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秘密保護法 報道の自由 壁に穴をうがつ決意 12月10日(火)

 報道活動の前に立ちふさがる秘密の壁は一段と高く、厚くなる。穴をうがち広く国民に知らせようとする取材は、これまでとは比べものにならないくらい厳しいものになる。

 私たちはいまそんな覚悟を固めている。メディアで働く者に共通する思いだろう。

 特定秘密保護法は閣僚らが秘密を指定し、公務員からの漏えいを厳罰によって防ぐ法律である。それは同時に、強力なメディア規制法の側面ももっている。

   <メディアを規制>

 特定秘密をメディアが公務員から聞き出すことも処罰の対象となる。25条の「教唆、扇動」の罪である。最高5年の懲役だ。

 未遂や共謀も処罰される。実行に至らなくても、聞き出そうと相談しただけで罪に問われる可能性がある。「内心の自由」を侵害しかねない危険な法律である。

 メディアが取材を始める段階では、何が特定秘密に指定されているか分からない。霧の中でのスタートになる。実際に聞き出した情報が指定されていたら、最高5年の懲役が待っている。これだけでも、メディアに対する威嚇効果は十分すぎるほどだ。

 その前に、取材相手が口を開こうとしなくなるだろう。記者に秘密を話すと最高10年の懲役になるかもしれないとなれば、腰が引けて当たり前だ。

 記者なら誰しも、行政や企業が隠したがっている情報を掘り起こし、報道しようと思っている。それがメディアの使命だからだ。

 スクープはどうすればできるのか。方法はただ一つ。情報を持つ人と信頼関係を結ぶしかない。

 記者の取材に応じる人はほとんどの場合、組織の不正や逸脱に心を痛めている。報道を通じ広く社会に知らせることで、正しい方向にもっていきたいと考えている。内部告発者である。

 告発の意思をひそかに温めている人の気持ちを、記者が取材で共有すること。それ以外にない。

 内部告発は社会が自分の内部に巣くい始めた病根を取り除く手段の一つとも言える。そのルートを秘密法は閉ざしてしまう。

   <何が「不当」かも曖昧>

 著しく不当な取材方法でない限り処罰することはありません。法案に「報道または取材の自由に十分に配慮しなければならない」と書いてあるじゃないですか。報道の自由は侵害しません―。

 政府は国会で答弁した。

 しかしどんなやり方が「著しく不当」な取材に当たるのか詳しい説明はない。処罰するもしないも政府の腹一つ、では受け入れられるものではない。

 報道と権力はそもそも緊張関係にあるのが普通である。報道に「配慮」すると言われても、素直に聞くことはできない。

 一方で政府は「著しく不当」とは判断されない取材方法を国会で列挙した。(1)昼夜を問わず取材相手の自宅を訪ねる「夜討ち朝駆け」(2)頻繁なメールや電話、面会(3)個人的な関係に伴う飲食の場を利用した取材(4)特定秘密を得た政治家への取材―などだ。

 これこそ見当違い、いらぬおせっかいというものだ。

 どんな取材方法であろうと、国民に伝えるべき情報を伝え「知る権利」に資する報道であれば問題とされるべきでない―。参院の参考人質疑で日比野敏陽新聞労連委員長が述べた通りである。

 2005年の個人情報保護法施行を思い出す。報道を制約するものではない、との説明だった。実際には官庁や警察、学校が過剰に反応し、発表資料から固有名詞が削られていった。

   <「知る権利」のために>

 特定秘密保護法も、公務員が過剰反応し何でも秘密にして、「見ざる、聞かざる、言わざる」状態になる可能性が高い。報道を取り巻く環境が厳しくなるのは避けられそうにない。

 けれどひるんではいられない。

 メディアに「報道の自由」が認められているのは、国民の「知る権利」に奉仕するためである。最高裁も1969年の大法廷決定で言っている。

 「報道は国民が国政に関与するにつき重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものである。事実報道の自由は表現の自由を規定した憲法の保障の下にあることはいうまでもない」

 国民の「知る権利」あってこその「報道の自由」である。国民が知るべき情報に迫り、明らかにできないようでは、メディアの存在意義はなくなる。

 そのことをあらためて確認し、これまで以上に力を注ぐことを約束しておきたい。

 私たちはこれからも権力には厳しい目を注いでいく。秘密保護法の運用を点検し、問題が起きたら広く国民に訴えて、政府に是正を求めていくつもりである。取り組みを読者の方々が見守り、支えてくださることを願っている。

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