ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
二部
9話後編
「勝負はどちらかが根を上げるまで。この私に、こんなのもう無理、お願いこれ以上は許して! って言わせて見せろ! そうしたら嫁でもなんでもどこへでも行ってやる!」
 ダクネスが俺達を連れてきた修練場。
 ダクネスは、バルターに一本の木刀を投げて渡す。
 それを受け取ったバルターは、困った表情で木刀を一振りさせた。
「えっと……。ララティーナ様、私は騎士です。訓練とはいえ、女性に手を上げる事など出来ません……」
 そんなバルターにダクネスは、不愉快そうに顔をしかめる。
「何というフヌケだ。そこのカズマはな、自称男女平等主義者で、女相手にドロップキックも食らわせられると豪語している様な奴だぞ。少しは見習え」
 ダクネスの言葉にバルターが俺を見るが、その視線が何だか痛い。

 バルターは意を決した様に、息を吐き。
「……分かりました。正直言って、今回の見合いは親に押し付けられた物だったんです。そして私は、最初はこの見合いをやんわりと断わりにここへ来ました。……でも、あなたを見て気が変わった。どこにでも居る貴族の令嬢とは訳が違う。あなたは、流石は王国の懐刀の一人娘だ。豪放にして、それでいて恥ずかしがる様な可愛い一面もある。そして物事をハッキリ言える清々しさに、下々の執事に対する、上からではない、同じ様な目線で接するその態度。私はあなたに興味が湧いた。……行きますよ、ララティーナ様!」
 いきなりの惚れた宣言と共に斬りかかった!

 それはダクネスの木刀を跳ね上げると、そのまますかさずダクネスの肩に打ち込まれる。
 それに、バルターがホッと息を吐いた。
 勝負あったと思ったのだろう。
 ダクネスが、何事も無かったかの様に跳ね上げられた自分の木刀を拾い直し。
「よし。さあ次だ。掛かって来い」






 三十分以上が経っただろうか。
「も、もういいでしょう! もう勝負は見えている! なぜ諦めないんですかあなたは!」
 切羽詰まったバルターの声。
 実力自体は圧倒的にバルターの方が上だった。
 先ほどからダクネスの木刀はバルターには掠りもせず、逆にダクネスは木刀であちこちを打たれ、そこかしこに痣が出来ている。
 だがダクネスは荒い息を吐きながらも一向に目から光が消えない。
 汗に塗れ、頬を火照らせながらも、ダクネスは声を張り上げた。
「どうした、もっと遠慮などせずにどんどん来い! 徹底できる強さを見せろ!」

 そんなダクネスを見て、バルターが木刀を投げ捨てた。
 そのまま両手を上げて降参する。
「……参りましたララティーナ様。私の負けです。技量では勝っていても、心の強さで負けました……。あなたは、とても強い人だ……」
 バルターが、そう言ってダクネスを眩しそうに見つめ、そして笑った。
 ダクネスはと言えば、不満そうに肩を落とし。
「……なんだ、終わりか。つまらん、修行して出直して来い」
 そのダクネスの言葉に、バルターは声を上げて笑い出した。
 それは、何だかとても楽しそうな、吹っ切れた笑いだった。
 そして、バルターはダクネスに聞こえるか聞こえないかの小さな声で。
「……本当に、惚れてしまった……」
 そんな事を呟いた。


 一見、いい話だなと思うのに。
 内情を知っている俺にはどうしても……。
 きっとダクネスの荒い息とあの火照らせた顔を見て、痛みに耐えながら頑張るクルセイダーとでも映ったのだろう。
 俺が深々とため息をついていると、当のダクネスがバルターの投げた木刀を拾い上げ。

「よし、来いカズマ。お前のその容赦の無さと外道さを、バルターに見せて教えてやれ」

 トンチンカンな事を言って、それを俺に渡してくる。
 ……こいつは何を言い出すんだろう。
 いや、こいつはバルターとのやり合いで身体に火が付いてしまったのだ。
 おいふざけんな、そんなもん相手できるか。

