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【社会】

ワタミ過労死 遺族提訴 東京地裁 1億5000万円賠償請求

 居酒屋チェーンを経営する「ワタミフードサービス」元社員の森美菜さん=当時(26)=が入社二カ月で自殺したのは過酷な労働環境が原因として、両親が九日、同社と親会社「ワタミ」、ワタミグループ最高経営責任者(CEO)だった渡辺美樹参院議員ら当時の役員や管理職三人を相手取り、約一億五千万円の損害賠償を求める民事訴訟を東京地裁に起こした。

 提訴したのは父豪(つよし)さん(65)と母祐子さん(59)。

 訴状などによると、森さんは二〇〇八年四月にワタミフードサービスに入社。神奈川県内の京急久里浜駅前店に配属された。慣れない大量調理を任された上、連日の長時間勤務と未明に及ぶ残業を強いられ、一カ月の残業時間は国の過労死認定基準を超える百四十一時間だったという。

 休日もボランティア研修や創業祭など会社行事への参加、渡辺CEOの「理念集」の暗記などを迫られ、店舗勤務の約二カ月で業務が二十四時間なかったのは四日間だけだった。森さんは五月中旬に適応障害を発症し、六月十二日にマンションから飛び降りた。

 森さんの死は昨年二月に労災認定され、両親は会社側に謝罪と損害賠償、再発防止策を求めてきた。

 ワタミは「社員が亡くなったことは悲しく、重く受け止めている。ご遺族とは調停で過去の裁判例にのっとり和解を提案したが合意できなかった。訴状内容を確認し誠実に対応する」とコメントした。

◆企業責任認めず調停決裂

 今回の民事提訴で、請求額の一億五千万円の算定には、ワタミ側の対応に抗議する高額な「懲罰的慰謝料」が含まれている。過労死裁判では異例といい、原告側の玉木一成弁護士は「労働環境や制度を改めるより損害賠償を払った方が安い、という考え方を改めさせたい」と説明した。

 「体が痛い、体がつらい、気持ちが沈む、早く動けない、どうか助けてください」。美菜さんは亡くなる一カ月前、日記に書き付けていた。店長にも不調を訴えたが、会社側は配慮せず、むしろ勤務は過酷さを増した。

 労災認定後、ワタミ側は両親に「一般的に法的責任を百パーセント認めた場合の満額に近い」(玉木弁護士)賠償額を提示。その一方で、従業員への安全配慮義務違反など会社の責任については一切認めず、美菜さんが自殺するまでの状況説明もなかった。昨秋、会社側が賠償額の確定を求めて名古屋簡裁へ申し立てた調停では、労災認定された内容を否定する発言もあったという。調停は計五回の協議の末、決裂した。

 父の豪さんは「何を反省したのか分からず再発防止策も期待できない。娘を追い込んだ原因を明らかにし、企業が若い人を使いつぶさない社会になるよう、力になりたい」と訴えた。 (柏崎智子)

 

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