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詳しい話はさておいて、トゥスクルへの侵攻をしようなんて国は居ないものだと思っていたが、残ってた。
その名もシケリペチム。
バラバラに争っていたんだけど、何度かの外部からの侵攻を受けて、一時的にまとまったそうだ。
「外部侵攻って、どこだ?」
「皇(オウロ)、本気で聞いてますか?」
ベナウィの言葉に心当たりはない。
「皇弟オボロによるシケリペチム王朝撃滅戦は、周辺小国の伝説になってます」
おめぇか、オボロ、と見ると、オボロも視線を逸らしている。
「そして、タダオ皇によるシケリペチム電撃壊滅戦は、いかなる方策で実施出来たかすら解らないほどの同時壊滅戦法によって、一晩のうちに有力な豪族が消えました」
え? しらねぇぞ?
確かに最短距離を走ったから、変な戦場は突っ切ったけど、戦争なんか仕掛けてねえし。
「その窮状を見かねたエベンクルガが仲介の使者として謁見を求めています」
あれぇ? オボロは確かに戦場を渡り歩いてきたって聞いてるから心当たりはあるだろうけど、俺はなぁ?
んー?
そんな風に悩んでいるうちに、エベンクルガ族の女性が通された。
「ソレガシの名はトウカ、エベンクルガのトウカと申す。この度は謁見を許可いただき感謝する」
一礼をしたトウカに対して、俺も名乗る。
「トゥスクルで皇をしているタダオだ。謁見の件は聞いているが、こちらでは何をするつもりはない。和議などと言われても、要求するものなどないぞ。強いて言うなら安定した国作りを目指して力を合わせてくれとしかいえんな」
その言葉になぜか絶句するトウカ。
「な、な、ならば、なぜ有力豪族すべてを根絶やしになさった!? 少なくとも彼らを生かしてその上で親政していただければ、何も問題はなかったはずだ!!」
「だから、侵略の意志はねぇって。オボロも俺も通り過ぎるのに邪魔だからつぶしただけだ。だから侵略も略奪もしてねぇだろ?」
「なんたる傲慢、なんたる無責任!!」
立ち上がるトウカの両脇に立つのはおキヌちゃんとエルルゥ。
「落ち着いてください、ここで結論を出してしまえば、あなたに思いを託した方々が困りませんか?」
おキヌちゃん、腰が強くなったんだなぁ・・・。
「タダオさんも、悪気があってやったことではありません。逆に何らかの求めに応じないわけでもありません。お話だけでもなされればよろしくありませんか?」
エルルゥもいいかんじだなぁ、内政に関わってもらっていて正解かな?
お茶を差し出されて、座ったところでお茶菓子まで出されて、おどおどと飲み食い開始。
うんうん、こっちのペースだ。
こう言うことを計算で出来るのは、控えのまでにやにや笑いをしている美神さんのお陰だろう。
たすかるなぁ、うん。
どうにか落ち着いたらしいエヴェンクルガのトウカさんは、すっと伏した。
「シケリペチム連合の名代として申し上げる。どうか領土合併の上、親政していただけないだろうか?」
残った農民や民たちによる申し入れ、ね。
確かに天地に流れた民たちからもそういう話があった。
戦乱にあれるシケリペチムを、善皇たるタダオ皇に治めていただきたい、みたいな。
「戦となれば、我が民草を苦しめることになる。田を耕す民草を、ものを作る民草を、人々と共に歩む民草を。その民草を苦しめてまで、俺に立て、と?」
「すでにトゥスクル皇兄弟による親政の噂は、強欲豪族を打ち倒していることから真実へとなっております。周辺小国からも、トゥスクルへの組み込みならば参加したいとも聞き及んでおります。なれば、それに答えるのが皇たる御身の・・・」
興奮して興が乗ったのか、思わず片膝をたてて熱弁するトウカ。
もちろん俺の顔は「めんどくせぇ」だったんだけれども、周囲の仲間は違った。
まず、エルルゥ。
「タダオさん、助けましょう!」って顔。
アルルゥは、
「なんかおもしろそう、ワクワク」って顔。
ベナウィは、
「御自分達で蒔いた種でしょう?」って顔。
クロウは、
「やりやしょう、大将!(オプタル乗り放題でさぁ、ひゃっはー!)」って顔。
カミュは、
「これでトゥスクルと領地隣接で、行き来が楽らくぅ」って顔。
ウルトリィは、
「・・・・・・・・・」やべぇ、読みとったら負ける。
まぁ、カルラだけが微妙な顔をしていたのだけで満足しよう。
で、ここで問題なのは、使者にエヴェンクルガが立っているということ。
この種族は、聞いた話によると「義理」とか「正義」の側に立つことが多く、敵対されると悪い風評が立つのだ。
GS事務所ならまだしも、商売や生活を保障する国が悪評ではたちゆかない。
飲むにしろ飲まないにしろいい返事が必要だってこと。
身に覚えのないことで、悔しいことだ。
「・・・とりあえず、まずは」
正式な申し入れを誰がしていて、誰が代表で、そして、本意がどこにあるかを探らないとまずいでしょ。
「・・・は? ソレガシは・・・・」
「使者を代表者から申し入れられた、だよね?」
「は、はぁ」
「だったら、たぶん、申し入れを了承されたら、どこそこで会談をしたいから連れてきてくれって言われていないか?」
「はぁ、そのとおりで」
思わずベナウィを見ると、すでにクロウに指示を始めた。
「では、会談の場所を下見させていただいてから随行人数を決めたいと思いますので、お話いただけますか、トウカどの」
「は、では・・・」
ベナウィとともに謁見の間からでた彼女を見送った後で、ワラワラと残りのメンバーが集まる。
「罠ね」と美神さん。
「罠でござるな」とシロ。
「・・・だろうなぁ・・・・」と俺。
なぜか周辺で驚く人間多数。
しかし、下見といっているベナウィもどう意見だと思うぜ?