「……私も見たいな、ララティーナ様が信頼を寄せる君が、どんな戦いをするのかを」

 そんな余計な事を言い出すバルター。
 ちょっと離れた所には、今までは退屈そうにしていた、空気の様だっためぐみんが、おっ、と展開の変化に興味を示す。

 ……ナニコレ。

「はあ。もういい分かった。どうせもう見合いは失敗だしな。それにバルター様も、お嬢様の悪い噂なんぞ流さないだろうし」
 俺はよっこらせと立ち上がる。
「よし、いいぞカズマ! 実は、私は一度お前とやり合いたかった! 初対面の女相手でも下着を剥こうとするその非道さ! 様々な搦め手を使うその悪辣さ! さあ、全力で掛かって来るがいい!」
 ダクネスの言葉で、俺を見るバルターの視線が本当に痛い。

 この寒い時期に、この火照った変態の相手をまともにしてやるつもりもない。
 俺は空いた片手を突き出すと。
「『クリエイト・ウォーター』!」
 ダクネスの頭から水を被せた。
「えっ!?」
 驚くバルターに、俺はどうしたのかと声を掛けた。
「……どうかしました?」
 それにバルターが、慌てたように、
「……い、いや、木刀を握っての試合で、普通は魔法を使わないだろうと……」
 おお? そういう物なのだろうか。
 というか……。

 ダクネスの姿を見て、めぐみんがぼそりと呟いた。
「……さ、最低……」

 言われてダクネスの姿を見れば、ずぶ濡れになり、下着がスケて、破れたスカートと相まってそれはもう凄く……ありがとうございます、ありがとうございます。

 バルターはもはやずっと下を向き、顔を上げる余裕もなさ気だ。
「フ、フフフ……。見ろバルター! この、木刀での勝負と思いきや、いきなりこんな辱めを仕掛けてくる。この男のこういう所をちゃんと見ておけ!」
 ずぶ濡れになったダクネスが、誤解を招くような事を口走る。
「お、俺はそんなつもりでやったんじゃ……! ああもうっ、一撃で終わらせるからな!」
 全力で来いと言ったのだから、全力で行かせて貰おう。

 不死王の手を遠慮なく発動させ、木刀越しにダクネスを軽く突いた。
 弱体化が発動すると嫌だなと思いながらダクネスに打撃を与えると、昏睡状態に陥ったダクネスがそのままあっけなく崩れ落ちた。

 それを見たバルターが、驚愕の声を上げる。
「一撃だと! なんと容赦の無い、まさしく鬼の様な男……!」
「し、失礼なっ!」
 しかしまさかリッチーのスキルを使ったとも言えずに困っていると……。

「訓練場に居ると聞いて、ちょっとした飲み物の差し入れを…………」
 そこにタイミング良く現れたのはダクネスの親父さん。
 だが親父さんは、手にしていた飲み物の入ったかごを突然ボトリと落とす。
 どうしたんだと思っていると、引き連れている使用人の人達もぽかんと口を開けている。
 その、みんなの視線の先には……。

 そこにはダクネスが、全身に痣を付けられ、スカートが裂かれたあられもない状態で、しかもずぶ濡れで色々な物が透けた状態で意識を失い、地に横たわっており……。

 ………………俺とバルターは思わず顔を見合わせる。
 親父さんは俺とバルターを指差すと。

「こいつらを処刑しろ」

「「違うんです、誤解です!」」

 俺とバルターは同時に叫んだ。





 俺とバルターの二人は、その場に居ためぐみんの証言により、事情を何とか説明し、事なきを得ていた。
 ついで、俺とめぐみんの素性もすでにバルターに明かされている。
 最も、バルターは俺が執事ではないと、かなり最初から気付いていたらしいが。

 こんな事になった肝心のダクネスは、俺のスキルのせいでまだ眠っている。
 応接間に通された俺達は、タイトな黒のスカートと黒のシャツという、冒険者姿の時の普段着に着替えさせられた、寝息を立てるダクネスを見守っていた。
 やがて、親父さんが、ダクネスを見ながら口を開いた。

