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海洋交通網という形で、同盟の生命線はつながった。
季節により船がでれないことも多いが、陸送を考えれば遙かに重いものを運べるものとして、きわめて有用だった。
まぁ、マリアの協力もあって、わりと頑丈な大型船を作れたのも大きな要因だと思う。
でも、そんな船でもでることが出来ない嵐もある。
それは、そんな嵐の仲で流れ着いた。
数十人の惨殺死体と、その中心にいる若い女性。
すごくホラーな話だったけど、力の強い種族であろう事、そして彼女が「ナ・トゥンク」の奴隷であろう事が知れたらしい。
ドコをどうやって流れてきたのやら・・・。
執務室で「幹部」が集まって首をひねる。
どうしたものか、と。
まず、ナ・トゥンクとは国交を結ぶつもりはない。
戦争まではしないけど、捕虜交換とか囚人交換なんかするつもりは毛頭無いのだ。
ゆえに、誰かを殺した奴隷とはいえ綺麗で若くてすてきなお姉さんを売り渡すようなことを・・・・・
「タダオさん?」
「タダオ皇?」
あ、あれ? なんだかこわいよ、エルルゥ、ウルトリィ?
「タダオさま?」
「にーにー?」
「タダオさーん?」
うわ、ユズハ、アルルゥ、カミュ、なんだかみんな黒い黒いよ!!
どうして?!
「兄弟、それは本気で言ってるのか?」
「・・・聖上、もう少し周囲への配慮があるべきでしょう」
「総大将、そりゃぁないでやしょう?」
・・・なんだよ、みんなおれがわるいのかぁ?
「・・・タダオさん、今も昔も変わらないです」
あれぇ? マリアまでオレを責めてるのかぁ?
「あーもー、美人と仲良く! これ大方針!!」
年若くして國を継承した若者、それが目の前のヒトだった。
タダオ皇の名は、剣奴の立場でも知っているもので、周辺国でも注目されている。
そんな彼は、謁見の間に引き出された私にこう言った。
「お咎めなし。食事も寝床も世話するけど、出ていきたければそれでもいい。路銀は多少もたせるけど、どうする?」
「・・・はぁ?」
思わず聞き返すと、彼は苦笑いだった。
「ほら、誰を殺したとかそういうのって、うちの國の人間じゃないし。」
「ですけど、一応、大量殺人ですのよ?」
「この時代、戦争やってればそのていどは、ほら?」
「・・・あのですねぇ、ほんきですの?」
「うん。美人と仲良く、これ大方針」
「ぷっ」
思わず笑ってしまうと、それに併せて彼も大笑い。
なんでしょう、こんなに気持ちいい笑いは久しぶりですわ。
このあと、ごたごたとするのかと思いきや、彼の周囲の人間全員が「賛成」を表明して許可されてしまう。
思わず、視線を「彼女」に絡めると、自然と笑みがこぼれていた。
「・・・でしたら、おやといいただけませんか?」
剣奴を自称する彼女、カルラさんは謂われのない施しを受けるつもりはないけど雇ってはほしいと言った。
戦場でお役に立ちましょう、と言うので、試験をすることになった。
相手はベナウィさん。
そして結果は、ひきわけ。
兵士の方々も、オボロさんたちも大いに盛り上がり、その場で酒盛りになってしまいました。
浴びるように呑むみなさん。
ドンドンつまみを持ち込む女中さんたち。
ドコからか話を聞いてきた「色町」の女性たちも現れたり、町の出店まで現れたり・・・。
もう、なにがなにやら。
「なんじゃ、いまごろ祭りか?」
「なにしろメデタい、めでたい!」
ふらりと現れたクーヤさんやオリカカン皇まで混ざっての大宴会になってしまいました。
「あ・・・・あるじさま・・・。このお酒は何ですの? 初めて呑みますわ。」
「ああ、これは、出来た酒を蒸留して強くしたものだ。」
「では、この色付きは?」
「ああ、寝かし酒の試作品」
「では、この果実の香りは・・・?」
「蒸留酒に果実をつけ込んだものだ」
「・・・なに、この楽園? ここは酒飲みの桃源郷なの!?」
色町は女遊びの町のように言われていますが、実際は「酒」の試験場であり新しい流行の試験場でもあるのです。
ここで人気のあるものは、商品として売り出され、他の國でも出回ることになるのです。
「タダオ、この果実酒・・・すぐに流通してくれ!!」
「タダオ皇、この蒸留酒、うちの國でも作らせてくれ!!」
クーヤさんやオリカカン皇がタダオさんに飛びつきます。
もちろん、流通商品なので許可など・・・・
「ん? いいぞ。いろいろとみんなで作って、美味しいものにしようぜ」
「「おお!」」
・・・もう、なんでうちの特産品を!!
