【田村剛】結婚していない男女の間に生まれた子(婚外子)の遺産相続の取り分を、結婚した男女の子(婚内子)の半分とした規定を削除する民法改正案が5日未明、参院本会議で可決、成立した。婚外子として生まれた人たちは、なお残る差別の解消に期待を寄せている。

 「歩みは遅くとも、一歩前進したことに安堵(あんど)した」。最高裁で9月、違憲判断を勝ち取った和歌山県の40代の女性は、朝日新聞に談話を寄せた。

 妻子を持つ父と未婚の母との間に生まれた婚外子。父の遺産を相続する際に差別を実感し、平等な扱いを求めて裁判所に訴えた。

 最高裁の違憲判断がニュースで報道されると、ネット上では激しい誹謗(ひぼう)中傷がわき起こった。「めかけの子のくせに厚かましい」「死ね」「バカ」……。

 私のような人間を、世間はこう見ているのか――。衝撃を受け、差別の根深さを思い知らされた。同時に、婚外子の存在を正面から否定する考え方を許容してきたのが民法の規定だったのだと改めて感じた。法改正を受け、こう思う。「少しずつでも、差別のない社会に変わればいい」

 この日、国会では、20年前に初の違憲判断を東京高裁で勝ち取った東京都の中田千鶴子さんが、傍聴席から採決を見守った。採決は4日昼間の予定だったが大幅に遅れ、5日午前0時過ぎに。中田さんは法の成立を見届け、こう語った。

 「2分の1の人間として生まれた私は、今日初めて『一人の人間』と認められた。この日を生きて迎えられて本当にうれしい」

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 《棚村政行・早稲田大教授(家族法)の話》 法改正は歓迎するが、もっと早くできただろう。最高裁の違憲判断の後、自民党内で異論が相次いだが、それは多くの議員が、既存の制度を是とする古い世代の方を向いている証拠だ。家族をめぐる法制度の議論には、若い世代の意見を積極的に反映させる必要がある。