仕事を拓く
若い民からの成長戦略
【政治】12・6を忘れない◆政治部長 金井辰樹反対の声が議事堂を包む中、耳をふさぐように採決に突入し、特定秘密保護法案は「法」になった。 国会の責任は、政府と与野党の論争を国民に提供して知る権利に応えること。そして民意を吸い上げながら法律をつくること。ところが、その責任を放棄し、知る権利をおびやかす法律を成立させてしまった。 法案の修正協議で先頭に立った自民党の中谷元・副幹事長は採決を前に「サイレントマジョリティー(声なき多数派)」の理解を得たと言った。声を上げない人は理解者と解釈し、反対の声は「大音量」の雑音だと思っているのだろうか。だから健全な民主主義の表現であるデモをテロに例えた石破茂自民党幹事長のことも、党内ではさほど問題視されなかったのだろう。 成立したばかりの条文を読み返してみた。三十カ所以上にちりばめられた「その他」の文字が、秘密の範囲を無限に広げ、知る権利を脇に追いやる構成になっている。 似た文章を思い出した。昨年、自民党がつくった憲法草案だ。随所にある「公益」や「公の秩序」が基本的人権を縛りつけている。二つの文をみて、この政権は、民より上に国家が君臨する社会をつくろうとしているのだと感じる。 責任は自民党だけでない。平和の党を自任する与党・公明党は「戦争する国」に道を開くとも指摘される政府案を、わずかな修正で了承してしまった。官僚支配の打破を訴えてきた日本維新の会やみんなの党は、官僚が秘密を意のままに操る懸念が強く残るまま与党と修正合意。これを機に巨大な安倍自民党との関係を深めようという党利党略が先行していた。反対姿勢を鮮明にするのが遅れた民主党も含め「国民の権利をどう守るか」という意識は希薄だった。 法律は成立した。しかし、終わりではない。国会でできた法律は、国会で改正も廃止もできる。反対論の全国的な広がりは、今回は法成立を阻止できなかったが、政権側は相当追い詰められていたのも事実だ。揺るぎなく声を上げ続けることで、政治を動かすことはできる。 そして、有権者にとって最も効果のある手段が選挙だ。私たちの一票で選んだ国会議員が、どんな発言をしたか。賛成したか。反対したか。きちんと胸に刻んでおく必要がある。政治家は「国民はしばらくしたら忘れる」と、たかをくくっているかもしれないが、そうはいかない。次の選挙まで十二月六日のことを、しっかりと記憶にとどめたい。 PR情報
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