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弁護士ハ辛イヨ? 懲戒請求された元依頼人を逆提訴 弁護士会「自己正当化する報復」と反発
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民事訴訟で弁護した元依頼人に「誠実に職務を遂行しなかった」として懲戒請求を申し立てられた奈良弁護士会所属の男性弁護士(78)が、「名誉を毀損(のにそん)された」として、逆に元依頼人に損害賠償を求める訴えを奈良地裁に起こしていたことが6日、分かった。弁護士会は元依頼人の請求を認めて弁護士を戒告の懲戒処分とし、弁護士の提訴は、懲戒請求の取り下げを暗に強要する行為だと認定。弁護士は異議申し立てなどで対抗する構えで、争いが複雑化している。
奈良弁護士会懲戒委員会による処分の議決書などによると、元依頼人の男性は相続で取得した農地を宅地に転用する際、小作権を主張する近隣住民から違約金の支払いを求める訴えを起こされ、平成16年3月、元依頼人が解決金300万円を支払う内容で、大阪高裁で和解が成立した。
ところが23年8月、農地の賃借契約書が見つかり、近隣住民に小作権がなかったことが判明。通常、いったん確定した和解を覆すのは困難だが、元依頼人から相談を受けた男性弁護士は「何とかなるかも」と弁護を引き受け、同10月、解決金の返還などを求めて奈良地裁葛城支部に提訴した。
しかし、24年3月の同支部判決では訴えが棄却された上、「原告は和解の効力が否定されるべき事情を何も主張しておらず、不当利得返還請求権発生の要件を欠き、認められない」と指摘。元依頼人は「(男性弁護士が)勝つ見込みのない訴訟を起こし、誠実に職務を遂行しなかった」として同7月、弁護士会に懲戒請求を申し立てた。
これに対し、男性弁護士は懲戒請求を「誹謗(ひぼう)中傷だ」として同11月、元依頼人に160万円の損害賠償を求めて提訴。現在も係争中となっている。
一方、奈良弁護士会は今年10月、男性弁護士の懲戒処分を決定。議決書では、男性弁護士が「依頼者に有利な解決になるよう努力した事実はない」と認定し、元依頼人への提訴を「自己を正当化した報復的な対応だ」と批判。「弁護士の使命に対する自覚を欠く」と結論付けた。
男性弁護士は産経新聞の取材に対し「元依頼人から名誉毀損に当たる行為を受けたので提訴した」と正当性を主張。懲戒処分に納得しておらず「弁護士会への異議申し立てを検討している」としている。