「あのなぁ、特産品だって胡座をかいてちゃぁ、まずくなる一方だよ? それよりもライバルがいた方がいい」
「らいばる、 ですか?」
「好敵手、競い会う相手だよ。相手の工夫を取り入れて、さらに上をゆく、そうしていけば、ドンドン美味くなる、美味い酒になる。そっちのほうがいいよな、みんな!!」
「「「「「おおおお!!!!」」」」」
もう大盛りあがり。
クーヤさんやオリカカン皇も交え、その日は朝方まで酒盛りでした。
その後、真剣な立ち会いの後は酒盛りになると言ういやな流れが出来たことを記録します。
交易網締結を祝って、クッチャケッチャに行った。
もちろん、いろいろと歓迎してもらったけど、驚いたのはその風景だった。
なんつうか、こう、見覚えがあるつうか。
いや、言葉を濁すのはやめよう。
東北、それも会津若松、そのへんだ。
この湖がそれを物語っている。
つうわけで、トゥスクルは新潟山形南部周辺になるだろう。南限は越後湯沢、クッチャケッチャとの國境周辺となると、村上周辺になるだろう。
・・・そのへんはマリアと話しているうちに判明した。
ちなみにオンカミヤムカイは東京・関東中心、ナトゥンクは茨城・日立あたり、クーヤの所は富山・石川なんかのあの辺らしい。
ということは、俺たちの通商範囲って北前船か?
「そうともいえます。」
今回の船旅にはマリアとカルラ、そしてウルトリィがついてきている。
カルラとマリアは完全にボディーガードというか何というか。
そしてウルトリィはヨモルとして、オンカミヤムカイの皇女として、といえる。
まぁ、堅苦しい話を抜きにすれば、酒盛りに耐えるトップ+マリアを連れてきたんだけど。
その期待に応えて、クッチャケッチャでは数々のモサを押さえて勝利し、ばったり倒れた男たちを、悠々と宿舎に放り込んだりした。
マリア、ありがとう。
その甲斐あってか、クッチャケッチャから二人を嫁にほしいと後々まで申し込みが続くのだが、その辺は未来の話。
一度、トゥスクルの港で酒と食料と工芸品を大量に補給した船は、クーヤ達の國、クンネカムンに舳先を向けた。
が、補給したのは物ばかりではなく、ヒトも補給した。
第一のコース、皇族薬師エルルゥ。
第二のコース、皇族森の母アルルゥ+ムックル。
第三のコース、皇兄弟オボロ。
第四のコース、皇女カミュ
第五のコース、皇姉妹ユズハ。
もう、全員集合状態。
まぁ、みんなと旅行なんて言うのもなかったし、いいか、と思ったが、ベナウィから色々とみんな宿題を負っているという。
外交以外にもあるのかいな、とは思ったけれど、せめてみんなを外に出すいいわけだろうと俺は思った。
三日ほどたってそこに到着した。
シャルポコル族の國、クンネカムン。
港にはヤジウマと國兵とそしてクーヤとサクヤが見える。
が、それ以上に目立つのは、全高14mほどのロボだった。
なんつうか、見た目、究極の魔体っぽいかんじのロボ。
「マリア、あれは?」
「イエス、タダオさん。あれは究極の魔体をイメージして作られた、対神魔兵器です。」
「・・・うわぁ・・・」
「もちろん、ドクターカオスの作品です」
「うわぁ、まじかよ」
で、このロボがクンネカムンの力の象徴となって、周辺国ににらみを利かせているという。
「よくきたな、タダオ!」
ニコヤカな笑みとともに抱きついたクーヤを撫でると、太陽のごとくの笑顔をかえしてきた。
「ようこそおいでくださいました、トゥスクル皇よ。」
何人もの諸侯が代わる代わるに握手を求める中、一瞬の呼吸の中でオボロが前に出た。
双剣で何かをはじく。
俺も霊気で盾を四枚ほどだした。
クーヤを守りつつ、五枚目で狙撃主を叩く!!