「娘は、元々人付き合いが苦手な方でなあ……。それは、身内の者に対してもそうだった。カズマ君、君は娘と同じパーティなんだろう? 最初、娘はあまり話さなかったんじゃないか?」

 親父さんの言葉に首を傾げた。
 どうだったか。
 あまり覚えてはいないが、そういえば今ほどは饒舌には話さなかった気はするな。
 口を開いてもロクな事しか喋らなかった記憶はあるのだが。

「娘は、クルセイダーになっても一人きりでなあ……。毎日毎日、エリス様の教会に通い詰め。冒険仲間が出来ますようにと、エリス様にお願いしていたよ。そんなある日の教会からの帰りに、娘が、初めて仲間が出来た、友達が出来た、盗賊の女の子と仲間になったと喜んで……」
 ……おっと、流石は本物の女神様。
 エリス様、いい仕事するなぁ……。

「家は、家内を早くに亡くしてな……。それから、新しい妻も娶らず男手で、甘やかしながらもとにかく自由に育てて来た。……それが、悪かったんだろうなあ……」
 しんみりと言う親父さん。
 親父さんが言うそれとは、ダクネスのあれな性癖の事だろう。
 自由に育て過ぎたから、捕えられたりされたがる娘に育ったってか?
 いや、アレは真性だと思うよ親父さん。

「ララティーナ様は、男勝りですが素晴らしい女性だと思いますよ? カズマ君がいなければ、私は本気でララティーナ様を妻に貰いたいと思っています」
 突然とんでもない事を口走ったバルター。
 この人いきなり何言い出すんだ。
「すいません、ちょっと何言ってるのか分かんないです」
 俺のその言葉を聞き、バルターは、まるで隠さなくてもいいとでも言うかの様に。

「いいんだ。君の方が、ララティーナ様を幸せに出来るだろう。君達の信頼関係はしっかり見せて貰ったよ。君達は、お互いに愛し合っているんだろう?」
「よし、お前ちょっと表に出ろ、貴族だろうが関係あるか、ぶっ飛ばしてやる」
「カズマ! お願い止めて下さい、せめて私がいない所で! 私まで一緒に処刑されます!」
 俺が、背後から俺を止めるめぐみんに逆らい、不死王の手を発動させ、失礼な誤解をしているバルターが、枯れるまでレベルドレインを発動させてやろうとしていると。

「ふふ、ははははっ!」
 親父さんが突然笑い出した。
 どうしよう、今日はもう色々有り過ぎて一杯一杯なんですが。
 これ以上何かあるのはマジ勘弁。

「よし分かった! バルター殿。娘がもし、いきおくれた時は、貰ってやってはくれないか」
 親父さんのいきなりな発言に、バルターが戸惑い。
「い、いえ……。私はそれは、勿論構いませんが、しかし……」
 俺を見て何か言い掛けたバルターを遮り、親父さんが尚も続けた。
「そして、カズマ君」
「ほっ!? へい、何でしょうか?」
 いきなり振られ、俺も戸惑う。
「娘をよろしく頼むよ。コレがバカな事をしでかさない様、見張ってくれ。頼む!」
 このおっさんは何を言うんだろう。

 アレだよな、冒険者仲間としてって意味だよな。
 いやまあそれはいいんだけども、今までとやる事は変わらないし。
 いや待てよ?
 やっぱ良くない、俺はもうジッポ販売で楽に温く生活していけるのだ。
 これ以上お守りをする必要は……。

「……んん? む……。……? 応接間? ……ああ……そうか……」
 ダクネスが、起き出してきた。
 それと同時に、昏睡状態になる前の記憶を思い出したのだろう。
「……む、私はカズマに昏睡状態にされたのか。……なるほど、そして意識を失って無防備なこの私の身体をいつもの様に弄び……!」
「してねえよ、そんな事! って、いつもの様にって誤解を招く言い方すんな! お前が寝てた間に、今微妙な空気なんだよ!」

