中間貯蔵施設 建設受け入れを要請へ12月7日 18時14分
福島県内の除染で出た土などを保管する中間貯蔵施設について、環境省は、候補地の1つの双葉町で「施設を設置できる」という評価をまとめ、専門家の検討会で了承されました。
これで候補地の3つの町すべてで施設を設置できると判断されたとして、環境省は今月中にも地元の自治体に対し、建設の受け入れを要請する方針です。
中間貯蔵施設について、環境省は、東京電力福島第一原発周辺の双葉町、大熊町、楢葉町の3つの町にそれぞれ建設する方針です。
7日は東京都内で専門家の検討会が開かれ、双葉町の候補地について、環境省は、地盤のボーリング調査の結果、「施設を設置できる」と評価したことを報告しました。
そのうえで、除染で出た土や廃棄物を保管する「貯蔵施設」や、草木や汚泥を焼却して量を減らす「減容化施設」など各施設の配置案を示し、了承されました。
これで環境省は、すでに審議された大熊町と楢葉町を含め、候補地の3つの町すべてで施設を設置できると判断されたとしています。
検討会のあと井上環境副大臣は、「きょう示したものを具体的な案という形にまとめ、地元に施設の受け入れの要請をなるべく早く、少なくとも年内にはさせていただきたい」と述べ、今月中にも地元の自治体に対し、建設の受け入れを要請する考えを明らかにしました。
しかし、3つの町は「調査を受け入れただけで、建設そのものは受け入れていない」という姿勢をこれまで示していて、今後、建設の受け入れを巡る交渉は、難航することが予想されます。
環境副大臣「年内には受け入れを要請」
検討会のあと、井上環境副大臣は「技術的には立地が可能だという結論を頂き、政府として施設の配置案を取りまとめることができたのは大きな一歩だ」と述べました。
そのうえで、「きょう示したものを具体的な形にまとめ、地元に施設の受け入れの要請をなるべく早く、少なくとも年内にはさせていただきたい」と述べ、今月中にも地元の自治体に対し、建設の受け入れを要請する考えを明らかにしました。
また国は、中間貯蔵施設の建設が受け入れられれば、地権者から必要な用地を買い取る方針ですが、建設の受け入れを要請する段階で、買い取りの費用を示すかどうかについて、井上副大臣は「まずは施設、計画全体を自治体や地域に受け入れていただくことが第1段階で、そういった個別のことはそれからということになる。地元の要望があれば、その段階で住民にしっかり説明したいと思っている」と述べました。
双葉町長「判断は国の報告後に」
福島県双葉町の伊澤史朗町長は、「調査を受け入れたときに結果が判明した時点で、国が町と議会に事前に報告するという話があったので、報告を受けていない状況で受け入れを判断するのは難しい。それをきちんとやっていただいてからの判断になる」と述べました。
大熊町長「要請後に対応考える」
福島県大熊町の渡辺利綱町長は、「双葉町の調査も終わり、これで立地予定の自治体の足並みがそろったことになる。しかし、ボーリング調査を受け入れただけで、建設を受け入れてはいないという町の姿勢は変わっていない。正式に受け入れ要請が来て、具体的な条件などが示された時点で、町としての対応を考えていく」と述べました。
住民には不信感も
自宅のある地区が中間貯蔵施設の建設予定地になる可能性がある福島県双葉町の住民は、十分な説明がないまま計画が進められていることに不信感を募らせています。
福島県いわき市の仮設住宅で妻と母親の3人で避難生活を続けている齊藤宗一さん(63)は、福島第一原発からおよそ3キロの場所にある双葉町の自宅のある地区が中間貯蔵施設の建設予定地になる可能性があります。
施設が出来ると、ホウレンソウを栽培していた先祖伝来の畑も、慣れ親しんだ自宅にも帰ることはできなくなると、齊藤さんは考えています。
しかし、一時帰宅のたびに畑も自宅も荒れていき、長期間帰るめども立たない状況のなかでは、建設は受け入れざるをえないという気持ちが強まっているといいます。
ただ、国が中間貯蔵したあとの最終処分の計画などについて具体的な説明がないまま、建設が進められようとしていることに不信感を募らせています。
齊藤さんは「国の説明会で、『最終処分場はどうするのか』と聞くと、あいまいな返答ばかりで建設ありきで進んでいる気がする。本当はしかたがないという話はしたくないが、帰りたくても帰れないのだから残念だが、建設はしかたがないと思っている。私たちが新天地で生活していくための補償や支援などの具体策を早く示してもらいたい」と話していました。
仮設住宅に避難の住民は
福島県双葉町からいわき市の仮設住宅に避難している住民からは、放射線量が高く、長期間、ふるさとに戻れないため、中間貯蔵施設の建設は受け入れざるをえないといった声が多く聞かれました。
70代の男性は「ほかの地域に設置することはできないのだから、双葉町が受け入れるしかない。家族も含めて、もう町に帰ろうとは考えていない。建設するのであれば、廃棄物が漏れたりするようなことがないようにしてもらいたい」と話していました。
また、80代の男性は「原発から5キロ以内にある自宅は、放射線量が高いので帰ることは考えられない。子どもや孫たちも町に帰ることはないと思うし、私もいわき市に永住することになる。未練がないわけではないが、早く県内全域で除染を進めて放射性物質を取り除き、中間貯蔵施設に保管することが先決だと思う」と話していました。
70代の女性は「もう町には戻れないのだから反対する考えはない。国は建設する方向で動いているのだから、いまさら何を言ってもしかたない。早く仮設住宅からアパートに引っ越したい」と話していました。
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