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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > うたわれGSもの【本編終了済み】 > 第八話
ここ数日で、いくつの文珠を消費したやら。
マリアの手助けもあって、超加速による事務処理はどうにかこうにかおわった。
そうこうしているうちにオボロたちも帰ってきて、報告が行われたんだが、結構詳細だった。
現在シケリペチムは23に分かれていて、そのうちの13を撃破、と。
「・・・撃破だぁ?」
「おう、兄弟。撃破だ」
聞けば、旅の傭兵(アンクアム)として渡り歩いていたそうだが、行く先々でユズハが女として乞われたそうで、その都度ユズハ自身がボコボコにしたとか。
「いやですわ、お兄さま。ユズハの操はタダオ様のものですもの」
・・・・
ちょっと、エルルゥさん、視線が怖いっすよ?
「まぁ、のりで突っ切ってきたら、逆に有名になって、潰しにきたから逆につぶしてやった」
「おお、若大将、やるじゃねえですか」
「「若様は、凛々しかったです!」」
隠密行動はどうした、オボロ。
「兄弟、隠密行動なんて俺たちにできると思っているところが失策だとおもわんか?」
「開き直ってんじゃねぇよ!」
「俺が知らないと思ってるか、兄弟! カルラウアトレイ建国に関わってたのは知ってるんだからな!」
「俺は国交だ!」
「俺は地域紛争鎮圧だ!」
じっとにらみ合う俺たち。
・・・
「「ならしかたねーな」」
わはは、と笑いあう俺たちの間にものすごい勢いで槍が突き立てられた。
「「うわぁ!!」」
はなれて槍の主をみればベナウィ。
「おいおい、主君に槍を向けるか?」
「ベナウィ、乱暴じゃねえか?」
「この、脳天気王兄弟に現実を知っていただかなければなりませんね」
神をも殺すという視線でみられて、流石にまずいと思ったが、なにがまずいかわからない。
これはもう、逃げるしか・・・。
「・・・逃がしませんよ?」
「兄弟、右に逃げるんだ」
「まて、オボロ。右は行き止まりだ」
「・・・兄弟、俺を信じねぇのか?」
「おまえの香ばしいまでの兄弟愛、信じているこそだぜ」
「「・・・・・」」
「「武っ血犠る!!」」
ここは引けねぇ、男として引けねぇ戦いだ!!
自覚と判断力を失った兄弟を半殺しにした私は、タダオ皇を事務室へ、オボロを牢にたたきこんだ。
「「ベナウィ殿、横暴です!!」」
といってきた従者には、介抱を「すべて」任せる旨伝えると、嬉々として牢へ走っていった。
ええ、オボロ、あなたの貞操が守られることを祈ります。
私はこのままタダオ皇の監視と事務処理ですね。
ええ、今日一日拘束できれば、どれだけの仕事が進むのでしょう。
実に理想的展開ですね。
「皇(オウロ)、政務の時間です」
戸を開いた先には一枚の紙。
そこには・・・・
『ウルトの所にでも行ってくるわ。政務よろしく タダオ』
・・・
「おうろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「タダオさん、ベナウィさんに発見された模様です」
「ありゃ、結構早かったな」
加・速の文珠で山道を走る俺を追想するのはマリア。
流石にシケリペチム縦断コースにはアルルゥやエルルゥは連れて歩けない。
そんなわけで、ムックルに護衛を頼んで、俺はマリアと共に山中を駆けていた。
目的地はオンカミヤムカイ。
翼人たちの都にして、あの「東京」。
どれだけ違う風景になっているか興味と恐怖が半分と行った感じだった。
「タダオさん、正面方向に進軍している部隊あり、です」
「人数は?」
「約300、です」
「・・・有無もいわさぬ速度で走り抜ける、出来るか?」
「可能です」
んじゃま、ダッシュで抜けるか!!
