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たまにはエロ展開をと言う要望があったので。
下品な表現があります。
苦手な方はご遠慮ください。
三部
4話
 超レアな高級アイテムである魔道カメラ。

 俺は、一本数十万エリスはする魔道フィルムを惜しげもなく使い、その魔道カメラで被写体を撮りまくっていた。

 赤く扇情的なレースの下着。
 それに覆われる、冒険者特有の、引き締まった健康的な肉体。

 それを遠慮なくレンズの中に収めていく。
 下からのアングルに、左右、様々なアングルで。
 いよいよ気持ちが昂ぶってきた俺は、とうとう自分から指示を出した。

「さあ、それじゃ、指を咥えて尻をこちらに向けてみようか!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「国の特別指定モンスター。通称、賞金首を狙えないかなと考えたんだが」
 屋敷の広間に集まる皆に俺はそう切り出すと、その場の全員が、聞いた途端に顔をしかめた。

 ……いや、
「ぜひ行こう。オススメは、邪神の一種では無いかと言われる、強壮なる使者との別名を持つ、朽ちた神殿に住む触手モンスターがいいぞ!」
 喜んでいるのが一人いた。
 とりあえずコイツは黙殺し、話を続ける。

「カズマー。私達に賞金首なんて倒せると思ってるの? 基本的に、賞金が掛けられるって事は、一流の冒険者ですら返り討ちにあってるって事よ? そんな相手にカエルに苦戦してる私達が勝てるとでも?」
 カエルが天敵なのはお前とめぐみんだけだと言いたいが、言っている事は分かる。
 俺もそんなにバカじゃない。

「色々調べてみたんだよ。賞金首にも色々いるだろ? 例えば、今の季節、女性のスカートをめくる為だけに存在する、春を告げる精霊、春一番さんとか。スカートをめくる事以外は人に危害は与えないが、女性達に莫大な賞金を掛けられているそうじゃないか。春一番さんは置いておくとして、こういった、クセのある俺達にも倒しやすそうなモンスターを狙うんだよ」
「なるほどな、一理ある。……そこでだ。先ほど言った、神殿の触手モンスターはどうだろう。私が敵の注意を引き付ける。そこを……」

 街の男性の絶大な支持を受け、一部では神と崇められている春の精霊、春一番さん。

 突風を身にまとい、女性の傍を何度も駆け抜けていくだけの無害な精霊だが、とても弱いのに多額の賞金が掛けられている。
 そんな賞金が掛かっていてなぜ討伐されないのかと不思議だが、女性冒険者達が追い詰めても、まるで街の中に協力者がいるかのごとく、不思議と姿を消してしまうそうだ。

 迷惑な賞金首である春一番さんを匿うなど、非常にけしからん事だ。
 この屋敷の近くでも、追い詰められた春一番さんが、何者かに匿われたかの様に姿を消したらしい。
 モンスターを匿うなんて、冒険者の風上にも置けない話だ。

「女の敵の春一番ですね。見つけたら爆裂魔法を叩き込んでやりたい所ですが……。ところでカズマ、なぜモンスターにさん付けを……?」
「……? 俺、さん付けなんてしてたか? 他には、そうだな……」
「しょ、触手モンスターを……」

 何か聞こえた気がしたが、俺はめぐみんに一枚の羊皮紙を差し出した。
 そこには、モンスターのイラストと情報が書かれている。
 めぐみんが、その紙を見て険しい顔をした。
「……密林の主と言われる、隠密トカゲですか? コイツは確か、高レベルの盗賊でも見つけられないと聞いたので、多分敵感知スキルが通じませんよ? 一人一人襲われて、全滅するのがオチだと思いますが……」

 マジか、敵感知が効かない敵がいるのか。

「敵感知使って探し当てて、爆裂魔法で一撃かなって思ったんだが、ダメか。うーん、となると……」
「……触……手……」

 誰かが泣きそうな小さな声で何かを言ったが、聞き取れない。
 と、玄関のドアが突然開いて、一人の男が飛び込んできた。
 それは、すでによく見知っている……

「……どうしたダスト。そんなに慌てて?」
 そんな俺の疑問に、ダストが荒い息を吐きながら。
「カズマ! た、大変なんだ! お前の力を貸してくれ! 頼む、一緒に来てくれないか!」
 良く分からないが、大変らしい。
 俺は三人の方を振り向くと、
「と言う訳だから、ちょっと行ってくる。………………どうしたんだ、お前」

