汚染水:対策盛る報告書公表 トリチウム対応で部会新設へ

毎日新聞 2013年12月10日 20時15分(最終更新 12月10日 21時55分)

 東京電力福島第1原発の汚染水問題で、政府の汚染水処理対策委員会は10日、汚染水の発生や漏れを抑える対策を盛り込んだ報告書を公表した。予定通りに実施された場合、2020年度末に残る課題は、浄化装置で取り除けない放射性物質トリチウムの対応としている。対策委は、トリチウム水の海洋放出を視野に入れた部会を新設し、今年度内に方向性を示す方針。

 汚染水は壊れた原子炉建屋に1日400トンの地下水が流入し、溶融燃料に接触して増加している。対策委が福島第1原発周辺の地下水の動きを解析した結果、大半は、地中に浸透した雨水に由来していた。そこで、報告書は、地下水の流入を防ぐため、建屋周辺を囲む凍土遮水壁を設置するほか、地表を最大2平方キロ舗装することを明記。また、原子力規制委員会の田中俊一委員長から「放射線は舗装ぐらいでは減らない」との指摘を受け、敷地内を除染しながら舗装するとしている。

 このほか、貯蔵タンクの構造の二重化▽放射性物質の吸着などによる土壌や海水の浄化▽津波対策のための防潮堤建設▽建屋破損部分の止水▽トレンチ(配管などが通るトンネル)からの高濃度汚染水の除去−−にも取り組む。

 今回の対策は、国際廃炉研究開発機構(東京)に国内外から寄せられた技術780件を基にしているが、トリチウム除去につながる抜本策はなかった。

 このため、有識者8人で構成される部会では、除去技術の実現性のほか、海洋放出によるさまざまな影響も協議する。対策委員長の大西有三京都大名誉教授は「対策の一部に支障があっても全体として機能する観点でまとめた。だが、何が起こるのか分からない。努力を続けないといけない」と話した。【鳥井真平】

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