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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > うたわれGSもの【本編終了済み】 > 第四話
「では、また明日」
「はい、また明日」
彼女の部屋の前で分かれた。
さて、オレの布団という奴は、一人用なのに一人で使うことが少ない。
もちろん、女を引き込んでいるわけではなくて、ムックルとかアルルゥが忍び込んでくるからだ。
エルルゥとかユズハも時々くるので油断がならない。
で、本日もだれかいるなぁ、と思っていたのだけれども、見知らぬ女の子でした。
見た目は実においしそうなのですが、心の防壁にブチ当たる年齢であることは間違いないとジャスティスが叫んでいる。
・・・くそぉ・・・もったいない・・・・。
まぁ、それはさておき。
このまま同じ布団というのもおもしろいんだけど、さすがに朝まで起きないと不味いので、ちょことっと起こしてみることにした。
「ちょいちょい、おきたんなさい。」
「んーん、あと五年~」
ちょっとおもしろいと思ってしまいましたよ、ええ。
「おいおい、五年も寝たら、でぶでぶだぞ?」
「んひゃ! でぶでぶはいや~」
とびおきた少女は俺にすがりついた。
「で、おまえさんだれ?」
「ふぇ?」
びっくりしたように周囲を見回した後、自分を指さす。
「もしかして、カミュのこと見えてる?」
うんうん、健康的で張り裂けんばかりの胸も見えてる。
「えーっと、その・・・・」
わたわたとあわてた後、いくつかの印呪と口結を切る。
むー、異端だけど透過呪法だな。
『よっし、これでおっけー』
「我が命にしたがいて、霊気を散らしたまえ、急々如律」
瞬間で透過呪法が破れる。
「・・・え?」
「で、おまえさんはだーれ?」
「あははははは」
少女の名前はカミュ。
ウルトリィ殿の妹で、今回の訪問について来てしまったそうだ。
ただ部屋までは準備されていなかったので、人がいなさそうな部屋で昼寝していたらそのまま夜まで寝てしまたそうだ。
彼女の術の気配を感じてウルトリィ殿が寝所にやってきたところで発覚した。
まぁ、事は荒立てるつもりはないよ、と視線を送ったのに、イタズラっぽい表情で視線を返すウルトリィ殿。
「・・・御寝所に無断で侵入した罪、私がすべておいますので、どうか寛大な処置をお願いいたします。」
まるで首を差し出すかのような行為に眉をしかめるオレ。
「だめだよ、お姉さまは悪くないんだよ!? カミュがカミュがわるいこだったんだよぉ!」
錯乱する少女を撫でつつ、ウルトリィ殿に頭を上げてもらう。
「こっちも、この程度のことでガタガタ騒ぎたくないさ。だから、カミュちゃん。きみもお客人としてお相手するから、ゆったり楽しんでいってね?」
「え、いいの?」
「ああ、だから御招待に応じてくれるかな?」
「・・・うん、ありがとう、おにいさま!!」
きゅっとオレの首に腕を絡みつかせたカミュはうれしそうに笑っていた。
糸のような目でオレに視線を絡みつかせたウルトリィ殿はうれしそうに微笑んでいた。
・・・こえーよ、ウルトリィ殿!!
朝食に新しい仲間が加わりました。
オンカミヤムカイのウルトリィ様とカミュちゃん、そしてムントさん。
毒味がない、と大きく不満をならしたムントさんでしたが、タダオさんがいなしてしまい、最後には温かいご飯がおいしいという感想まで引き出すことに成功しています。
恐ろしい人です、タダオさん。
「あたたかいご飯っておいしいねぇ~」
「そうね、カミュ」
「カミュっち、いつも冷たいの?」
「うん、いつもは毒味で待ってるうちに冷たくなっちゃうんだぁ。」
「そりゃ残念だな。暖かいものは暖かいうちに食べないとうまくねーだろ?」
「まぁ、冷たくてもうまい料理もあるだろ、兄弟」
「そりゃそうだがな、やっぱり暖かい飯をみんなで食ったほうがうまい」
「・・・ま、そうだな」
「姐さん達が作ってくれる携行食もうめえですぜ」
「そうだな、あれのおかげで斥候をいやがるものが減ったな。」
「大将、前のがまずすぎでさぁ。」
「そんなに不味かったんですか?」
「姐さん、ありゃ、食べもんじゃありやせん。燃料ですぜ、もしくは材料、いや原料ですぜ」
「あれを食べ物というのは料理に対する侮辱でしょう」
「ベナウィまで・・・」
「そりゃ実感こもってるな」
「ヤマユラを攻めた兵達が下ったのは、あの料理を食べたからだという報告書もあがっています」
「・・・エルルゥ、冷たくてもうまい料理を研究しよう」
「・・・ええ、タダオさん、がんばります」
そういえば・・・・・
タダオさんから聞いて試したあれ、使えないかしら?