「まぁ、会談に少数出来たところで皆殺し、で、トゥスクルを乗っ取りというのが向こうの筋書きでしょうね」
「戦の世とはいえ、卑怯千万でござるなぁ」
「それが解るあんたらも大概よね」と、俺の背後に隠れていたタマモもあきれ顔。
「じゃ、じゃぁ、もしかして、シケリペチムの和議は・・・・」
「いやいや、全部が嘘じゃないと思うよ、エルルゥ。でも、野心がある奴が紛れているんだろうな」
何となくそう思う。
でも、最悪の状況って奴はいつも考えておくこと、それが美神流。
「でも、結構泥臭くてやりがいある世相よね」
ニヤリと笑う美神さん。
エルルゥはちょっと眉をしかめたけど、短いつきあいでそういう表現の仕方が好きなだけだと解っているらしく、スルーする事にしたらしい。
「で、主様はどうなさいますの?」
「ん? 下見をトウカ殿とともにベナウィにいかせて、罠とか監視の手勢を検挙させて、エベンクルガをこっち側につけるのが第一段階かな?」
「・・・兄弟、回りくどくないか?」
「オボロ、さすがにエヴェンクルガもろとも併合戦争しましたって前歴はおいしくねぇぞ」
「そのとおりですね。出来れば、向こうから大義を奪うだけでもよろしいかと」
ウルトリィの台詞が第一段階のすべてだ。
「で、忠夫君。この先はどうするの?」
おもしろいこと言えよ、という顔だったので、一応発案。
「トゥスクルとオンカミヤムカイの間で、安全な「道路」を建設して、海路から陸路の運送を賄う「運輸」と「護衛」を「トゥスクル(うち)」の生業(ナリワイ)にできないかな、と」
おお、と驚きと喜びの声が響く。
現在の海上運輸の要は「旧富山」=「旧新潟」間のみで、加えるならば「旧会津若松」までのもので、日本海側に集中している。
これにより、交易的にも文化的にも太平洋側は取り残されていると思われるし、ウルトリィの懸念も大きいことだった。
しかし、陸の運輸網は寸断された小国に阻まれて、実に不便だ。
つまり、国の干渉を受けないように輸送するには海しかなかったわけだが、いま、併合されようとしているシケリペチムを飲み込めば、トゥスクル一国を相手に交渉するだけで、陸を縦断できるのだ。
この利点は大きい。
さらに言えば、このルートを確保したい小国も多いだろう。
ゆえに、この国を飲み込むということを念頭に置いた連合がくまれる恐れも大きい。
だから併合なんていやなんだけど、でも、動かしてみれば、この国力と武力を持って守りきることが見せられれば、この国を輸送の手段として利用するもの達が増え、護衛や守護に回る人間も増えるだろう。
とても気の長い話だけれども、俺たちの子供のそのまた孫ぐらいまで続いてくれれば御の字だろうな。
「・・・えーっと、なんでずっと続かないのですか、タダオ兄さま?」
組織って言うのは腐るものだし、既存権益に溺れるバカは絶対にいなくならない。
清廉潔白や有能な両親でも子供がそれとは限らないし、運営がうまくいくとも限らない。
お祭りみたいな政治の楽しさって言うのは、始めた一代目だけが楽しくて、後は惰性になっちゃうんだよ。
つうか、俺はそう考えてるんだ。
そんな風なことを語ると、戻ってきたベナウィが軽く拍手。
「すばらしいお考えですが、それもこれもお子さまを作ってからのことかと。室にふさわしい女性も多いことですから、早々にお子さまをお作りいただきたいものですね」
瞬間、周囲の空気が凍り付いた。
「せ、せ、拙者、先生の子供なら・・・」
前にでたシロが、瞬間に吹き飛んだ。
「「「「「犬は黙ってろ」」」」」
いつの間にか現れたユズハが締め落とす。
「では、タダオ皇にふさわしい、そう、本当にふさわしい正室を決めてから、側室選定に入りましょうか?」
巨大な胸を揺すりながら一歩前にでたウルト。
「いいわよ、でもこの場はふさわしくないわ。ちょっと表でろや」
こちらも美乳を揺すりながら一歩前にでる美神さん。
「ふふふ、勝負とつけなければならないと思ってましたのよ、レイコさん」
「ふふふ、あれ、が誰のものなのかなんて、一万数千年前から決まっていたんだけど、その辺も含めて説明しないとね、ウルトリィ」
「「ふふふふふふ」」
もちろん俺はダッシュで逃げたさ!
死にたくないもの!!
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