「オボロ、五番目の諸侯を押さえろ、そいつが誘導役だ」
「おう!!」
「マリア、捕縛網投擲、あの建物だ!!」
「イエス、タダオさん」
「アルルゥ、ユズハ、ムックルと一緒に船への道を確保」
「ん!!」「はい!!」
「エルルゥ俺とともに。巻き込まれた諸侯の手当を」
「はい!!」
「(ウルトリィ、カミュ、流れに乗って船まで撤退。後詰めを頼む)」
「「(はい)」」
仲間が散ったところで、クーヤを離すと、彼女は細かく震えていた。
「・・・すまぬ、我が民を率いている力が足りぬばかりに・・・。」
「ん? もしかして同盟破棄とか考えてるのか?」
「・・・それも視野に入れている」
「あのなぁ、クーヤ。将来有望な美少女とお友達になったんだぞ? 俺がそんなの気にするかって言うんだ。」
「な・・・・」
「大きな国で、右手のすることを左手がしらねぇっつうのはよくあることだし・・・・」
それに。
「兄弟、こいつは面倒だぞ。」
引き立てられた襲撃者は、どうみてもシャルコポル族ではなかった。
そして、襲撃の手引きをした諸侯は、その場で毒を煽り自害して見せた。
「襲撃者は、98。22%の割合でかの国の人間です」
マリアの報告を受けて俺は肩をすくめる。
「つまり、俺たちが仲がよすぎるのを嫉妬した奴らの陰謀ってわけだ。」
「・・・くそぉ、なめおって」
チロチロと黒い炎を見せるクーヤは叫んだ。
「このものの一族を駆り立て・・・ふにゃ」
「まてまて、この諸侯だって、やむにやまれぬ事情があるかもしれねーだろ?」
「バカをいうな! 同盟締結の努力をすべて・・・」
「よく調べるんだ。それからでも遅くない。」
「よかろう、この命を守ったのも、同盟の血脈をつないだのもソナタだ。」
なんとか怒りを飲み込んだクーヤだった。
クーヤは感謝していた。
激情のままに「皆殺し」を命令していれば、確実に後悔し、そして國に楔が打ち込まれただろうから。
諸侯関連を詳細に調査したところ、彼の家族が軟禁されていることがわかったのだ。そう、彼は身内を人質に取られ、無理矢理いうことを聞かされていたのだった。
そしてことが露見する前に服毒し、累計の罪をかぶったといえる。
それを知ったトゥスクル陣営はかなり怒ったが、それはクンネカムンに対してではなく、事を仕掛けた襲撃者にであった。
事ここにいたって、襲撃者は「ノセシェチカ」の者だと自白したからだ。
クーヤはそれを聞いて進軍開始を宣言しようとしたが、再びタダオがそれを止める。
声を荒立てて怒りを露わにするクーヤであったが、先ほどの感謝を思い出し、素直に怒りを飲み込んだ。
「まぁ、背後関係は理解したから、な」
そういって、タダオは木札を持った。
「おい、不埒者。名は何という?」
「・・・エンビュウでございます。」
「おまえの母はなんと呼ぶ?」
「・・・・・・・・」
心乱された顔になった男の顔を見て、さらさらと何かを書く。
「おまえの母の手料理で一番好きなものは?」
「!」
「おまえの初恋の女の子の名は?」
「・・・・・・」
「おまえが初めて女の子の裸をのぞいた川の名は?」
「・・・かんべんしてくれーーー!!!」
さめざめとなく男の首の下には、男の過去がさらされていた。
母にはタリランカイとよばれ、手料理のフムリーカナが好きで、初恋の人は名前も知る前から振られていて、その原因が川遊びをのぞいていたからで、その川の名前が・・・・
「タダオ、この遊びに何か意味があるのか?」