「タダオさん、前方部隊、他方の部隊と戦闘を始めました」
げ・・・・。
めんどくせー。
「このまま直進しますと、前方部隊、主戦場、他方部隊を縦断します」
「なおさら面倒じゃねーか」
「・・・提案がありますがお聞き届けいただけますか?」
「一応聞くけど?」
「このまま超加速で突っ切って、全滅コースということで。」
「マリア、過激になったなー」
「・・・?」
まぁ、それもありか、ということで、マリアをお姫様だっこして加速を行う。
超加速よりは少し遅い「超音速」。
通り抜けた頃には掃除できてんだろうし。
「それで、トゥスクルからこちらまで、一直線できたと?」
「いやー、結構疲れたよ、ウルト」
「タダオさん、もうおろしてください」
「あ、すまんすまん、マリア」
魔王「カオス」の娘、マリアを腕に抱いていたタダオ様が、彼女をおろしました。
無表情を装っていますが、彼女がタダオ様を慕っているのは周知の事実です。
「あ、タダオ兄様!」
「よぉ、カミュちゃん。元気だったか?」
「うん!」
きゃっきゃと喜ぶカミュをみると、タダオ様を怒る気にはなれなかった。
故郷に戻ってきたカミュは、以前のように笑わないようになり、次第に陽気さも失っていたから。
それがタダオ様に会った瞬間に元通り。
この一時だけでもタダオ様に感謝いっぱいだった。
「・・・ですが、直線上にあったすべての諸侯軍を薙払って来るというのはどうなんですか?」
「いやーほら、ぐずぐずしてるとベナウィが仕事持って追ってきそうだったから・・・。」
思わずため息が出ました。
とはいえ、タダオ様が何の頚城もなく私の狩り場に出向いてくれたのは暁光です。
ふふふふ。
「な、なんや、この寒気は!?」
ふふふふふふふふふふふふ。
そこは、見覚えのある建物であった。
いや、忘れようもない建物だった。
「これが御神体を納めた社です」
やしろ? 違うだろ?
これは「事務所」だ。
「タダオ様?」「タダオ兄様?」
あの日、出動しようとしたあの日。
おれはここを目指して出発したんだ。
それで、それなのに途中で神魔合同の襲撃部隊におそわれて。
久しぶりに使った文珠も暴走気味で。
おキヌちゃんと美神さんだけで守らなくちゃって、そう思って、そう思って・・・。
「タダオさん、涙を拭いてください」
差し出されたハンカチで、初めて俺は泣いていることに気づいた。
初めて俺は、焼け付くような望郷に焦がされていることに気づいた。
「タダオ様、申し訳ありません。そこまで心乱すこととは思いませんでした」
いや、謝らないでくれ。
俺は感謝してるんだ。
この建物が無事と言うことは、あのとき二人は助かった、そういうことなのだから。
「・・・中もごらんになりますか?」
「ああ、見せてくれ」
建物に近づいても、あの懐かしい声は聞こえない。
流石に万年単位の時は、人工幽霊でも超えられなかったのだろう。
少しさびただけという驚異的な保存性はなにによるものだろうか、と思ったが、その疑問はさておいて扉を開く。
すると、信じられないほどの軽さで開き、懐かしい応接間に出た。
調度品はそのまま。
ソファーもデスクもそのままだった。
どんな神秘だよ、と思ったが、そういうこともあるだろうと思い、いろいろなものを手に取る。
書類、ファイル、食器、様々なものがあのときを思い出させた。
「タダオ様、お聞きください」
「・・・ん?」
今しばらく思い出に浸っていたかった俺は気のない返事をしてしまった。
「実はこの社、今まで一度も扉がひりたことがありません」
え?
「そして、伝承があります。」
・・・・
「資格者が現れれば扉は開く。そしてそのものを天上の間に導け、と」
「・・・・そこになにがあるんだ?」
「導くことしか伝わっておりません」
・・・そうか。
「それはどこなのですか?」
「それはな、この事務所の二階で・・・」
シロやタマモの部屋で・・・・
そう、この階段を上って、このちょっと焦げた扉を開けば・・・・
タダオ様が硬直しています。
私も隣に立ってみましたが、そこにあったものをみて私も固まりました。
まるで生きているかのような、そんな感覚すら覚えるほどの石像の女性が四体。
私は、その美しさに声を失いました。
「・・・・くくく」
・・・?
「くくくくくく」
・・・タダオ様?