 見れば無視され続けたダクネスが、悲しげな表情ながらも頬を火照らせプルプルしていた。

「……新感覚……。新感覚だ……」
「……そろそろお前に、きちんと教育してやるからな」
「きょ、教育!?」
 ……教育と聞いてなぜか目を輝かせるこいつには、もう再教育は不可能なのかもしれない。





 街中を、ダストに目的地まで案内されながら、俺は話を聞いていた。
 そしてその説明を聞き終わり、俺はその場に足を止める。
「……えっと。ちょっと待ってくれ。つまりアレか? 大変な事って、リーンに男が出来たって事?」
「そうだ! こんな重大な事なのに、テイラーもキースもふーんの一言で済ませやがる!」
 いや、俺もふーんとしか言えないのだが。
 だがダストは拳を振り上げ。
「大事な仲間が、どこの馬の骨とも分からねえ奴といちゃついてやがんだぞ? カズマだってリーンとパーティ組んだ事があるだろう? 仲間の女が、変な男に引っかかったら心配だろうが!」
 ど、どうだろう。

 力説するダストに若干引き気味になるが、つまりウチの三人の問題児が、他所に男を作ったらって事で……。

 ……あれ? 
 確かに、何か嫌かも知れない。
 いやいや、以前の俺なら、良い男なら、押し付けて任せてしまえって思ってなかったか。
 なんだろうこの微妙な感じは。

 ……なるほど、あれだ。
 連中とは長い付き合いだし、例えばペットを飼ってると、最初はいらないと思っていた、どんなに面倒をかける子でも、流石に情も移るってやつだ。

 だが確かに……、
「ちょっと気持ちは分かる気はする」
「だろう!? さすがカズマだ、分かってるじゃねーか!」

 俺はテンション高いダストに、そのまま説明を続けられた。
 つまりはこういう事らしい。

 ここ最近、リーンがあまりクエストに出たがらず、ちょこちょこ外出していたらしい。
 それをダストが不審に思い、四六時中リーンの後をつけてみたら、もれなく知らない男と一緒に宿屋に入って行ったのだと言う。
「……お前、それ、ストーカ」
「つまりだ! このぽっと出野郎にリーンがたぶらかされてる訳なんだよ! 俺は仲間が心配なんだ。俺は相手の男を調査したい。頼むカズマ! 他の二人は頼りにならねえ! この通りだ、協力してくれ!」

 俺に手を合わせるダストの言葉に、俺はしばらく考え込んだ。

 人の恋愛に他人が干渉するってのも無粋な話だが、俺も人の事を言えるだろうか?
 もしダクネス辺りが、彼氏が出来ましたとか言い出したら、多分どんな男か調べに行きたくなる。
 ダクネスの場合は男の趣味が特殊過ぎるからだが。

「……分かった。ちょっと気持ち悪いが、多分、俺もダストと同じ立場だったら、やっぱり相手の男を調査ぐらいはするかもしれない。リーンの場合は問題ないとは思うけど、相手がどんな奴か、気にならないって言えば嘘になるしな」
「うおおっ! 話せるなカズマ! 頼りになるぜ!」





 そこは、小さいながらも小綺麗な宿屋だった。
 何と言うか、冒険者には似つかわしくない感じの、カップルとかがよく使いそうな、そんな宿だ。
「ここだカズマ。ここに、リーンをたぶらかした悪魔がいる」
 いや、まだ相手がどんな奴かも知らないだろうが。
 いきり立つダストを見ながら、俺はこの男は大丈夫だろうかと若干心配になっていた。

「で、どうするんだ? まさか堂々と相手の男を訪ねる訳にもいかないだろ」
 俺の言葉に、ダストがニヤリと笑みを浮かべた。
「俺が何年冒険者やってると思ってるんだ。この稼業は用意周到でなきゃ長生きできない仕事なんだぜ? 相手が泊まっている部屋も調べてあるし、その男が借りてる部屋の、隣の部屋を既に借りておいた」