「この男が子供の時にどこにすんでいたのか、どの國に忠誠を誓っているかがわかるだろ?」
「・・・・・!!!!」
クンネカムンの誰もが驚き、そして息をのんだ。
そこに書いてある情報をあわせれば、背後の國がしれたからだ。
「・・・エルムイ、か」
「なぜ、あの小国が・・・」
つぶやく家臣団に対し、ロン毛の若い男が叫びを上げる。
「・・・決まってるだろ、僕たちをバカにしてるんだよ!! 大いなる神に寵愛を受けた僕たちに嫉妬して逆恨みして、そして僕たちを・・・・ぶけらっ!!」
最後の一言は、タダオの拳でつぶれた。
「あのなぁ、バカ。おまえは何で自分達が被害者のよういいうんだ? 一応いっとくがな、攻撃を受けたのは俺たちだし、仕返しするのも恨みを晴らすのも俺たちなんだぜ?」
呆然とこちらをみているロン毛をにらむ。
「自分の恨みと國の考えを一緒にするな!! 國を一族をクーヤを思うなら、誰もが笑って過ごせるようにみんなを説得しろ!!」
ぽーと赤くなっは頬を両手で挟んでうなずくロン毛。
「ふふふ、小僧も大それた事がいえるようになったのぉ。」
響きわたる声に、シャルコポルすべてが頭をたてれる。
そしてトゥスクル勢もそれに併せて礼を取る。
が、マリアだけは直立不動であったし、タダオも笑顔でそちらを向いた。
「なんだよ、じいさんも機械の体か?」
「ん? ああ。肉体の損傷が激しくての。修復の手だてがなかったので、一時保管じゃ。」
「・・・なるほど、そのボディーの充電でていっぱいでマリアは放置か?」
「人聞きの悪いことをいうな、小僧。いつか帰ってくるであろう小僧への贈り物じゃ。」
お互いの拳のこうをあわせたカオスとタダオはほほえみあった。
「とりあえず、体の修復はした方がいいか?」
「そうじゃのぉ、とりあえず修復はしてもらわんと改造もできんしのぉ。」
「なんだよ、自分の体も改造か?」
「さすがに陽身体にはできなかったからのぉ。」
「魔装術を研究してなかったっけか?」
「ありゃ、契約の神魔が遠くなってしまってのぉ、つかえんのじゃ」
「・・・結局何年たってるんだ?」
「そうじゃのぉ、一万二千年といったところかのぉ?」
「・・・遙かな過去どころじゃねーな。」
「神話の過去じゃ」
「じゃ、やっぱり、ウィツなんたらってのは・・・」
「あのときの話じゃ」
「はぁ・・・そうか、やっぱなぁ・・・。」
ところどろこ聞き捨てならない単語が出回っていたが、礼のまま頭を上げられない周囲であった。
とりあえず、クーヤと俺とマリアは、機密エリアと呼ばれるところにいった。
そこは、さすがドクターカオスともいえる開発空間で、その中央に記憶よりも老いた姿のカオスの身体があった。
文殊で解析すると細胞の限界は超えているのにも関わらず無理矢理正常化コピーを続けている状態で安定している。
つまり、正常と思われる細胞の元情報を若くすれば、労せず正常化するはずだ。
加えて脳情報を別の記憶漕にでも移せれば、もっと上手くいくだろう。
基本的にカオスの失態は、記憶と判断力のバランスを考えずに脳開発したことにあると美神さんも言ってたし。
とりあえず、身体をむりやり文殊で三〇〇歳頃のものとして安定させて、急いで自分の改造をさせたところ、夜半過ぎには肉体で再登場となった。
「ふむ、おもしろいことになっておるのぉ。」
ニヤリと笑うドクターカオス登場で、クンネカムンは國を挙げての大騒ぎになった。