 それを聞いたダクネスが、周囲を見渡し。
 そして、俺を見てニヤリと笑った。
 何だろう。
 何考えてるんだろう。
 俺は、この屋敷に来た時のダクネスの言葉を思い出す。

 今日の帰りにはお前が死ぬほど後悔する様な事態にしてやる。

 大丈夫だ、問題ない。
 ダクネスがこれ以上何を口走っても問題ない。
 落ち着け、今日の俺は超クールだ。
 落ち着いて対処すれば問題な……

「お父様。バルター様。どうか、今回の見合いは無かった事にして下さい。今まで言い出せなくて隠してましたが……。私のお腹には、カズマの子が……」
「おめー童貞の俺に何言ってやがんだこらあああ! 何もしてないのに俺の子が? 処女のクセに、マリアかおめーは腹パンすんぞ!!」

 シャレにならない事を口走ったダクネスと俺の態度を見て、バルターが可笑しそうに。
「そうか、お腹にカズマ君の子がいるのなら仕方が無い。では、諦めるとします、ララティーナ様」
 言って、バルターが立ち上がった。
 くそ、ダクネスめ。
 眠ってたお前は知らないだろうが、もう余計な事を言わなくても良かったのに。
 失礼しますと、にこやかに挨拶して出て行くバルター。
 ……良い奴だったなあ。
 あんた、ほんとにダクネス引き取ってくれよ……。
 してやったりとにやつくダクネスを見ながら。
 俺は深々とため息をついた。
 しょうがない、もう少しだけ、冒険を……。

 と、俺とダクネスとめぐみんは、一人様子がおかしい人物がいる事に気が付いた。

「孫……。初孫……。ここここ、このワシに、可愛い孫が……っ!」

 ポロポロと泣き出した親父さんに、俺達は三十分程かかってようやく嘘だと納得させた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「まったく……。これでは、素直に最初から見合いを断っておいた方が良かったじゃないか」
「それはこっちのセリフだよ。もうこんな厄介事に巻き込むんじゃないぞ」
「よ、よく言いますね……。カズマが一番引っ掻き回して話をややこしくしたクセに……」
 俺達三人はダクネスの実家を後にして、ギルドへと向かっていた。

 時間はそろそろ夕刻だ。
 今日は領主の使いとやらが来る日のはずだ。
 ギルドでは、まだ宴会はやっているだろうか。
 またアレが変な厄介事を起こしてないだろうか。

 もうジッポ販売と言う権益を得たのだ、あくせく冒険に行く必要は……、
 おっと。
「おいダクネス。今の内に言っとくが、俺、これから冒険に出られる数減ると思うから。でも、お前の親父さんにダクネスがバカやらかさないか見ててくれって頼まれてな。……一人では、冒険行くなよ?」
 その言葉に、ダクネスが額をぴくりとさせた。
「バカな! それでは困る! それでは私の、私の冒険者になった意味が……!」

 そんなダクネスの怒鳴りをはいはいと聞き流し、到着したギルドの中へ。

 そこは酷い有様だった。
 何が酷いって……。

「あら? カズマ、来たのね。おかえりー……。どしたん? みんなその格好は」
「それはこっちのセリフだ、お前こそなんだその頭のヤツは」
 アクアは、速くギルドに行きたくて、そのまま借りてきた執事服やめぐみんのメイド服の事を言っているのだろう。
 だが俺がアクアに言っているのは……。
「ああ、これ? 待ってて、今帰らせるからね」
 アクアの頭に生えていた、小振りのカリフラワー。
 えっと、何がどうしてこうなった。
 いや、帰らせるって……。

 色々突っ込みたい事が多過ぎた俺の前で、アクアが小さな縦笛を吹いた。

 ぴょろー。

 その音色と共に、カリフラワーがヒョイとどこかへ消えた。
 ……おい。
「えっ。今の何? 何であんな物が生えてて、そんで、生えてたアレはどこに消えたの?」
 そんな俺の疑問には答えずに、アクアがギルドの中のカウンターを指差した。

