安倍政権の強引さが目に付いた臨時国会終盤で、社会保障制度改革に関するプログラム法が、与党の賛成多数で成立した。来年の通常国会以降、必要な個別法案を提出する。
高齢者や高所得者に経済力に応じた負担を求め、サービスの重点化、効率化を図るのが柱である。団塊世代が75歳以上になる2025年を見据え、持続可能で安定的な制度確立を目指す。
社会保障と税の一体改革法の成立から1年4カ月、社会保障改革はようやく緒に就いた。政府は丁寧な議論で改革を着実に前に進めていかなければならない。
プログラム法は、政府の社会保障制度改革国民会議が8月にとりまとめた最終報告が土台だ。負担の在り方を「年齢別」から「能力別」に切り替え、高齢世代に偏る給付を「全世代型」に転換する。
医療では70~74歳の医療費窓口負担を特例で据え置いている1割から2割に引き上げる。大企業社員の保険料増も盛り込んだ。
介護では15年度から、高所得者の自己負担割合を2割に引き上げるほか、「要支援1、2」の高齢者向け訪問、通所介護サービスを市町村事業に移行する。
加速する少子高齢化を踏まえれば、給付抑制と負担増は避けられない。社会保障給付費は年3%前後のペースで伸び、政府は25年度には149兆円と12年度の約1.4倍に増えると推計する。
とはいえ、国民生活の「痛み」を伴うだけに、超えなければならない課題は多い。国民会議の検討段階ですでに「弱者切り捨てにつながる」との批判が相次いでいる。本当に必要な人がサービスが受けられるよう、きめ細かな配慮が不可欠だ。
介護サービスの市町村移管でも自治体間で格差が生じる懸念がある。負担の重い自治体には積極的な国の支援が求められる。
消費税率の引き上げで増える税収は、全額社会保障に充てることになっている。しかし、来年4月からの増収分はこれまでの財源不足分などに大半が消える。「消費税率が10%になっても足りない」との声も出ている。
安倍晋三首相は所信表明演説で「受益と負担の均衡がとれた制度へ具体的な改革を進める」と強調した。だが、国民の不安解消に努める熱意が国会審議で伝わってこなかったのは残念だ。
プログラム法では年金制度の抜本改革が見送られ、中長期の課題とともに政府が創設する「社会保障制度改革推進会議」で検討されそうだ。持続可能な制度実現へ安倍政権の本気度が問われている。
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