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第十五話
聖者とは、神聖にして犯さざるもの。
基本、だれか、神に認められた存在だ。
その神の権力が盤石である限り、揺るぎ無い力だろう。
勇者とは、時代が求めた新たなる神のような存在だ。
これは閉息された世界を打ち破る、いわば神の先兵。いや、人の集合意識が望んだ光の意志ともいえる。
そして、英雄とは。
人の世界が気づかぬウチに壊されそうになったときに現れる防御反応。
人の「世界」が望む最高の防御成功への「テンプレート」。
そこを目指していくつもの人が走り、その終着点に至ることがまれながら、確実に世界のバックアップを受けることになる存在。
成功の因果反転に至るために、あらゆる犠牲を強いられる存在。
結果に至るまでの生活・仲間・家族・仕事すべてが世界の犠牲となる。
そして、結果によって得られたゆがみがその英雄の存在自体に襲いかかるとき、世界はなにもしない。
そう、使い終わった道具には用がないからだ。
だから、忠夫の転移は、一種救いだったのだろうと私は考える。
これで、世が世ならば、ワシのように神格を押しつけられて無理矢理神の僕にさせられているだろう。
再会から一晩が経ち、ワシとの対話を終えた忠夫は、苦笑いで向こうの世界に居を移すことを宣言した。
忠夫のご両親は「そうか」と理解を示したが、美神令子たちはかなり不満を感じているようだった。
「あ、あの、私もそちらに行ってもいいでしょうか?」
おずおずと手を挙げたのは魔鈴めぐみ。
「え、魔鈴さん、なんで?」
忠夫の問いに笑顔の彼女はいう。
白魔法研究のため、と。
英雄の一人であった彼女にとって、その言葉は今や足かせでしかない。
研究者としての彼女にとって、この世界に留まるぐらいなら、研究がしやすく、世界からの逆バックアップのない世界に行きたいぐらいなのだ。
これが表向きの理由だということは、美神令子以下、多くの女性に分かりやすい話であった。
「じゃ、私も行きたいかな?」と言葉を漏らしたのは狐の嬢ちゃん。
このままこの世界にいたら、狩られちゃいそうだし、と笑顔。
確かに、政府関係者がオカルト関連での実績として、いつか刈り取る算段をしていると聞いたことがあるのぉ。
「あ、あの、本気、ですか?」
元幽霊の嬢ちゃんが、不安そうにいう。
自分も行きたいが、美神の嬢ちゃんや養父母をおいていけん、そういう話じゃろ。
その感覚は人として正しいがな、そんなものを擲って進む勢いも必要じゃぞ?
「氷室さん、私は、横島さんが世界を渡ったと聞いた瞬間からこのことを考えていたんです」
「おキヌちゃん。やっぱりこの世界は人間より過ぎなのよ」
その気持ちは、怪異の親子にも伝わっていた。
「横島さん、私たち親子も同行できませんか?」
「にいちゃん・・・」
すぅっと深呼吸して、周囲を見回す。
「向こうも向こうで残酷やし、後悔するで?」
「でも、ヨコシマがいるじゃない」
間髪入れず言った、そんな狐の嬢ちゃんの台詞が全てじゃろう。
忠夫も観念しおった。
「一応、後悔したら帰れるように、ゲートは定期的につなぐから」
なんでも、向こうの世界の師匠とともに、ゲートをつなぐ事ができるようになったという。
本当に企画外じゃな、おぬし。
「つまり、定期的にそちらに行って、新作ソフトを買いに行けるという事じゃな?」
「そんな理由で、目をキラキラさせんなや!」
ずいぶんと消極的な理由で、忠夫が帰ってくることが決まった。
こちらに来ることになった魔鈴めぐみさんとの話の内容が本当なら、忠夫もこちらにいるほか無いだろう。
とはいえ、白魔術、いや、精度や効力を見れば、すでに魔術の領域を越えていることは確実。
でも、魔法に至っていない。
なんという封印指定。
忠夫が何度も思い直すことを勧めたことがわかるというかなんというか。
が、あの、魔力を食べるだけで回復させる料理には恐れ入った。
心底感謝。
セイバー、アルトリアも泣きながら食べてたし、士郎も感動していた。
士郎の料理を至高の存在としていたアルトリアの意識を砕くものになったほどだった。
そういえば・・・
「桜、落としたの?」
「ばっちりです、姉さん」
憑き物が落ちたかのような様子に、逆に不安を感じた私だった。
タダオがこちらの世界を選んでくれたのは純粋にうれしかったけど、もっと素直に「お姉ちゃんが大好きだから」って言ってくれても良かったのに。
というか、もっとハッキリ言うべきだったんじゃないかしら?
