政府が予算を付け、おカネが動けば、何らかの経済押し上げ効果はある。

 だからと言って、来春の消費増税にあわせた対策が「何でもあり」でよいわけがない。

 今年度の補正予算の骨格として政府が閣議決定した経済対策は、国費だけで5・5兆円、自治体に回る地方交付税の1・2兆円などを加えると、総額7兆円に迫る。

 3%幅の消費増税による年間の税収増をそっくりはき出そうかという大盤振る舞いだ。

 むろん、消費増税をはさむ駆け込み需要と反動の落ち込みをならし、安定的な経済成長へとつなげる工夫はいる。

 所得が少なく消費増税の影響が大きい人などへの給付金は必要だろう。大震災の被災地の復興、福島第一原発の汚染水・廃炉対策も急ぐべきだ。待機児童解消策をはじめ、女性や若者への支援も、持続的な成長には欠かせない。

 しかし、必要性や将来への影響を吟味しないまま、公共事業の上積みによって景気を押し上げようとする色彩が濃い。

 「防災」を掲げ、自治体への交付金を増額する。インフラの老朽化対策や耐震強化は大切だとしても、「代替ルート確保」との名目で新たな道路建設につながりかねない。

 「東京五輪開催を契機とした都市インフラ整備」では、3大都市圏を対象に環状道路の建設や渋滞対策が盛り込まれた。被災地を中心に人手や資材が不足しているのに、である。

 さらに鳥獣被害対策、自殺対策、農家の後継者確保、海上保安庁の警備強化……。それぞれ必要だろうが、とても消費増税対策とは言えない。

 来年度の当初予算案向けに予定していた分を前倒しして補正予算に押し込み、来年度予算は見かけ上、抑え気味にして「財政再建に目配りした」と胸を張るつもりなのか。

 毎年の補正予算が財政悪化の主因だと指摘されて久しい。財政再建への消費増税をめぐる経済対策で、同じ愚を繰り返すのでは笑い話にもならない。

 今回の補正予算では、国債の追加発行がない。景気の持ち直しで、今年度の税収が予想より増えることが大きい。

 なぜ、それをすべて使ってしまうのか。必要な対策を絞りこみ、残った財源で、過去の国債発行による借金を少しでも返すのが筋だ。

 こんな財政運営では、国民が今後の負担増を拒みかねない。そうした緊張感が、安倍政権にはないのだろうか。