あれならお弁当を暖めることもできるし、火の始末もいらないし。
うん、いいかもしれない。
ちょっとタダオさんに相談してみよう。
始祖の血を強く残すカミュは、交流というものを知らない。
常に敬われ、常に上におかれ、常に監視されていた。
しかし、この國にきてからは、実に伸び伸びとしている。
実際の年齢よりも子供っぽく、朗らかに笑うようになった。
ユズハちゃんやアルルゥちゃんと共に遊ぶうちに、本当に自然に笑うようになったのだ。
あんな笑顔は、私か父上しか見たことがなかっただろう。
ここでは誰もが、みんな、カミュの笑顔を知っているのだ。
「いかがですか、この國は?」
「・・・素晴らしいの一語に尽きますわ、エルルゥさま」
この國の皇の身内にして掌中の珠と噂される少女、ヤマユラのトゥスクルが孫、エルルゥ。
暴走しがちな皇の手綱を握る、いわば「室」の筆頭ともいえる存在。
これだけの権力を掌中にすれば、女であっても権力に狂おうものなのだけれども、彼女は違った。
皇を守り、妹たちを導き、仲間を守っていた。
それが城内ばかりではなく、近隣の村村や山村までが彼女の庇護の範囲で、事故や病・戦で親を失った子供達を皇都にあつめ「子供のいえ」という施設で育てている。
そのことを賛美すると、彼女は真っ赤になって否定する。
「あ、あれは、タダオさんの発案の続きなんです」
皇の発案というのは町の改造と色町の設立だった。
これにより子供を胡乱なところに売り飛ばすような愚か者を防止しようとしたのだけれども、穴を見つけたのはエルルゥさま。
売り飛ばされるのは、売らなければならない理由があるはずだ、と。
そこで、親のいない子供や捨てられた子供を集め育ててしまおうといいうのがエルルゥ様の発案だった。
國には何の利もない、と家臣団は猛反対したが、皇は大賛成だった。
曰く、
「戦死年金出費軽減、教育底辺上昇で民意の底上げ、識モウ率上昇で城内の事務仕事が軽減!!」
ベナウィ殿の賛成も相まって、開設された「子供のいえ」は、「一時預かり」という制度も追加され、極めて盛況だった。
「子供のいえ」には、いくつかの年齢の階層がある。
幼児乳児の階層、幼児よりちょっと上と少年よりちょっと下の階層、そして少年と青年一歩手前の階層。
階層により彼らの日常が変わる。
幼児乳児は遊ぶのが仕事。
一段上に上がると文字と計算を習う。
もう一段あがると、望むものを学べる。
武を書を商を。
そして学び終えた子供達は、商の家や國へ働いて恩義を返すというわけだった。
もちろん、そのまま恩義を果たさなくてもいいのだが、それまでに彼らに行われる教育がその気持ちを許さない常識を植えることになる。
体のいい洗脳だが、民度が高いと言い換えればそれも通る話だ。
「みんなが、おなかを空かせず、幸せになれるための知識があれば、努力が報われると思うんです。」
政治的な陰謀や野望ではない。
この國の姿勢は、すべてここから始まっているのだ。
だから、村人達も町人達も増長しないし不満も程々しか上申しない。
治水や治山に関しては極めて細かな対応があるけれど、減税や嘆願などは驚くほど少ない。
それは今の生活に多くの者が満足がいっているおかげだろう。
武を唱えず、利を唱えず、和を持って國をなす。
まさにこの國の名「トゥスクル」にふさわしいあり方だろう。
一月にわたる滞在を終え、オンカミヤムカイの一行はこの國を後にした。
穏やかな時間ばかりではなかったが、それでも実りある時間だったと誰もが思っている。
手探りで國をよくするために頑張ってきたことが他国の人に誉められるという事自体は、彼らにとってうれしいことだったから。
國境を脅かす國はなかった。
隣国クッチャケッチャからは建国の際に使者が送られ、こちらからも使者を出していた。
ナ・トゥンクとは交流の意味なしとして、使者交換はしていないが伝令は送っている。
ノセシェチカやクンネカムンには使者は送っていないが、密偵が探りにきているのでわざわざ知らせるまでもないことだと割り切った。
問題は隣国にして常に内戦を繰り返しているシケリペチムであった。
当初、使者を送る予定だった皇「ニウエ」が謀殺された後、かわりに皇となるべき人材がおらず、我こそは「皇」と名乗る者が多すぎて対応すらできないのだ。
で、その内戦で敗残した兵を受け入れたり、村ごと逃げてきた者達を受け入れたりしていれば、土地が足りなくなるというものだった。
シケリペチムとの協議など無駄なので、隣国クッチャケッチャと相談したところ、互いの領地の中間に共同入植地を作ろうという話になった。