 お、お前……。

 この男は今の内に通報しておいた方が良さそうな気がしてきたが、既にダストは宿のドアを開けていた。
 しょうがなく俺も後に続く。
 宿の中は、実に基本的なスタイルだ。
 一階は食堂になっており、二階で部屋を貸すタイプである。
 すでに店主には話を通してあるのか、ダストと俺を見ても、宿の店主は止めるでもなく、そ知らぬ顔をし気だるげに欠伸した。
ダストは、そのまま二階への階段を上がっていく。
 やがて、ある部屋の前に立つと。
「よし、ここだ。……壁が薄いから極力声を上げるなよ? 隣の部屋には、リーンの奴も既にいるはずだ。あいつは耳が良いから、俺達の声だって気付くかも知れねえ」
 俺はダストの言葉に頷くと、ダストに続き、部屋に入った。

 そこはベッドと小さなタンスしかないシンプルな部屋。
 ダストはドアをそっと閉めると、隣の部屋へと続く壁に近付き、耳を当てた。
 俺も、何だかいけない事をしているなと思いつつ、同じ様に耳を当てる。
 確かに壁は薄いらしく、聞き覚えのある女の子の声が聞こえてきた。


『そう言われても……。私の口からは、何とも……』
 それは、間違いなくリーンの声。
 だが、声の様子からしてあまり楽しげな話をしている様には聞こえない。
『リーンさん……。僕が難しい事を言っているのは分かってます。本来なら、こんな事は許されるべきではありません。しかし、好きになってしまったものはしょうがないんです!』
『お、落ち着いて! その、良く考えてくださいね? あなたは貴族で、本来冒険者なんて相手にするべき立場の人じゃないんだし。それだけでも問題なのに……』

 どうも、相手は貴族階級の男らしい。
 と言う事は、リーンにとっちゃ玉の輿か。
 しかし、どうにもリーンが、口ぶりからして乗り気じゃ無いのが気になる所だ。

 貴族の息子と冒険者。
 普通に考えて、本来ならば日常生活ですら、一生出会う事なんてない二人なのだろう。
 きっと、俺とダクネスが同じパーティで冒険している様な例が異常なのだ。

 壁の向こうの話は尚も続く。

『リーンさん! 身分の違いでこの想いが届かないのは、百も承知! いや、それよりももっと困難な問題がある。でも、せめて……! せめて、この高値をはたいて手に入れた魔道カメラで、写真を撮らせて欲しいんだ!』
『おおおお、落ち着いて! 落ち着いてください! 冷静になろう!』

 話の流れで大体分かった。
 リーンに貴族の男が惚れ、そして身分的にも問題があるし結ばれない。
 だからせめて写真を、ってか?
 なんだ、そんな悪い奴じゃなさそうじゃないか。

『出来るだけ! こう、出来るだけ扇情的な奴が!』
『落ち着こう! お願い落ち着こう! ちょっと下に降りて、何か軽い物でもつまんで、落ち着こう!!』

 いや、そうでも無かったかも知れない。

 と、俺の隣でダストがムクリと立ち上がった。
「ちょっとぶっ飛ばしてくるわ」
「おい待て、行くな! まだ早い!」
 俺がダストを何とか取り押さえていると、やがて隣の部屋のドアが開き、閉まる音。
 そして廊下を二人が歩いていく音がした。

 一階に、軽く食事をしに行ったのだろう。
 それを無言で聞いていたダストが、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。







「おい見ろよカズマ! この脱ぎ散らかされた服! 流石はお貴族様だぜ、良い物着ていやがる!」
 俺はダストを追い掛け、隣の部屋へと侵入していた。
 室内を物色するダストを見ながら、俺は頭を抱えたくなる。
 とうとうやらかしてしまった。
 只今の罪状は住居不法侵入。

「さてさて、貴族の坊ちゃまは一体どんなお宝を……って、これは……!?」

 これ以上は止めるべきだ。
 不法侵入に窃盗とか、すでに一線を越えている。
 タンスを開けて何かに驚いているダストの肩に手を置いて、俺は……。

「見ろカズマ! このレース付きの赤いランジェリーを! あの野郎、これをリーンに履かせて写真撮るつもりなんだぜ!? こんな物まで用意しやがって、あのド変態が! こんな物、こうしてやんよぉ!!」