彼らが大いなる神とあがめてきた「そのもの」が、生きた存在として光臨したのだから。
その「そのもの」が、皇の存在を認めその補佐をすることを宣言したものだから、神に認められた國だとか、神とともにある國だとか大爆発。
が、その騒ぎにもう一つ騒ぎが加わる。
トゥスクル皇タダオが、神たる「ドクターカオス」の友であり、恩人であり、彼の愛娘の嫁ぎ先だというのだから。
クーヤ皇ばんざーい、タダオ皇バンザーイ、御神ばんざーいといった具合だ。
で、そんな宴の最中、港での事件を聞いたカオスは笑った。
事の真相は、大国?のトゥスクル・クッチャケッチャ連合と国交を結ぼうとしたクンネカムンへの牽制だというのは間違いないだろうと彼も語る。
しかし、もう一枚裏があると彼は言う。
「今のところ、エルムイがクンネカムンに逆らう意味はない。逆に、クンネカムンに庇護を求めるべき状態じゃ」
「あー、一応そっちの絵も考えちゃいるんだがなぁ・・・。」
首を傾げるクーヤに二人は苦笑い。
「皇よ、よく考えるのじゃ。今この國に勝てるのはどこじゃ?」
「ノセシェチカかトゥスクルであろうな。」
「では、聞こう。この國に戦いを挑んで得をするのは?」
「ノセシェチカ、しかあるまい」
「ならば、この陰謀の陰にノセシェチカありと動けばよい。どちらにしても敵対する國ならば問題あるまい。」
「カオス、そりゃーちょっと短絡的じゃねぇか?」
「小僧、お主とて、黒幕がエルムイとは思っておるまい?」
「まーなー。」
驚くクーヤを、優しく撫でる。
「クーヤ、一応今、エルムイ国境以外の街道を、トゥスクルで見張ってる。」
「・・・なぜじゃ?」
「直接ノセシェチカが来れば面白い。でも、たぶん、ノセシェチカに脅されてヌンバーとハップラプがクンネカムンを攻めるだろう。」
「・・・理由お考えねばなるまいか?」
「そうだな、考える時間ぐらいは稼げるはずだぞ」
「そうか・・・・」
にっこり笑うタダオの横で、カオスはニヤニヤしていた。
「小僧もずいぶん成長したものだな?」
「そりゃ、毎日苦労してるしな。」
真剣に考えるクーヤのとなりで、二人の男が酒を酌み交わす。
二晩ぐらいは稼げるだろうな、とタダオは笑っていた。
ナ・トゥンクにて武装蜂起の一報が入った。
クッチャケッチャ皇からの竹簡で、陸路二日の時差だった。
とりあえず、皇たちの胸の内にとめおき、正面のバカな光景に集中することにした。
なんというか、こう、脳味噌が痛くなる光景だった。
陰謀とか計略とか、そういうことを考えた、考えていた自分たちの方がバカに思えるほどに。
エルムイ・ヌンバの国境沿いの街道町で「それ」はいた。
大量の騎馬を従えた、ノセシェチカ皇カンホルダリ。
素手で腕を組んで「そこ」にいた。
「いきたる伝説の神の力を持つ俺が、復活した神に勝負を申し込む!!」
「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
バカがいた、ものすごいバカがいた、すんごく力強く言い切れるほどのバカが居た。
誰もが白い目で見ているところで、ドクターカオスに耳打ちされたタダオ皇は頭を抱えていた。
何かを会話していたが、あきらめるように肩を落とす。
大きなため息をついた後、タダオ皇は大きな声を上げた。
「偉大なる神にして我が友と戦おうとは思い上がりも甚だしい!! 魔王とまで呼ばれた我が友の手を煩わせるまでもなく、我がソナタを下してしんぜよう!!」