クッチャケッチャにもナ・トゥンクから逃げてきた者達が多く、その扱いに困っていたそうだ。
トントン拍子で話は進み、共同入植地「天地」が開かれた。
事実上、離散者を匿うことにしたという政治的に悪手に近いものだったが、逃げ延びた者達にとっては正に「天地」であった。
どちらの國の庇護下にもない代わりに納税義務がないといういい加減な形だったが、煩雑な仕組みを嫌うクッチャケッチャ皇にもこれ以上の事務手続きの増加を拒むトゥスクル皇にも好評であった。
この「天地」開発を期に、クッチャケッチャとトゥスクルの関係は一気に深まった。
いわば一対一対等な国家として連合を組もうという話になったのだ。
軍略的に見れば、お互いに政情不安な國に対する盾を得られるし、通商的に見れば国外との安定的な販路の確保はプラスにこそなってもマイナスにはならない。
では、ということで国家間連合を組もうと話を進めたところ、全く別方向からの参加希望打診があった。
クンネカムン、であった。
仮称「北海隣接連合」(クッチャケッチャの領土は海に面していないが、天地が面しているのでアリと名付けた)であるのならば、同じく海に面している自国にも参加の権利はないか? というか一枚かませろというものだった。
クンネカムンもまた、ノセシェチカという政情不安な國を小国を挟んで対面しており、その負担に関しては同じだ、相談させろや、ということらしい。
使者にやってきた少女は、涙目でそんな口上を言っていた。
少女の名はサクヤ。
クンネカムン皇の側付きで、公私共に信頼が置ける少女であると書状に書いてある。
アムルリネウルカ・クーヤ皇の身内扱いだという。
「ん~。突然『い~れ~て~』つわれてもなぁ?」
「タダオ皇、ちと砕けすぎではないか?」
「はぁ、私もそう申し上げたのですが、聖上は「実際にあえば了解してくれる」と言い張るばかりで・・・」
謁見の間で、この上もなく緊張感のない会話をするタダオとオリカカン皇、そして半泣きのサクヤであった。
「ヨモルとしては、同じ神をいただけない國との国交は、どうかと・・・・。」
トゥスクルのヨモルとして着任したウルトリィも難色を示している。
「あれ? ウィツァルネティアって神さんをみんなで祭ってるんじゃないの?」
「・・・タダオ皇、そうではないのだよ。オンヴィタイカヤンを神と祭っていて、ウィツァルネティアを悪しき神としているのだ。」
「・・・そりゃ、仲悪いだろうなぁ、宗教が原因じゃぁ。」
『そなた、興味がないにもほどがあるぞ!!』
清廉なる少女の声が響きわたる。
サクヤの隣に突然現れた仮面の子供が、タダオ皇を指さす。
「トゥスクル皇タダオ!! そなた、真なる神話がこれから語られようというのに、なにも関心がないとは何事だ!?」
「・・・いや、だってよ。神族とか魔族って、ここぞと言うときには役に立たないぜ? あいつらは自分たちの戦いに精一杯だから、助けることも手助けすることもできないし。」
「ぬ、まるでソナタは神に出会ったことがあるようではないか?」
「そのへんは、まぁ、ご招待の後だな。アムルリネウルカ・クーヤ皇」
「うむ。」
「「「「「ええええええええええ!?」」」」」
目の前にいる少女を皇として扱い、少女は受け入れたのだった。
応接間にはいつものメンバーがそろった。
オレ、オボロ、ベナウィ、エルルゥ、ウルトリィ、そして同盟調印のためにきていたオリカカン皇とその妹君。
とりあえず、妹君は年少組に預け、乱入者であるアムルリネウルカ・クーヤ皇及びサクヤを「とりあえず」招待した形になっている。
「まぁ、一応秘匿になってるけど、オリカカン皇とは共同事業があって、その一環なんだよ」
「しっておるぞ、虐げられし集の保護であろう? その観点では我が国自体、シャルコポル族自体が保護を受けたいぐらいじゃ。」
仮面をとった美少女皇クーヤは、実に悲痛な表情だった。
「・・・そんなの?」
とウルトリィに視線を向けると、彼女も悲痛な表情。
「はい、シャルコポル族は言われ無き迫害を受け続けています。」
「謂われなど解っておる。あがめる神が違うから、直接我々が神に寵愛を受けた歴史があるから、解放者などといっても放置されてきた歴史があるから嫉妬しておるのじゃ」
思わず上を向いて悩んでしまった。
オンカミヤムカイ総本山のあがめる神は解放者として言い伝えられているが、実際のところは「征服者」なのだと言うことをウルトリィから聞いた。
なにを征服しかたといえば、「魔神の権能」を、だ。
つまり、ウィツァルネティアとは「魔神殺し」の勇者なのだそうだ。
ご理解いただけただろうか?
