関西一魅力的な住宅都市をめざして:市長日記

市長、山下真が市民のために奮闘しながら、
思うことを綴っていきます。
          
2013年12月 9日

生駒市立病院の指定管理者の再公募は必要か?

 本議会に中浦新悟市議から「生駒市立病院の指定管理者を再公募することを求める決議」案(生駒市立病院の指定管理者を再公募することを求める決議について(PDF84KB))が提出され、これに樋口清士市議と吉村善明市議が賛同者として名を連ねています。この決議は仮に議決されても法的効力はなく、市立病院の事業に影響を与えるものではありませんが、生駒市議会がこれを賛成多数で議決することは市政の最終決定権者の意思として一定の政治的な意味を持ちます。果たして、この決議案は正当なものなのでしょうか。私は、全く不当なもので、単なる政治的なパフォーマンス若しくは1月の市長選を見越した政局目的の行動だと判断しています。理由は以下のとおりです。

 第一に、本市が指定管理者である医療法人徳洲会と締結した基本協定書(生駒市立病院の管理運営に関する基本協定書(PDF308KB))における指定管理者の取消事由に該当しないと考えるからです。同協定書38条1項4号は、「著しく市民の信頼を損なう行為を行うなど、指定管理者としての適正を欠くと市が認めたとき」には市は指定管理者の指定を取り消すことができると規定しています。この適正性は、今回の指定管理が市立病院の運営を委ねるものである以上、病院運営や医療行為について判断するべきものです。徳洲会グループの幹部が公職選挙法違反で逮捕、起訴されたことは間違いありませんが、同グループが全国で運営する66の病院は公職選挙法違反で強制捜査が始まる以前と何ら変わりなく、現在でも医療を提供し続けています。「週刊ダイヤモンド」の2013年10月26日号によれば、公選法違反事件が明るみに出た時期を含む本年2月から9月の入院患者数は前年同期比で1.1%増、外来患者数も0.3%減とほぼ横ばいで、医師、看護師、職員の数は3~5%増となっています。つまり、徳洲会グループの医療に対する患者の信頼は揺るいでいないということです。また、同グループの救急車受け入れ件数は我が国全体の約3%をも占めています。さらに、同グループの経営状況は、事件発覚前のデータではありますが、平成24年度において、税引き前当期利益が428億円(前年度比17.5%増加)とすこぶる安定しています。このように、徳洲会グループの病院運営や医療行為は現在でも何ら問題なく実施されており、指定管理の取消事由に該当しないことは明らかです。

 もし、今回の事件をきっかけに、徳洲会グループの病院になんらかの大きな問題が生じていて、生駒市立病院の指定管理者として病院運営をしていくことに重大な懸念が生じているのなら、今のままでよいのかを検討しなければなりませんが、何らそのような懸念がないのに、再公募、再公募と騒ぎ立てるのは、何かこれに乗じて問題を大きくし、政治的な目的を達成しようとしているのかと勘繰りたくなります。

 なお、大阪府和泉市は、現在の和泉市立病院の指定管理者を、徳洲会グループの公職選挙法違反事件が明らかになった後に、公募で唯一応募した医療法人徳洲会に指定しました。事件のこと以上に、隣市の岸和田市における岸和田徳洲会病院の医療実績を重視したからです。同市ではもちろん、市議から指定管理者の再公募を求めるような決議案は上がっていません。徳洲会グループが同じく指定管理者として病院を運営している静岡県の榛原総合病院の設置者である牧之原市等でも同様です。

 私は、今回の事件により、徳洲会グループが選挙に関わることがなくなり、また、幹部人事が刷新され不正行為が無くなっていくことにより、グループの健全化が進み、職員の士気も高まっていくことになると、むしろ前向きに捉えています。ただ、徳洲会グループは良くも悪くも、徳田虎雄前理事長のリーダーシップとカリスマ性により、前理事長一代で我が国最大の医療グループに成長し、グループの結束が維持されてきたので、前理事長から次のリーダーへの権力の承継がスムーズに進むかどうかには注意を払っています。

 第二の理由は、決議案が求めるように指定管理者の再公募をした場合に、医療法人徳洲会以上の医療を提供できる医療機関から応募がある見込みはないことです。私は、8年前の市長就任後すぐに、市立病院の指定管理者候補を探すため、学校法人大阪医科大学公益社団法人地域医療振興協会社会福祉法人聖隷福祉事業団など、生駒市や奈良県にゆかりがあり、市立病院の指定管理者足りうる医療機関に相次いで接触し、指定管理者就任を打診しました。しかし、病床数が少なく利益が見込みにくい、医師確保の目処が立たないなどの理由で、いずれも断られました。また、学校法人近畿大学社会福祉法人恩賜財団済生会には、すでに中本前市長の時代に断られていました。そして、止む無く、最後の手段として、指定管理者候補者を民間医療法人も対象とした上で全国公募したところ、医療法人徳洲会だけが名乗りを上げてくれたのです。また、上述のとおり、和泉市立病院の指定管理者公募にも医療法人徳洲会のみしか名乗りを上げなかったことからすると、本市が指定管理者候補者を決定した6年前と現在とで、医療を取り巻く状況はあまり変わっていないことがわかります。

 このように、公立病院の指定管理者を募集する場合、決して「買い手市場」ではなく、医療法人徳洲会以上の医療を提供できる医療機関から応募がある見込みはありません。また、再公募する場合、現在の指定管理を取り消し、徳洲会グループを排除した上で、再公募することになりますから、どこからも応募がなかった場合は、即ち、市立病院の開設中止ということになってしまいます。それを望む市民がどこにいると言うのでしょうか。

 このような状況を知ってか知らずかわかりませんが、「生駒市立病院の指定管理者を再公募することを求める決議」案を提案することは、私には全く無責任な行為に映ります。市議会における同決議案の採決にあたっては、各市議が良識を示してくださることを切に期待しております。また、市民の皆様も是非この問題に関心をお寄せいただくと共に、この日記を読んだ感想を私宛にお寄せください。お願い申し上げます。

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