34@bloomberg.net

更新日時: 2013/12/11 02:48 JST

 
 
 
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