魔神を殺した勇者、だそうだ。
・・・そりゃ、直接寵愛はないわな。
なにしろ、神様になる前に超未来にとばされちゃったんだもの。
で、シャルコポル族の神もまた「人間」だったことは間違いないだろう。
トゥスクル内には少ないけどクッチャケッチャの領内にある遺跡を見に行ったら、未だ生きているものも多かったし。
もちろん、なにに使う道具かなんて解らなかったけど。
それはさておき、神話なんてものは正面から見据えているうちはいいけど、寄りかかるとろくな事がない。
そういうものなんだけど、理解は求めらえないだろうことも解っている。
だから、宗教に関する話はやめよう、と提案しておいた。
「そうだな、この話をし始めると私も冷静ではいられない。」
「そうですね、宗教戦争をしようと言うのではないのですから」
とりあえずの同意に頭を下げて、オリカカン皇に視線を向ける。
「ともあれ、長所と短所を見つめましょう」
「そうですな、出来ないと一概にまとめるのも愚かしい」
「ふむ、ソナタ等の聡明な判断を期待する。」
三皇の話はしばらく続くのだった。
結論としては
「まいっか、種族の差とかうちには意味ないし」
「そういえばそうだったな。我が国でも大した意味はない」
「「あははははははは」」
という我が皇とオリカカン皇の大らかな判断によって仮調印をすることになってしまった。
一応、我々が抱えている政情不和国などお話にならないほどクンネカムンが抱えている敵対国は危険で脅威であったが、クーヤ皇から渡された書状をみて驚くタダオ皇。
「マジ、生きてんのかよあの爺さん!!」
「おお、やはり「どくたー」の仰るとおりであったか。」
うおーーーーー! と興奮する皇をみてエルルゥ様がクーヤ皇にささやく。
「その「どくたー」という方は、女性ですか?」
「? 干物のような爺だぞ?」
解せない、そういう顔のエルルゥ様でした。
「タダオ皇、その「ドクター」なる人物は、お知り合いで?」
「ああ、長いこと会っちゃいないが、結構深いつきあいの爺さんだよ、オリカカン皇。」
うれしそうに書状を読んでいたタダオ皇は、笑顔を苦笑いに変えていった。
「・・・聖上、なにか不具合でも?」
「ん? ああ、まぁ、な。」
どくたーなる人物は、長命のためすでに年の大半を「ボケ」た状態で暮らしているそうだ。
で、年に一度ぐらいの割合で正気に戻り、皇などの相談を受けるそうだ。
今年の正気はすでに終わっており、次は来年を待たなければならないそうだ。
知人には会えるが、しばらく会いに行けないそうだ。
「そのかわりに、これを持ってゆけと言われてな。」
彼女らが持ち込んだ木箱。
それを見た瞬間、タダオ皇が瞳を輝かせる。
「おいおい、まさか・・・。」
「「どくたー」から、「充電できれば動く」とのことじゃ」
「よっしゃーーー!」
それは輝く拳、それは輝く背光、依然一度だけみたタダオ皇の力。
『充・電!』
箱に向けて光を放つと、木箱のふたが内側から吹き飛んだ。
藁などと一緒に人影が飛び上がる。
その人影は、タダオ皇の目の前にたった。
むろん、オボロも私も武器は突きつけていたが、相手はなにも感じていないようだった。
「久しぶりだな、マリア」
「おしさしぶり・です。横島さん」
「ここではタダオで通ってるんだ。」
「では、タダオさんと・呼ばせていただきます」
「ああ、よろしくな、マリア」
警備の緊張などどこ吹く風で、握手をする二人。
「紹介しよう、彼女は「マリア」。オレの友達だ」
「マリアともうします。よろしくお願いします」
にこやかな二人に毒気を抜かれた周囲でしたが、私は逆に緊張しました。
タダオ皇を、彼女は「ヨコシマ」と呼んだのです。
タダオという名も珍しいですが「ヨコシマ」という名が付くと恐ろしいことが解ります。
タダオ皇の不思議な力、「ヨコシマ」の名。
そして「丸い耳」。
否定できない証拠がそろってしまいました。
思わずそのことを声に出しそうになったところで、視線に気づきます。
そう、ヨモル、ウルトリィ殿が私を刺すような視線でみていたのです。
彼女の目は彼女の意志を伝えます。
だから私は黙りました。
これを口にしてはこの國がなくなってしまうものだと直感したから。
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