韓国軍の戦時作戦統制権は、朝鮮戦争勃発直後から在韓米軍司令官が握っている。親北朝鮮色が強かった盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は2005年、12年までに韓国に移管するよう要求。当時のブッシュ米政権は「09年に移管を前倒しする」と逆提案してきた。
これに驚いたのが、言い出しっぺの盧政権。米軍が韓国への関与を低下させれば、北朝鮮がその間隙を狙いかねない。1970年代にカーター米大統領が「在韓米軍撤退論」を掲げたことは、今も韓国政府のトラウマとなっている。盧政権は恥も外聞もなく12年4月の移管に落ち着かせた。
その後、北朝鮮の核開発と軍事挑発が続き、韓国では「米国から見捨てられる」という恐怖が一層強まった。親米の李明博(イ・ミョンバク)前政権は米国に要請して、戦時作戦統制権の移管を15年末に延期させたが、朴政権はさらなる延長を求めているのだ。
これに対し、米政府は予定通りの移管を主張したままだ。
10月2日の米韓国防相会談では、移管条件について実務協議を行うことで合意したが、ヘーゲル米国防長官は記者会見で「われわれは何にも合意しておらず、今後も話し合いを続ける」と述べ、移管延長の言質を与えなかった。今回のバイデン氏訪韓でも、移管問題について進展はなかった。
そればかりか、米政府は「自国の防衛に責任を取りたがらない韓国の姿勢にイライラし始めている」(米紙ワシントン・ポスト)という。