「そんな事より、カズマ! お金受け取って来なさいよ。もう、ギルド内の冒険者達の殆どは報奨金貰ったわよ。勿論私も! もう結構飲んじゃったけどね!」
 何が嬉しいのか、貰ったとおぼしき褒賞の入った袋を開けて見せて、たはー、と頭をぽりぽりとかきながらケラケラ笑う。
 おおう、出来上がってやがる。
 見れば、ギルド内の冒険者達も、皆歩く事もできそうにない程にぐでんぐでんだ。

 俺は酔っ払い達は放っておき、カウンターへと歩いていく。
 隣には、ダクネスとめぐみんも。
 見慣れた受付のお姉さんが、俺達を見て何故か微妙な顔を浮かべた。

「ああ、その……。カズマさん、ですね? お待ちしてました」
 ……?
 受付のお姉さんのその態度に、どうしたんだろうかと疑問に思う。
「あの……。まずはそちらのお二方に報酬です」
 お姉さんは、言って小さな袋をダクネスとめぐみんに手渡した。

 ……ん?

 あれ、俺のは?
 疑問に思っている俺に、お姉さんが困った様に。
「……あの……。ですね。実は、カズマさんの御一行には特別報酬が出ています」
 ……!?
 どういうこった?
「え、何で俺達だけが?」
 俺の、その疑問の言葉に。
 ある誰かの声が響いた。
「おいおいMVP! お前らが居なきゃそもそもデュラハンなんて倒せなかったんだからな!」
 その誰かの声に、そうだそうだと騒ぎ出す酔っ払い達。
 こ、こいつら……。
 俺はこの所苦労続きだった事に加え、今日のバタバタしていた出来事もあり、不覚にもその優しさにジンと来た。
 俺は四人を代表して、特別報酬を受け取る事に。
 受付のお姉さんが、コホンと一つ咳払いをした。

「えー。サトウ・カズマさん率いる一行は、魔王軍幹部ベルディアを見事討ち取った功績を称えて……。ここに、金三億エリスを与えます」
「「「「さっ!?」」」」
 俺達四人は、その場で思わず絶句した。
 ギルド内もシンと静まり返る。
 そして……。

「おいおい、三億ってなんだ、奢れよカズマー!」
「うひょー! カズマ様、奢って奢ってー!」

 ギルド内から木霊する、奢れコール。
 奢ってやろう奢ってやろう!
 あっ、そうだ!
「おいダクネス、さっき、これからは冒険の数が減るって言ったな。あれは間違いだ。これからは、冒険の数が、凄く、減る!」
「おい待てっ! それは困るぞっ!?」

 盛り上がっていくギルド内と俺達四人。
 そんな俺に、申し訳無さそうな表情の受付のお姉さんが、一枚の紙を手渡した。
 それは、○が沢山並んだ紙切れだった。
 ……?
 この世界の小切手か?

「ええと、ですね。カズマさん一行が毎日爆裂魔法を撃ち込んでいた、領主様所有の廃城ですが……。ベルディアが消滅した為彼の魔力でなんとか保たれていた、廃城が崩壊しまして。……まあ、魔王軍幹部を倒した功績もあるし、廃城なんで、全額弁償とは言わないから、一部だけ払ってくれ……と……」

 受付のお姉さんは、そのままそそくさと逃げ出した。
 俺の手元の紙を見て、まずアクアが逃げ出した。
 次いで、逃げ出そうとするめぐみんの襟首を、俺は掴んで離さない。

 俺達の雰囲気で請求の額を察した冒険者達が、みんなそっと目を逸らす。

 請求を見ていたダクネスが、俺の肩にポンと手を置く。




「褒賞三億の、弁償金額が三億六千万。……カズマ。明日は、金になる、強敵が相手のクエストに行こうか」


 ダクネスが、心底嬉しそうに良い笑顔で笑いやがった。
というわけで二話更新

すいません、明日は多分お休みです


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。