学校が確認のいじめ 19万8000件超で過去最多12月10日 18時56分
昨年度、全国の学校で確認されたいじめは前の年度の2.8倍の19万8000件に上り、調査を始めてから最も多くなったことが分かりました。
文部科学省は「いじめが急に増えたのではなく早期に発見しようという教員の意識が高まったためではないか」と分析しています。
文部科学省はいじめや不登校などについて毎年、都道府県の教育委員会を通じて調査しています。
それによりますと昨年度、全国の学校で確認されたいじめは▽小学校で11万7383件、▽中学校で6万3634件、▽高校で1万6274件など合わせて19万8108件に上りました。
これは、前の年度の2.8倍に当たり、文部科学省が調査を始めた昭和60年度以降で最も多くなりました。
都道府県別に見ますと、児童生徒1000人当たりのいじめの件数が最も多いのが鹿児島県で166.1件、最も少ないのが佐賀県で2件となっていて、およそ80倍の開きがあります。
文部科学省は「いじめが急に増えたのではなく早期に発見しようという教員の意識が高まったのではないか。都道府県によって差が大きいのは実態把握の方法などが違うためと考えられる」と話しています。
また東日本大震災で被害の大きかった▽岩手県では前の年度の6.9倍、▽宮城県で6.2倍、▽福島県で4.3倍と全国平均を大きく上回るいじめが報告されました。
これについて福島県教育委員会は「原発事故に関連して多くの児童生徒が転校し生活環境の変化があったことを考えると震災の影響は否定できない」としています。
いじめ最多の原因は
和歌山県教育委員会では去年から「いじめを早く見つける」取り組みに乗り出しました。
平成23年度の調査で確認されたいじめの件数は98件でしたが、メールで子どもたちからいじめの相談を受け付ける窓口を設けるなどした結果、昨年度は前の年度の24倍の2379件と大幅に増加しました。
和歌山県学校指導課の前田成穂児童生徒支援班長は「今回、いじめの確認件数が急増したのは教職員が子どもたちの声に耳を傾けて対応した結果だと思う。悩みを抱えて学校に行けない、学校が楽しくないという子どもを1人も出さないように引き続き取り組んでいきたい」と話しています。
「いじめた側に被害者の気持ち理解を」
今回の結果について、30年余りにわたって中学校の教員を務めた東京学芸大学教職大学院の今井文男特命教授は「警察との連携は必要な場合もあるが、まずは教師がいじめた側の児童生徒に被害者の気持ちを理解させることが大切だ。教師がその能力を身につけ、いじめの醜さや謝罪の必要性に気付かせることができなければいじめは減らないのではないか」と話しています。
自殺の背景は半数近くが理由不明
同じ調査で文部科学省は児童生徒の自殺とその背景についても調べています。
昨年度、自殺した児童生徒は全国で196人に上りますが、その背景を聞いた質問では、いじめや教師の叱責などを自殺の背景とする回答もありましたが、「不明」という回答が最も多く、半数近くを占めました。
遺族からは「調査は実態を把握しきれていない」という指摘が出ています。
「根底に何があったのか把握を」
広島県東広島市の中学校では去年、中学2年の男子生徒が自殺しました。
美術のデッサンで使う野菜を廊下に置いて遊んでいた生徒は、複数の教師から指導を受け、その日の部活動にも参加させてもらえませんでした。
生徒は下校直後に自殺しました。
市の調査委員会は、ことし9月「自殺と一連の指導が関連していることは明らかだと思われる」とする報告書をまとめました。
しかし、今回の文部科学省の調査結果では、自殺の背景は「不明」とされていました。
これについて東広島市の教育委員会は「調査委員会が報告書をまとめたのは、文部科学省に報告してから1か月半ほどあとだったため、当時は『不明』として報告し、追加の報告もしなかった」としています。
文部科学省でも、新たな状況が判明した場合に、追加して報告するよう求めてはいなかったということです。
こうした対応について男子生徒の両親は「調査は子どもの自殺の傾向を把握して防止策を充実させるのが目的で学校、市教委はしっかり事実と向き合って報告する義務と責任がある。根底にはどんなことがあったのかしっかり把握しないと再び同じことが繰り返されてしまう」と話しています。
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