「あはははははははは!!!!」
なぜかタダオ様はお腹を抱えて笑い転げています。
「最高ですよ、最高だって、美神さん、あんたはすげーよ!!」
ばんばん床をたたきながら、狂ったように笑うタダオ様でしたが、それが収まった頃には笑いよりも壮絶な笑顔を浮かべていました。
「ウルト、これは石像じゃねぇんだ」
「どういうことなのですか?」
「これはな、土角結界ていってな、生き物を「霊体」ごと石にしてしまう呪いなんだ」
「・・・・」
タダオさんのその両手が光輝きました。
溢れでる光の中心には二つの光の玉。
「肉体も霊体も石に変えるのろい、その間はな、意識の記憶も石になるんだ」
壮絶な笑顔で光る両手を差し伸べるタダオ様。
「ちくしょう・・・こんな時間の果てまで追いかけてくなんて、嬉しすぎるじゃねーか!!!」
その光が部屋を満たしきったとき、空気が変わりました。
まるで暖かな、大きな獣に守られているかのように。
土角結界、まさかそんな裏技で。
目の前の四人は、しばらく放心していたけど、俺を見つけて・・・・・
「せんせーーーーー!!!」
飛びついてきたのはシロ。
「よこしまさはぁーーーーーん!!」
おキヌちゃんも飛びついてきた。
きゅっと両手で左右に抱えて、後の二人をみる。
「お久しぶりっす、美神さん、タマモ」
「あー、そのー、なによ、あのね・・・」
「ヨ、ヨ、ヨコシマ、その、その、その・・・」
「みんな無事でよかった」
俺の一言で、みんなぎゅっと抱きしめあった。
俺が消えた後、神魔間でのデタントは崩壊しかかったそうだが、逆にそれは反デタント派の思うがままであることを美神さんや小竜姫様が訴え、そして神魔両陣営で意識改革が行われ、どうにかバランスがとれたそうだ。
で、落ち着いたところで俺の行き先を調べれば、なんと一万数千年先。
あまりの距離にめまいを起こした美神さんだったらしいけど、それでも再会することを決意したという。
自分を助けるなんて金額に換算も出来ないような仕事をやってのけた丁稚を誉めなければならない、と。
様々な方法で時間を超える手法が検討され、そして行き着いたのが「土角結界」だったという。
ただし、横島本人はすでにいないため、媒体につかえない。
ではどうする、というところで美神さんが引っ張りだしたのが文珠だった。
少しずつちょろまかした文珠を使って、土角結界を維持し、万年単位の時間を超えようというものだったのだ。
当初から危ない、勝率が低いと反対されたが、美神さんは言い切った。
「私は美神令子よ!」
そして時を超える結界は、都庁下の霊脈に移設され、そして今に至るという。
「しっかし、あの戦いが神話になって、で、横島君が神様? 一万年は伊達じゃないわねぇ」
「すると、拙者は神の弟子でござるか?」
「似合わないからやめてよね、シロ」
「うわー、私のことも載ってるんですかぁ・・・・」
「はい。美神様、キヌ様共に、魔神討伐の神として名を連ねています」
モシャモシャと一万数千年ぶりの食事を楽しむ美神さんたちと、それを覗きにきた女官たち。
物見高いんだろうけど、まぁ、自分所の宗教の神様の実物が気たってんだから見に来るわな。
「で、横島君は今なにしてるの?」
「えっと、新潟あたりある国の王様やってます」
「・・・まじ?」
「まじです」
「で、酒池肉林?」
「そんな金なんか無い貧乏国家っすよ」
「・・・お金があったらやるってことですか?」
「まさか、こっちで面倒見てる妹分たちに殺されるっすよ」
「「「「・・・・・」」」」
あれ、なんかすごい視線でみてる4人。
つうか、ウルト、カミュ、なんでそんな目で俺を見るんだ?
「えー、ウルトリィさんでしたっけ?」
「はい、美神様」
「・・・これ、こんな感じ?」
「はい、お会いした頃から何一つ変わりません」
「そう、苦労してるわね」
「ですが、そちらの方が、より一層・・・」
「そう? でも、こっちの方が先約だから」
「いえいえ、この手の事は先手必勝かと」
「「ふふふふふふふ」」
こえー、なんかすげーこえーーーー!
「タダオ兄様、なんかエルルゥ姉様たちと食事してるみたいで楽しいですね?」
「・・・横島さん、そのエルルゥさんってどなたですか?」
「あー、こっちにきて俺を保護してくれた人のお孫さんで~」
「女の人、なんですよね?」
「・・・うん」
「・・・きれいな人、ですか?」
「かわいい妹分やなぁ」
「そう、ですか」
なんとなく黒い雰囲気鎮火成功。
「先生! また修行したいでござる!!」
「おう、いい相手がごろごろしてるからな、みんなに紹介してやるぞ」
「本当でござるか!!」
きゃうんきゃうんと喜ぶシロをなでつけつつ、手の届く範囲にいたタマモもなでる。
「・・・なによ」
「なんでもねーよ」
「・・・何でなでるのよ」
「何となく」
「・・・ふん」
いやがっちゃいねーのがかわいくて、ゴシゴシなでてしまった。
本当はいやなんだけど、あんたのためだから我慢するという対語もかわいいもんだ。
「あ、あの、わたしカミュ。お友達になってくれる?」
「え、ええ、喜んで。私はキヌ。おキヌって呼ばれてるわ」
「了解でござる。拙者はシロでござる」
「・・・わたしはタマモ」
わーいと喜ぶカミュをみて和むおキヌちゃんだったけど、動く度に揺れる胸をみて、徐々に黒くなった。
「横島さん、不埒なことは・・・」
「してません!」
「・・・・信じてますよ?」
がぁぁぁ、本格的にこえーーーー!
でもなつかしーーーーー!!
とはいえ、この四人のことを、どう説明したものかと内心頭をひねっていた俺だった。
(5,310文字)