 ダストが、そのまま何の躊躇も無くズボンごとパンツを下ろし、その赤いレースの下着を装備した。

 あのド変態がと言っていたが、今の段階では間違いなくこの男の方がド変態だ。

「よし、カズマ! そこに転がってるレアアイテムで、この俺を撮ってくれ! 高額なフィルムの中身を俺の半裸姿で一杯にして、万一リーンを撮ったとしても、現像した瞬間に一生物のトラウマを味合わせてやる!」

 もう何て言ったらいいのか。

 俺は半ば気圧され、言われるままに魔道カメラとやらを手に持った。
 作りは単純そうだが、確かに強い魔力が込もっているのが感じられる。
 俺は今、恐らくは家ぐらい買えてしまうぐらいの高級品を使い、世にもバカな事をしようとしている。

 ダストが上半身の服を脱ぎ。
 そのまま両腕を組むと、手も使わずブリッジの体勢を取った。
 ダストは鍛えられた太い首で体を支え、その引き締まった体で見事なアーチを描いていた。
「よし、やれ、カズマ! 俺の体の美しさを後世に残してやってくれ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 一体何枚の写真を撮ったのだろう。
 歯をきらめかせ、様々なポーズを取るダストを、俺は床にゴロゴロ転がったりと、実に様々なアングルで激写していた。
「いいぞいいぞダスト! その調子だ、今のお前は輝いている! さあ、美しいポーズは撮り終えた。次は扇情的にいってみようか! さあ、それじゃ、指を咥えて尻をこちらに向けてみようか!」
 ダストは言われるままに、親指を咥えて赤いショーツに包まれた尻をこちらに向けた。
 それを何枚か撮り終えて、俺は更なる指示を出す。
「よし、次はいよいよカッコ良さを加えてみようか! 足を開き、腰を落とし、手を……、そうそう、そんな感じで!」

 ダストは赤いショーツ姿のまま、まるで力士のシコ踏みの様に腰を落とし、右手を横に真っ直ぐ伸ばし。
 もう片方の手の肘を曲げ、胸の前にやり酷く真剣な表情で、俺が教えた言葉を言った。

「はっけよい!」

 そこでとうとう限界に達した俺とダストは、腹を抱えて笑い、床を叩いて転がり回り……


 ゴトッ。


 ……ドアを開けた瞬間の状態で、持っていた杖を落とした、呆然とした表情のリーン達と目が合った。






「で、これは何? バカなダストは分かるけど、カズマまで何やってんの?」
 俺とダストは、リーンと貴族の青年の前で正座していた。
「「すいません」」
 俺とダストが同時に謝る。

 不覚だった。
 変なスイッチが入り、二人でバカな写真を撮るのに夢中になっていた。
 そんな俺達二人を見て、リーンが深々と、本当に情け無さそうにため息を吐く。

 リーンのダストを見る目が痛い。
 と言うか女物のショーツ姿が痛々しいので、せめてパンツの履き換えだけでもさせてあげて欲しい。

「はぁ……。全く、色々心配して損したわ。ああ、彼の事はもう、お好きにどうぞ? 私は何も言いませんから。……ほら、カズマ、行こう?」
 リーンが呆れた様に、疲れた様に。
 俺に片手を差し出した。
「……へ? いや、あの二人を一緒にしちゃマズイだろ。大変な事になるぞ?」
 俺はリーンに手を引かれ、半ば強引に外に出される。
 リーンが後ろ手にドアを閉め。
「じゃあ、行こうか」
 そう言って、廊下を歩き出した。

『ダストさん、まさかあなたが、僕の部屋にそんな格好でいるなんて……』
『あ? 何だ、オウコラ、確かに不法侵入だが文句あっか?』

 部屋の中から聞こえる、取り残された二人の声。
 完全に開き直った、ダストの雰囲気が物騒だ。

「なあリーン。あいつ、止めた方が良くないか? 絶対何かやらかすぞ?」
 俺の言葉に、リーンが諦めた様に首を振った。
「やらかすって言うか、やらかされるって言うか……。私は頑張ったよ。うん、凄く頑張った。それなのに、ドア開けたらあのバカ、あんな格好で部屋にいるんだもの。カモがネギしょってホイホイ自分から鍋に入ってフタまで閉めたのよ? もう私にはこれ以上、出来る事なんて何にもないわ」