「イリヤ姉さん、戻ってきたら一成がすぐに電話がほしいって」
「もう、甘えんぼね、一成って」
「いやいや、未処理で逃げ出した仕事の件で、きっちり話を付けるって言ってたぞ?」
あ、あれー? 全部押しつけたはずなのに。
まぁいいわ、あいつ優秀だから、文句言ってきたら禅譲だっていえばいいし。
ふふーん、お姉ちゃんは無敵なんだからね?
「あんなぁ、イリヤ姉。ちょっと痛い目あった方がええで?」
なによ、タダオ。
愛しいお姉さまが苦しむところが見たいの? そうなの? そういう趣味なの? だったら少しだけ見せてあげてもいいわよ? タダオがお姉ちゃん教に入るなら、ね?
「まだそんな邪教ネタ引きずってるんかぁ?」
もう、シロウですら枢機卿なのに。
「あ、イリヤさん。先輩はその宗教を脱しました」
「そうです、イリヤスフィール。シロウはイリヤスフィールのものではありません」
・・・え?
どういうこと、シロウ?
「・・・あー、その、なんだ・・・」
シロウ、おねえちゃんと話をしましょう。
「その、すまん! イリヤ姉・・・」
OHANASHI、の時間だよ、シロウ。
「い、いだだだだだだ! イリヤ姉、腕はそっちに曲がらない!!」
ダイジョウブだよ、シロウ。
シロウの体は、剣でできているんだから・・・・
ねっして・たたいて・うちなおせば、わたしのだいすきなシロウにもどるよ。
「むり、むりだから、いたいから!!」
ふふふふふふふふふふ。
まぁ、なんつうか、押しの弱いシロちゃん、成仏しろよ?
思わず拝んだ上で、タマモと魔鈴さんを屋敷の空き部屋に案内した。
シロちゃんは何人か俺が連れ帰ることを予想していたらしく、大部屋に一晩泊めて、後の部屋は翌日以降に準備するつもりだったらしい。
「じゃ、横島さん、いろいろとお話聞かせてくださいね」
「ヨコシマ、これからよろしくね」
にっこりほほえむお姉さま系美人と経国系美少女。
やっべー、眠っていた煩悩が溢れるぜ。
「あー、一応、こっちの世界じゃ『衛宮』だから、名前で呼んでくれない?」
ちょっと戸惑うふたりだったけど、にっこり微笑んでくれた。
「じゃ、よろしくお願いしますね、忠夫さん」「よろしく、タダオ」
うん、美人さん増加で俺の人生も・・・
「うわーーーーん、タダオーーーー!! おねえちゃん、おねえちゃん、シロウに裏切られたぁーーーーー!!」
いきなり大上段からのおねえちゃんダイブをカマス、我が義姉、イリアスフィール。
その裏切りに一枚かんでいるだけに、内心申し訳ない思いがしないでもない。
つうか、この状況、まずくね?
「あんな、イリヤ姉。俺もシロちゃんも、なにがあってもイリヤ姉の弟なんやで?」
「でもでも、シロウってば、シロウってば、お姉ちゃんより桜とかアルトリアを選ぶってぇ・・・・」
うわぁ、そこまで言ったか、シロちゃん。
ちょっと男前やな。
「それでもな、イリヤ姉。それでも家族の絆は切れん。どんなに人が間に入っても、どんなに世界を隔てても、家族の絆は切れん。それはイリヤ姉もしっとるやろ?」
涙で塗れた顔を、俺に押しつけて、小さくうなずくイリヤ姉。
まぁ、なんつうか、時間が解決してくれるやろ?
「・・・ねぇ、タダオ。タダオもお姉ちゃんの弟なのよね?」
「そうやで、イリヤ姉」
「・・・タダオも裏切る?」
「え?」
「・・・ナイスバディーにだまされて、お姉ちゃんを裏切るのかしら?」
「ええええええ!?」
がっちりと喰らいついた両腕が離れない。
「さぁ、じっくりとお話しましょう、タダオ?」
「ま、ま、まてくれ、魔鈴さんとタマモにこの世界の話をやな・・・」
「タダオも、オネエチャンヨリ、オンナヲトルノ・・・?」
やば、壊れる寸前や。
「あ、あの、よろしければ、今までの忠夫さんの話を聞かせてもらえませんか? 主に姉弟の愛の話を中心に」
「エ?」
「こっちの常識も知りたいから、お願いできる?」
ナイス、ナイスすぎるぜ、魔鈴さん、タマモ!!
「・・・ウ、ウン、わかった・・・」
どうにか機嫌を直したイリヤ姉のお姉ちゃん節は、正直胃凭れしました。
でも、まぁ、男を見せたシロちゃんへの援護攻撃や、ちょっとぐらいがんばるって。
ということで、今晩も頑張れ、シロちゃん。
俺も、「お姉ちゃんの座椅子」としての運命を受け入れるからな。
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かえってきました!
そして、当然のように喰われてました>シロちゃん。
ナームーw
2012/04/03 OTR移転版 + 小修正
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