目を見開く男は声を上げた。
「貴様の名は!?」
タダオ皇は煌めく宝石のような輝きを見せて答える。
「我が名はタダオ、魔王の友であり神魔の友、そしてクーヤ皇の友、トゥスクル皇タダオだ!!」
爆発的な歓声におされるように飛び上がり、まるで宙を舞うように男、カンホルダリの目の前にたつ。
少しふるえたカンホルダリはすごみのある笑顔で答えた。
「いいじゃねーか、いいじゃねーか!! おれはこういう戦いを待っていたんだ!!」
馬から下りたカンホルダリは、鎧のすべてを脱ぎ去って、薄紫色の水晶を握りしめた。
「ほぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
発揮された気は収束し、水晶をイメージしたかのような鎧姿となったカンホルダリは高々と笑う。
「この姿となって勝てるものなどいない! さぁ、大地の味をかみしめろ、タダオ皇!!!」
血塗れ、ズタボロで地をはうカンホルダリ皇に、息も切らせていないタダオ皇はため息をつく。
「おまえなぁ、もうちっと歯ごたえがあってもいいんじゃないか? この程度ならユズハにも勝てんぞ?」
思わず視線がユズハに集中するが、彼女は否定せず恥ずかしそうにしていた。
「大体だな、その「弓式水晶観音」の基本は仏教への帰依とその修行の成果にあるもんだ。心得違いをしているから収束が甘くなるんだよ」
目を見開き、そして見上げるカンホルダリ。
そこには苦笑いのタダオ皇。
「自分が強くなるのに國の喧嘩は関係ねえだろ? 修行ぐらいはつけてやるから、周りに喧嘩を売るのはやめろ、な?」
タダオ皇から差し出された手を握り、ゆっくりと立ち上がるカンホルダリ皇。
「タダオ皇、いや、師匠。失われた一族の技の復活に力を貸してほしい」
ゆっくりと頭を下げるカンホルダリ皇にタダオ皇は頭を上げさせて握手を再びした。
「喧嘩の後は仲直り、で、いいんじゃねーか?」
「・・・かんしゃする。」
これほど皇が単純なら、背後にいるのがノセシェチカでは絵が描けない。
どこにバカが居るのかと意図を手繰ってみると、意外な名前がでてきた。
一番最初にでてきたのはハップラ、でその背後にいたのがシケリペチム皇ニウエであった。
むろん、彼が納めていたことの策略が歪んで生き残っていただけなのだが、それなりに責任をパップラ・エルムイに追わせる形になった。
エルムイはクンネカムン領へ組み込まれ、ハップラはノセシェチカに組み込まれた。
残ったヌンバーは、どちらかに組み入れられたい打診をしていたが、第三国が居るという利点をカオスが説いたため、どちらも受け入れを拒否、どっちつかずの國として残ることになってしまった。
ことが収まり、シケリペチムの動向を調査するという任を背負って、仲間が別れた。
オボロ・ユズハに加え、竹簡を陸路で持ってきたドリィとグラァをシケリペチム調査に向かわせ、ウルトリィとカミュをクンネカムン周辺情勢報告と言うことでオンカミヤムカイへ一時帰国させることになった。
残りはクッチャケッチャへ急行し、ナトォンク対策に当たることになる。
カオスによる動力船に乗り換えた俺たちは、一路クッチャケッチャに急行した。
「(ナ・トゥンクの反乱組織「カルラウアトレイ」・・・ね。)」
竹簡に書かれた内容をみて、タダオは眉を寄せる。
反乱組織の台頭とカルラの登場、そして名前の相似。
どうも合いすぎている。
(8,702文字)