 ……?
 何だか話が噛み合わない。

『も、勿論文句なんてある訳無いですよダストさん……! ダストさん……! ああ……ダストさん……! う、うわあ、感激だなあ……。リーンさんからは諦めた方が良いって言われてたけども、まさかこんな……。アクシズ教団に入信して、祈り続けて良かった……! 神様は、神様は本当にいたんだ……!』
『何喜んでるんだか分からねえが、お貴族様だからって、下手に出ると思うなよ? 俺にとっちゃ何の関係もねーんだよ。ここにいるのは二人の男。それ以上でもそれ以下でもねえ。そこん所ちゃんと分かってるか?』
『なっ!? 身分の差なんて気にしないって、そう言ってくれるんですか!? ここにいるのは、二人の男のみ、と……!? ああ……、ああ……! 今日はなんて日なんだ、深く感謝致しますアクア様……!』

 そんな、ダストと貴族の青年の声をドア越しに聞きながら。
 俺はリーンと共に、宿を出た。





「で、何であんな所にいたの? どうしちゃったのよ二人とも」
 宿を出ると、リーンが不思議そうに聞いてきた。
 なんと言ったら良い物か……。
「いや、実はな……?」

 俺はこれまでの経緯、そして何より、ダストが結構本気で心配していた事を洗いざらいリーンに話すと……。
 リーンは、息が出来なくなるぐらいに笑い転げた。

「あっ……あはっ……! あ、アホだ! あんた達二人、絶対おかしいよ! あはははは!」
 全くその通りだと思う。
 リーンは目尻に浮かんだ涙を拭い、未だに肩をひくつかせながら。
「はあー……。あのね、あの貴族の人は、ダストが好きなの」

 その一言に、時が止まった。

「……えっ?」

 今なんつった。
「だからね、あの貴族の人に、ダストが好きなんだけどどうしようって、そんな相談を受けてたのよ。で、結ばれようとかそんな事は思わないから、せめてダストの写真が撮りたいって言っててね」

 おっと、つまりはあのランジェリー類は、ひょっとしてあの貴族の人の私物とか?

 ……その時だった。

「ひゃあああああああああああああああああー!」

 それは今まで聞いた事も無いダストの絶叫。
 宿の二階の方から、ダストの、鳥を絞めた様な切ない声が聞こえてきた。
 ……俺は、今日は何も起きなかったと自分に言い聞かせ、リーンと共に歩いて行った。






「しかし、バカな事に付き合わされたなぁ……。今日は賞金首モンスターでも狙うかって言ってたのに……」
 今の時刻は昼を回った頃。
 移動と討伐時間を考えると、ちょっと今からでは難しいだろう。
 どこへ向かうにしても、移動だけで半日は掛かる。
「へー? 賞金首なんて狙うんだ? まあ、カズマのパーティは上級職揃いだしね。おまけに、カズマがいるならなんとかなっちゃいそうだね!」

 リーンが笑いながら言ってくるが、どうも俺への評価が一緒にパーティ組んでから不当に高い気がする。
 駆け出しが賞金首を狙うなんて言ってたら、普通は笑われそうな物なのだが……。

 俺が苦笑を浮かべながら、リーンに買いかぶり過ぎだと言おうとした、その時だった。


『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 俺とリーンは、思わず不安げに顔を見合わせた。
 と言うのも、呼び掛けている声はいつもの人の声なのだが、いつもの緊急の呼び出しよりも、その声が上擦っている。
 やがて、呼び出しの声が一際大きく、悲鳴じみた声になる。

『普段顔を出さない方も、皆さん、考えられる最大の武装で、必ず参加でお願いします!』

 やがて、一拍置いて、声が響く。

『特別指定モンスター、高額賞金首、機動要塞デストロイヤー接近中! 冒険者の皆様は、直ちにギルドに集まってください!!』
次回はVS賞金首。












…………謝りません


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